1999 MAY
NO.283
KYOTO MEDIA STATION

特集
情報システムと業務革新
−効率化から共有・活用へ

◎増える業務パッケージソフトウェアの活用

企業における各業務の情報システム化には、これまでにもさまざまな形で取り組みが行われてきましたが、最近では、特定のユーザー向けに作成されたカスタムメイドのソフトウェアに加えて、既製品として開発されたパッケージソフトウエアが広く出回るようになり、利用も急激に伸びてきているようです。
業務パッケージソフトウェアとは、一般的な購買・生産・販売管理、財務会計、給与計算などの基幹業務の遂行を目的につくられたものであり、カスタムソフトウェアに比べてかなり安価に入手できること、ユーザー独自のシステムを一からつくるよりも早期に運用できることなどのメリットがあります。
これらは標準化された既製品であるため、あらゆる企業の業務内容と完全に整合しているわけではありませんが、最も自社の条件に適合したソフトを選べば、業務ごとの効率化においては十分に機能を発揮することができます。ところが、一企業において各部門がそれぞれに専用のシステムを構築する場合、使用するソフトに互換性がなければ部門間での情報のやりとりは困難であり、この問題を解消するには、データ形式を統一して情報を一元化することが必要となってきます。

○高まるERPへの期待

一方、ERP(Enterprise Resource Planning=全社的な経営資源の計画活用)を目的に開発された統合業務パッケージソフトは、資材調達から生産、在庫、物流、販売から会計、人事まで、企業内のあらゆる部門の経営情報を一括して管理し、処理できるため、各部門がそれぞれにデータを入力する手間が省くことができます。また、これらのソフトは、最も効率的に業務をこなしていると考えられる企業の事例をモデルに開発されているため、生産性の向上やコストダウンにも効果があリ、エンジニアリングの有効な手段として期待されています。
このように、標準化されたソフトに基づいて全社的な業務革新を遂行するにあたっては、導入時の現場に対する負担や企業としての競争力の低下を心配する向きもあります。しかし、ERPが導入されるのはあくまでも標準化が可能な部分であり、他社との差別化を図るために必要な部分は残されるというのが基本的な考え方になっています。そして、どの企業でもやっているような業務はどんどん共通化し、無駄な労力を抑えていこうというわけです。
これまで、ERPは大企業を中心に導入が進められてきましたが、最近では中堅企業が業務革新のきっかけづくりを目的に導入するケースもみられるようになってきました。また、単独の企業内で導入するばかりではなく、一つの商品に関連する企業が共同で情報システムを構築するサプライ・チェーン・マネジメント(SCM)という戦略も注目を集めるようになっています。



ERP(Enterprise Resource Planning)
 生産部門が計画を立てる際に材料(Material)の必要量を算出する手法として考案されたMRPが、企業(Enterprise)活動全体を対象とするようになったもの。経営情報の一元化による経営資源の有効活用を目的とし、この考えに基づいてつくられたソフトウェアのことをERPソフト、またはERPパッケージともいう。


◎インターネットの活用でネットワークを充実

業務パッケージソフトウェアの利用が増加してきた背景の一つには、クラアントサーバ型と呼ばれるLANシステムの普及があげられます。これは、直接的に作業に用いるパソコン(クライアント機器)と、データの保管などの特定の機能を担うコンピュータ(サーバ)によって構成されるもので、企業内でLANを組織的に利用する場合は一般的にこの形式がとられているケースが多く見受けられます。
そして、クライアントサーバ型LANシステムにインターネットと同じWWW機能や電子メール機能を持たせ、企業の内部で運用できるようにしたのがイントラネット。通信規約がインターネットと同じなので、インターネットへの接続も容易に行うことができ、外部との情報交換にも利用することができます。また、これを特定の企業間だけで利用できるようにして、エクストラネットを構築するという方法もあります。
このように、社内業務を情報システム化し、インターネットに接続すれば、全世界とスムーズな情報のやりとりを行うことが可能になります。その際の大きな留意点は、システムそのもののトラブルを防ぐための信頼性対策、自然災害や人為的な不正行為、破壊行為から情報システムを守るための安全性対策といったセキュリティの問題ですが、これに対しては、パスワードや暗号化、ファイアウォールなどの技術が開発されています。



一般に、情報システムの導入にかかる費用に比べて、それによる効果の把握は必ずしも容易でなく、他の部門への設備投資に比べて費用対効果性の確保が困難だといわれています。しかし、パソコンの普及や情報技術の発展により、従来に比べて格段に効率的な情報化が可能になってきていることは間違いありません。情報システムによって業務革新を実現し、社内のあらゆる経営資源を活用することは、大企業ばかりではなく中小企業にとっても大きな課題であり、常に周囲の環境の変化をとらえながら新たなマネジメント手法を取り入れていくことが重要だといえるでしょう。
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