2000 JULY
NO.297
KYOTO MEDIA STATION
特集

I T導入の意義とポイント


「I-SIS」システムで板金業界に旋風/
伊東板金工業(株)

【IT経営のポイント】
1.顧客からの伝送データとバーコード情報をもとに、受注〜出荷までの情報を一元管理。
2.Webによる親会社の情報を、各部署がLANによって共有情報として活用。
3.個人データはインターネットで配信。パソコン上のオープン情報として占有化を廃止。

伊東板金工業(株)では、低コスト・短納期の推進と経営の安定化を進めるために、電子情報(Web、LAN、インターネット)を利用した21世紀型経営システム構築に積極的に取り組んでいる。 「I T化への対応が遅れている業界のあり方に強い危機感を持って臨んだ」と伊東健二専務取締役。I Tは生産設備そのものではないので、投資コスト以上の成果を回収できるかどうか読みにくい面 がある。特に、熟練技術者の勘や経験が生産性を左右する板金業界において、I Tの概念を浸透させることは容易ではなかったはずだ。 しかし、同社では伊東専務が中心となって、「全社的、情報の共有化とその活用」という社内マニュアルを作成、数年前から繰り返しI T革命の重要性を訴えてきた。96年には業界としていち早くISO9002を取得しており、これが弾みになったことも確かだ。  昨年来の地道な取り組みによって、新生産管理システム「I-SIS」構築、図面 の電子データ化など、受注から手配、外装、発送までのすべてを電子データでリンクすることが可能となった。結果 的に、間接業務コスト20%削減、業務全体のスピードアップにつながり、脱熟練化(作業の標準化)、ノー残業の推進、生産・品質管理の徹底などを実現できたという。最近では同社のWebを見て発注してくる顧客もあり、その活躍の舞台はインターネットを通 して大きく広がろうとしている。 「I T化のポイントは、情報を全社的に活用するための全体最適を考えること」と伊東専務。業界全体の危機感に突き動かされた担当者の熱意が、I T革命へと結びついた好例といえるだろう。

【先進のI Tシステム】
■新生産管理システム「I-SIS」
これまで同社が培ってきた物と情報の流れをCPU化したシステム。顧客よりの電子データの情報をもとに各部門が社内状況(営業・業務・製造・品質保証)をリアルタイムに提供し、その情報を把握することで全社的にクイックアクションがとれる体制を構築した。結果 的に、内・外作業手配、D.D(製造着手日)の算出、材料・受注計算、製造進捗管理など約18項目の自動処理、自動手配を実現できた。今年秋から、Webにより顧客から情報をいただき、双方向データ通 信を行うことにしている。

スピード化時代にI T経営で武装/
田中精工(株)

【IT経営のポイント】

1.オフコンの専用端末をPC化して、社内に専門サーバーを設置。本社と工場を結ぶ ネットワークのあり方を見直し、情報化投資コストを約1/5に圧縮。
2. インターネット技術を利用したイントラネット(企業内情報通 信網)、エクストラネットの構築により、複数企業間通信、社内の営業支援、B 2 B(企業間電子商取引)の推進。(表3)
3.
営業情報の全社的共有によるスピード経営、営業行動のクイックレスポンスなど、スピード時代に対応したシステムづくり。


田中精工(株)では80年代にいちはやくオフコンを導入し、オンラインバッチ処理で情報の一元管理を行ってきた。90年代には、LANによるリアルタイム処理で社内情報の共有化を実現。マルチメディアによる製品情報管理システムを開発するなど、業界を代表するI T先進企業だ。 「技術革新のスピードが速く、既存の技術・知識がどんどん陳腐化していく。ユーザーニーズに迅速に対応していくために、I T革命は避けて通れない課題だった」と坂本栄造取締役生産管理部長。I Tで大切なのは、社員一人ひとりの意識の変革だとも。  同社は約20年前から全社的システムを構築するために、情報先進企業のノウハウを吸収し、100%自社での取り組みを進めてきた。その背景には、次世代にふさわしいシステムづくりをいちはやく目指した企業トップの積極的な姿勢があるという。顧客ニーズに対応できなければ企業の存続はない…。I Tの重要性に無感覚な企業トップも多いなか、同社が他社に先駆けて情報化を促進できた意義は非常に大きいといえる。 同社の営業支援システムや新ネットワークシステムは、経営の計数管理、実績管理の遂行により、企業活動の実態が見える仕掛けづくりを行うもの。クレーム処理や社内アクシデントに対する対策が早められるとともに、顧客とのメーリングリスト性能が向上し、コミュニケーションの質が向上したという。 「I T革命によって生まれたノウハウや技術は、商品化することで社会に広く貢献していかなければ。それがまた新しい技術革新につながっていくのです」。I Tのフラッグシップ企業としてのプライドと度量の広さがそこにあった。

【先進のI Tシステム】
■金型ナビゲーションマネージャーシステム
本来、金型の設計・製作は、電子メールやFAXなどで受け取った図面 データを2次元、3次元データに変換して行っている。しかし、設計システムに加工するためのデータ編集、加工の中間作業の手間が大きい。そこで、3次元CADシステムの挿入およびデータ変換システム、ダイレクト金型製造システム、設計・製造ノウハウ共有システム、Web受注業務支援システムの4つをI T統合し、顧客要求の高度化、短納期化に迅速に対応。
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