1998 FEBRUARY
NO.268
KYOTO MEDIA STATION
特集
経営戦略としてのアウトソーシング
―業務委託からネットワークの形成へ―

経済のグローバル化、情報化、ソフト化、サービス化、技術革新の進展、規制の緩和……企業経営を取り巻く環境は多面化する一方だ。そんななか、派遣人材の活用をはじめとして、会社の仕事の一部を外部に委託するアウトソーシングの動きが強まっている。その背景には、自社やグループ内の囲い込みを基調とする従来のタテ型構造から、外に対して開かれた柔軟なヨコ型構造へという、経営システムの変化がうかがえる。アウトソーシングとは何か、最近の状況と新しい流れを紹介する。



■アウトソーシングとは…
アウトソーシング(out-sourcing)とは、外部の資源、専門性やシステム、ノウハウを有効活用することをいう。もともとコンピュータ業界が使い始めた経営手法で、企業がコンピュータメーカーやソフト開発会社などに自社の情報システムの開発や運用管理、保守点検を委託したのがきっかけとなり、現在では幅広い分野で業務の外部委託が行なわれるようになっている。
最初にアウトソーシングに注目したのは米国のベンチャー企業とされ、米国の合理精神の産物ともいわれている。1989年にコダック社がIBM社に情報システム部門を全面移管、94年にはゼロックス社が世界最大のアウトソーシング会社EDS(エレクトリック・データ・システムズ)と10年間で32億ドルという史上空前の契約に踏み切るなど、アウトソーシングの波はリエンジニアリング(業務の根本的革新)の浸透とともに、またたく間に全米の企業に広まった。
これとは対照的に、日本の場合は企業内部も企業間もタテ型のピラミッド構造になっているため、外注や下請けに部品の製造や専門分野の仕事を発注するという感覚でアウトソーシングをとらえる向きがある。しかし最近では、通産省もアウトソーシング産業の育成を唱えており、(社)ニュービジネス協議会では“戦略的アウトソーシング”を「企業が従来内製化していた、あるいは新たに始める機能や業務について、@コア業務への資源の集中A専門性の確保Bコストの削減−などの明確な戦略をもって、業務の設計から運営までの一切を外部化すること」と定義している。つまり、アウトソーシングは業務の外部委託という文字どおりの意味を超えて、企業組織の“構造改革”をも促す大きなインパクトを持っているともいえる。

■再び拡大する人材派遣市場
人材のアウトソーシングといえるのが人材派遣。86年に労働者派遣法が施行され、施行後5年で市場規模は2,000億円から1兆円を突破、約5倍に急拡大した。バブルの崩壊とともにいったん低迷したが、94年ごろから再び拡大へと向かい、96年は1兆4,000億円と推定されている。 近年の伸びについては、企業がバブル崩壊後に多くの社員を抱えることをリスクと見なすようになり、正社員の代替として派遣を活用する傾向が強まったとの見方がある。しかし同時に、派遣人材のレベルが上がり、委託側の能力よりもむしろ高いといった状況も生まれている。なかでもコンピュータメンテナンスやCAD操作などの技術者の需要がめざましいという。  人材活用ニーズの高まりを受けて、96年には規制緩和が行われ、人材派遣で利用できる職種が従来の16職種から26職種に広げられた。専門職種の導入が目的で、特にOAインストラクションとテレマーケティングの利用拡大が期待されており、参入を検討している派遣会社が多い。  そうしたなかで、派遣大手各社はシステム開発・管理、カスタマーサービスなどの請負業務への取り組みを図っている。顧客企業にとっても、派遣スタッフを多人数で利用する場合には労務管理が大変になるため、一括して仕事を引き受けてくれる企業請負の方が好都合ということになる。ただ、現状では大企業は組織の切り分けや雇用への配慮から、思い切ったアウトソーシングには慎重な構えを見せるところが多いという。したがって、大企業の場合、新規事業などに乗り出すときがビジネスチャンスとみられている。


人材派遣の対象業務
従 来新 規
1号ソフトウエア開発
―2機械設計
―3放送機器等操作
―4放送番組等制作
2号事務用機器操作
3号通訳・翻訳・速記
4号秘書
5号ファイリング
6号調査
7号財務処理
8号取引文書作成
9号デモンストレーション
10号添乗
11号建築物清掃
12号建設設備運転、点検、整備
13号受付・案内、駐車場管理等
1.添乗(10号の修正)
2.研究開発(14号)
3.事業の実施体制の企画・立案(15号)
4.図書の製作・編集(16号)
5.広告デザイン(17号)
6.インテリアコーディネーター(18号)
7.アナウンサー(19号)
8.OAインストラクション(20号)
9.テレマーケティング営業(21号)
10.セールスエンジニア(22号)
11.放送番組用の大道具・小道具(23号)



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