2000 OCTOBER
NO.300
KYOTO MEDIA STATION

特集

ひと目で分かるI T革命


I Tとは何か?

 I Tとは“Information Technology”の頭文字をとったもので、情報技術を意味している。情報技術とはさまざまな情報を社会や産業に生かそうとする技術のことで、パソコンはもちろん、携帯電話、家電製品、自動販売機など幅広い分野で応用されている。
 I Tの概念自体は特別なものでなく、コンピュータが開発された1940年代の半ばから意識されているものだ。しかし、パソコンの急速な普及と、それに伴うインターネット人口の爆発的な増加により、90年代になって「I T革命」がにわかにクローズアップされることになった。特に、大容量の双方向通信を可能にしたインターネットの登場は、これまでのビジネス形態(ビジネスモデル)を激変させるもので、かつての産業革命に匹敵する大変革だとする意見もある。コンピュータ技術とインターネットの応用がI Tの新たなデファクト・スタンダード(標準規格)になりつつあるといってもいい。

I Tがビジネスの常識を変える

 平成11年度版通信白書によると、1998年度のわが国のインターネット利用者の数は約1700万人。2005年末までには7680万人に達するといわれている。いまやインターネットは、ビジネスのあり方そのものを変えるイネイブラー(促進要因)として無視することはできない存在だ。I Tを活用した企業経営に欠かせない8つのキーワードを紹介し、I Tがビジネスにもたらす可能性について考える。

■BtoB
(Business to Business)
 企業間電子商取引のこと。インターネットを通じて、企業間の受発注や決済など必要な取引を行うことをいう。電子商取引の中では最も規模が大きく、2004年には6兆6620億円規模に達すると予測されている。最近では1対1の個別取引だけでなく、マーケットプレイス型のECも登場した。これは多数の売り手と買い手がインターネット上のWebサイトに集まり、条件がまとまった当事者間で取引を行うというもの。このように、BtoBはインターネットの利用により、新しいビジネスモデルのバリエーションを増やしている。

 

■BtoC
(Business to Consumer)
 企業対消費者のECを指す。メーカーや小売店がインターネットショップなどを通じて、消費者に直接モノや情報を販売する仕組みをいう。取扱商品は書籍やファッション、食品などのほか、音楽や映像メディアまでと幅広い。ベンチャー企業や中小企業が参入しやすい市場といわれ、2000年3月現在で約25000店以上のショッピングサイトがひしめきあうなど競争は激化している。また、自社のサイト上に多数のインターネットショップを集め、その出店料を収益とするインターネットモールもBtoCのひとつのビジネスモデルといえる。

 

■CtoC
(Consumer to Consumer)
 消費者対消費者のEC。いわゆるインターネットオークションといわれる仕組みで、「売ります・買います」の情報交換の場をWeb上に展開し、消費者間で取引が成功すれば手数料を徴収する。日本では代金回収や商品授受の方法などについて利用者の不安が根強いため、他のECに比べて地味な印象があるが、アメリカなどでは売り手に代わって代金を回収するサービス会社も登場しており、ebay.comなどは巨大なオークションマーケットとなっている。日本でも、今後の拡大が予想される第3のECモデルだといえよう。

 

■One to Oneマーケティング
ワン・ツー・ワン・マーケティングは、相手の見えないECビジネスにとって最も重要なツールだ。インターネット人口が増加してくると、売り手から買い手に直接モノが流れる仕組みが生まれてくる。顧客の購買履歴、ニーズ、嗜好などを把握することにより、必要なサービスをワン・ツー・ワンで提供するというもので、サブスクライバー(固定客)の囲い込み戦略といえる。顧客満足度を高めるとともに、顧客管理コストが減少するというメリットもある。市場シェアでなく、特定顧客シェアの獲得を目指すマーケティングだ。

 

■ASP
(Application Service Provider)
 アプリケーション・サービス・プロバイダーとは、業務に関するアプリケーションソフトをインターネットなどを経由して企業に貸し出し、運用管理などのサービスを提供するサービス事業。ASPで提供されるサービスは、電子メールや電子商取引、会計や人事などの業務アプリケーションなど広範囲におよぶ。低コストでスピーディーに情報システムを構築できることから、一種のアウトソーシングの形でサービス利用企業数は増加している。ECを目指す中小企業やベンチャー企業にとって、価値の高いサービスといえるだろう。

 

■SCM
(Supply Chain Management)
 技術開発のスピードが速く、既存の製品がどんどんと陳腐化していく中で、いまサプライ・チェーン・マネジメントが注目を集めている。取引企業の間で設計、調達、製造、配送などに関する情報を共有することにより、欠品と過剰在庫をできる限り低減していく画期的なI T技術だ。これまでメーカーなど一部の企業にしか伝わらなかった情報が、販売店や中間業者などにも伝わるようになるため、より精度の高い需要予測を行い、生産計画に反映させることが可能となった。小売店のPOSシステムなどに応用されている。

 

■CRM
(Customer Relationship Management)
 多様化する顧客ニーズに応えるとともに、顧客へのマーケティング活動を効率的に行うことを目的とするのが、カスタマー・リレーションシップ・マネジメント。SCMとともに注目されているI Tシステムだ。企業の各部門に分散している顧客データを集約的に一元管理し、顧客ニーズに応じたサービスや情報提供を的確に行うことができるようになる。これまで社員の資質に任されていた顧客対応だが、マンパワーに依存することなく一定水準以上の顧客サービスを常に提供することが可能となるわけだ。

 

■異業種参入
 I T革命のうねりは、従来の業種・業態の枠組みを大きく変えようとしている。これまで特別なノウハウや技術が必要だった異業種分野へ、新規参入する企業が増加しているためだ。その範囲は農業や旅行業、建設業、金融業など多岐にわたる。インターネットを取り巻くインフラが整備されつつあることと、無店舗販売など低コストの経営が可能なことから、異業種参入の動きはますます活発化していくだろう。既存のサービスや商品がITによって塗り替えられていく中、企業のあり方そのものも見直しを迫られている。
NEXT PAGE→

MONTHLY JOHO KYOTO