2000 MARCH
NO.293
KYOTO MEDIA STATION

特集
「楽天市場」の成功戦略にみる
インターネット・ビジネスの将来性

インターネット・ショップの担い手は「人間」
それでは、実際に楽天市場でどのようなショップ展開がされているのか、具体例を挙げて説明していきたいと思います。
「信州伊那谷のたまごやさん」といいますが、楽天市場にこの店舗が出店されたのはいまから2年くらい前のことです。いまやこの卵屋さんは1店舗で月平均100万円以上を売り上げています。パソコンショップなどで、月に1000万円以上を売り上げている店舗はたくさんありますが、1個20円ぐらいの卵で100万円の売り上げを見込むには、毎月5万個以上販売しなければならないわけです。
ここでまず認識していただきたいのは、インターネット・ショップであっても最終的には「人間」が販売の担い手であるということです。楽天市場ではホームページの一番下に必ず「店長の部屋」というのを設けまして、各出店者の紹介をしています。
「信州伊那谷のたまごやさん」の場合ですと、店長がいかに鶏を大事に育てているか、こういうところできちんと表現しています。商品アピールの方法にしても、卵の外観だけでなく、こんもりと美味しそうに盛り上がった中身を紹介して、商品の新鮮さを消費者にアピールしています。
ここの卵屋さんのホームページを見ていると、本当に楽しんでインターネット・ショップをつくっているんだなということを実感することができます。例えば、ページの中に「かわいいひよこ成長日記」というのがありまして、自分がどのように鶏を飼育し、卵を生産しているのか、すべての生産工程を生産段階から順番に紹介しています。いま、スーパーマーケットなどに行って、有機飼料で育てた鶏の卵だといわれても、なかなか判断の難しいところもありますが、実際にショップ上で「私はこういうふうに飼育してます」ということをきちんとアピールした場合、より真実味を帯びて消費者に伝わっていくわけです。それで実際に頼んでみると、本当に新鮮で美味しい卵が送られてきた、というのがポイントになってくると思います。
また、店には伝言板がついており、そこに消費者が商品の評価などをいろいろと書き込んでいくことができるようになっています。商品の評価を店長自身がするのではなくて、消費者レポートをコミュニティー的な機能として随所に盛り込んでいくことで、そんなにいい商品なら買ってみようかなという気にさせる効果がある。ここで一つ面白いエピソードを紹介しますと、「信州伊那谷のたまごやさん」のユニークな取り組みはさまざまなメディアで取り上げられるのですが、ある新聞が誤って限定販売の卵セット1960円を1690円と書いたことがありました。普通なら、新聞社にクレームを入れるところでしょうが、これを逆手にとって「新聞が1960円の卵を1690円と書いてしまいました。つきましては今日から1週間、1690円にします」とすかさずEメールを配信したのです。こうしたことからも、お客さんと出店者の間でうまくキャッチボールを積み重ねていくことで信頼関係が生まれ、商品売り上げに結びついていくことが分かると思います。

「ワンツーワン・マーケティング」の重要性とは
次に紹介するのは、福岡の卵屋さんです。このショップの特徴は、ホームページ上に「店長日誌」というのを設けて、消費者と店長の「井戸端コミュニティー」をうまく構築していることです。
いままでは商品の購入履歴や視聴履歴などをもとに、顧客データベースをつくっていましたが、本当の「ワンツーワン・マーケティング」というのは、あくまでも1対1ということですから、売る人と買う人の関係をどのように築いていくかが重要なポイントになってくると思います。インターネットの長所は、データベースの力を使うことによって、例えば1万人の消費者に対して、あたかも1対1であるかのような関係を築くことができるということでしょう。
例えば、アメリカで大成功しているEコマースの企業などを見ると、こういう小さなコミュニティーをいかに上手に真似しているかが分かります。何度も繰り返してきたように、インターネットは「道路」、楽天市場は「お店」に過ぎません。その中でいかに売る人と買う人がコミュニケーションを構築していくか、そこに成功の秘訣が隠されているように思います。
さて、インターネット上で店舗をつくりたい人はたくさんいると思います。ところが、実際には金銭的な問題やノウハウの問題、システムの問題など、さまざまなバリアーがあってなかなか難しいようです。そのバリアーを取り払うことによって、新しいコンテンツが生まれ、また新しいコンテンツが生まれれば集客力がでてきます。集客力は売り上げに結びつき、売り上げ向上は出店者のやる気につながるはずです。
楽天市場の場合、月額5万円の契約料のみでどなたでも参加するシステムをつくっています。出店画面には編集ツールやコミュニケーションツール、分析ツールなど、さまざまな付加機能が用意されており、店舗の編集・管理のほか、Eメールの送受信などの機能をフル活用して、自由に使っていただけるようになっています。本当にインターネット・モールの面白さを体験するには、実際に商品を購入してみるのが一番いい方法だと思います。みなさんにはぜひ、今日の話を参考にしていただき、インターネット・ビジネスに取り組んでもらいたいと思います。
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