●劇症1型糖尿病(高血糖症)
【げきしょう・いちがた・とうにょうびょう(こうけっとうしょう)】
(疾患名)
(英:fulminant type 1 diabetes)
(※英語については正確な疾患名ではない可能性があります)
[同→非自己免疫性劇症1型糖尿病(高血糖症)][類→1型糖尿病(高血糖症)



●1型糖尿病(高血糖症)の分類について

1型糖尿病(高血糖症)(→)は、「自己免疫性」のものと「非自己免疫性」のものに大別される。

このうち、「非自己免疫性」の1型糖尿病(高血糖症)の中でも、特に急激に(数日で)β細胞が破壊されて発症するタイプのものは「劇症1型糖尿病(高血糖症)」として分類される。

「非自己免疫性」のもので発症がゆっくり(数週間〜数カ月で)進むものは「慢性型(非劇症型)1型糖尿病(高血糖症)」になる。つまり1型糖尿病(高血糖症)は3つの亜系に分類されることになる。非自己性で慢性型のものに関しては、詳細(SPIDDM(→)との関連など)が不明であるため、ここでは詳しくは触れない。



●「自己免疫性」の発症の過程・特徴

自己免疫性の1型糖尿病(高血糖症)は、その名称の通り、自己免疫反応によって膵β細胞が破壊されることによって発症する。一般にβ細胞が正常の1/10程度に減少した時点で急激に症状が現れるが、実際には症状が顕在化するまでに数年間をかけて徐々にβ細胞が壊れていくと考えられている。

このタイプでは、抗GAD抗体(→)、ICA抗体(膵島細胞抗体)(→)、IAA(インスリン自己抗体)は陽性を示し、膵島へのリンパ球浸潤が見られる。尿中のCPRは10μg/日以上(=自己分泌残存)。高血糖の特徴的な症状(口渇、多飲、多尿)が出始めてから、医療機関で診断が確定するまで数週間ほどかかる例が殆どで、糖尿病性ケトアシドーシス(Diabetic Keto Acidosis:DKAと略)に関しても、ケトアシドーシスに進行するには到らずにアシドーシスの段階で留まっており、それも2〜3割に過ぎない。

発見時にはすでに高血糖を数週間継続しているので、HbA1cは顕著に上昇している。日本の急性発症の1型糖尿病(高血糖症)患者のうち約60%がこのタイプと推定される。発症後に一時的にインスリンの自己分泌が戻る寛解期(ハネムーン期)を経過する場合があることが知られている。



●「非自己免疫性・劇症型(以下「劇症型」と略)」の発症の過程・特徴

一方、劇症型は、急激に(数日で)β細胞が破壊され、高血糖症状が出てから実際に診断が確定するまでの期間も非常に短い。ほぼ100%がケトアシドーシス(DKA)を起こして発見される。

GAD抗体(→)、ICA抗体(→)、IAA(インスリン自己抗体)は共に陰性で、自己免疫性では特徴的な膵島炎も見られない。逆に外分泌(膵液など)の組織にリンパ球の浸潤が見られる。尿中のCPRは10μg/日以下(=自己分泌なし)。ハネムーン期も観察されない。非常に急激にβ細胞が破壊されるため、発症直前には、破壊された細胞から血管内に流出したインスリンで低血糖を起こす例もある。日本の急性発症の1型糖尿病(高血糖症)患者のうち約10%はこのタイプと推定されているが、欧米人ではこのタイプはほとんどどみられず、日本人に特徴的であると考えられる。また子供には少ない。現在のところ、外分泌に対する自己免疫反応の可能性が疑われているが、まだ確定はしていない。

発見されたときにはpHが7を切っているような重篤な糖尿病性ケトアシドーシス(DKA)を起こしている場合があるので、発症して1両日以内の対応が重要で、可及的速やかに大量の輸液とインスリンの補給が必要となる。また、発症から発見までの期間が非常に短いので、発見時のHbA1cは正常値に留まっているか僅かに上昇している程度である。



参考1:
DITN(Diabetes In The News)第276号 2001年2月15日発行
発行所:株式会社メディカル・ジャーナル社)

参考2:
http://village.infoweb.ne.jp/~fwgc6780/honyaku/medical-journaltra1.htm