1998 FEBRUARY
NO.268
KYOTO MEDIA STATION
特集
経営戦略としてのアウトソーシング
―業務委託からネットワークの形成へ―


 求められるキャリアを橋渡し
 (株)パソナ京都 代表取締役社長 林 克巳 氏
京都をはじめ滋賀、奈良地区であらゆる分野にスペシャリストを派遣している(株)パソナ京都は労働者派遣法施行以前の84年、人材派遣業界最大手の(株)パソナとフランチャイズ契約を結んで設立。その後、同法の施行で人材派遣が法的、社会的に認知されるとともに順調に規模を拡大してきた。
現在、登録スタッフは25〜35歳の女性を中心に約1万名。いずれも実務経験2年以上の即戦力で、うち約1,000名は経験豊富な男性が登録している。派遣要請の種類別では、女性はファイリング、営業事務、OA機器操作が上位3業務、男性の場合はシステム開発・設計、セールスエンジニアなど専門性の高い業務が多いのが特徴という。
「人材派遣会社にとって顧客は2つ存在する。1つは人材を受け入れる派遣先の企業、もう1つが登録スタッフ。その両者に満足していただくためには、スタッフの能力を正確に測定することが必要です」と林克巳社長はいう。このためスタッフの登録にあたっては厳しい基準を設け、登録後も研修・教育トレーニングを行なっている。そうすれば利用企業にとってはもちろん、登録スタッフにとっても自分のスキルとキャリアを把握できるメリットがあるわけだ。
人材活用のあり方が変わってくるにつれ、人材派遣の果たすべき役割も変わってきている。もともとの始まりは、労働力の不足した企業などへ短期的に供給することだったが、近年はビジネスマナーなどの教育研修、パソコン基本ソフトのWindows転換に伴うトラブル処理の要請のほか、直近では社内のOA化に関するシステム開発・運営業務を一括受注した。
経営の効率化が求められているなかで、林社長は「企業の生産性向上に貢献するために、これからは仕事の内容や進め方にまで踏み込んだ企画・提案できる力が重要になる。全国展開のメリットと同時に、京都ならではの特性を出していきたい」と話している。

 派遣から戦略的アウトソーシングへ
 オムロンパーソネルクリエイツ(株) 代表取締役社長 竹内 佑一 氏
オムロングループの総合人材サービス会社、オムロンパーソネルクリエイツ(株)は、オムロン(株)で内部蓄積したノウハウを生かそうと92年に独立した。当初から大阪に支店を設け、97年には東京支店を開設。「競争が激しい地域にこそ、それだけニーズとビジネスチャンスがある」(竹内佑一社長)との考えで、人材紹介、業務請負事業にも進出している。
人材派遣はオムロングループの強みを発揮した技術者派遣が得意分野で、登録スタッフは約5,000名。技術系スタッフについてはオムロン独自の研修を実施、設立後5年で早くも業界中堅の規模にまで成長した。また、96年には京都ではトップを切って、60歳以上の高齢者を対象とした派遣事業を開始。大手企業の定年退職者の技術、開発、管理ノウハウを人手不足の中小企業に活用してもらおうというねらいだ。
業務請負事業では、京都コンサートホール、京都市市民防災センター、伝統産業館などの施設運営のほか、JR京都駅ビルの「シアター1200」は新規立ち上げ業務から支援サービスを行なっている。
「ここ5年間だけでも顧客企業のニーズは明らかに変化してきた」と竹内社長。厳しいビジネス環境を反映して、派遣スタッフ個々の資質が問われる一方で、特定部門の業務の設計から運営まで任されるケースが目立ってきたという。たんなる社員の代替から業務の代行、請負事業へと形態が“進化”し、「コア業務以外は戦略的にアウトソーシングしようという傾向が見えつつある」そうだ。
人材ビジネスの今後の展開については、全方位のトータルサービスと、より高い次元での技術者養成をめざしており、「とりわけ京都ではベンチャー企業を積極的にサポートしていきたい」という。

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