●SPIDDM
【えす・ぴー・あいでぃーでぃーえむ】
(疾患名)
(英:Slowly Progressive IDDM)
[同→緩徐進行型IDDM][類→IDDM



発症時の臨床的なタイプはNIDDMであるが、年数(平均して3年)の経過にしたがって徐々にインスリン分泌能が低下し、最終的にはインスリン依存状態となるような症状の糖尿病(高血糖症)を指す。このSPIDDMの臨床的な特徴は以下の通りである。

1. 膵島細胞抗体(ICA)(→)もしくは抗GAD抗体(→)が、症状の進行期間中は持続的に陽性を示す。
2. インスリン自己抗体(IAA)も持続陽性を示す場合がある。
3. 発症年齢は30歳〜50歳である場合が多く、急性発症のIDDMに比べ高齢である。
4. β細胞障害の速度は、女性よりも男性の方が進行が速い。
5. β細胞は若干残存している場合が多い。一方、膵外分泌腺組織には顕著な萎縮が認められ、しばしば外分泌腺周囲にCD-8(キラーT細胞およびサプレッサーT細胞のマーカー。それぞれ、ガン細胞やウイルス感染細胞を傷害する働きや、免疫反応が過剰になった時にそれを抑制する働きがある)陽性のリンパ球浸潤を認める。また、膵害分泌腺抗体が持続陽性を示す場合がある。
6. 高感度なC-ペプチド(CPR)の測定系でのみ検出できる程度の、僅かなインスリン自己分泌機能の残存がある。
7. 膵外分泌機能は検査は低値をしめすことが多い。
8. 急性発症IDDMに比べ、GAD抗体価は高く、長期間陽性を示す。


なお、SPIDDMの症状にはかなりの個人差があるが、自覚できる程度の高血糖症状(口渇、多尿、体重減少)が現れない場合には、全くそれとは気が付かないうちに腎症や神経障害などの合併症が進行しているケースがある。

定期的な健康診断などで「糖尿病(高血糖症)の疑いあり」あるいは「境界型」と判定された場合、自覚症状がないことを理由に長期間放置することがあっては絶対にならない。可能な限り速やかに、経口剤もしくはインスリン(中間型または超持続型)を用いた薬物療法を導入すべきである。



参考:
「糖尿病治療事典」 第1版第1刷1996年2月15日 株式会社医学書院発行
繁田幸男 杉山悟 影山茂 編 6500円(税別)
ISBN4-260-13639-9 C3547 P6695E

http://www.jata.or.jp/rit/rj/Sugawara.htm
T細胞の話  結核と免疫の働き