1999 MAY
NO.283
KYOTO MEDIA STATION

特集
情報システムと業務革新
−効率化から共有・活用へ

パーソナルコンピュータの普及と、インターネットに代表されるネットワークの拡大に伴い、ビジネスにおける情報利用の重要性はますます高まっていく一方。特に今後は、より業務に密着した形で情報を活用していくことが求められているといえます。今回は、企業の情報化の現況と業務革新、また、その中で業務用ソフトウェアが果たす役割などについて紹介します。

日本のインターネット利用者数は、98年2月に1,000万人を突破し、同年末には1,385万人に到達(日本インターネット協会調べ)。これは、95年末の129万人の実に10倍強という伸びで、99年末には2,000万人を超えると推計されています。
また、97年度の情報関連産業の市場規模は、コンピュータ・通信機器・半導体といったハード関係と、情報サービスや通信サービスなどのソフト関係を合わせて37兆円(日本経済研究センター調べ)。2005年には64兆6,000億円となり、名目GDPの約10%に相当する巨大市場に成長するだろうとの予測もあります。
こうした動向を反映して、オフィスでは社内LANの普及がいっそう進展し、インターネットなどを通したデジタルコンテンツの流通量が増加。Eメールは、もはやビジネスに不可欠なツールとして、携帯電話と並ぶメディアになりつつあります。さらには、ノート型パソコンなどの携帯端末に通信機能が結びつくことによって、営業活動を中心としたビジネスへのモバイル対応も本格化するようになってきました。
このように、営業現場にパソコンを導入してSFA(Sales Force Automation=営業情報武装)を実現し、組織的な営業の戦力アップを図ろうという試みは、95年頃から米国を起点に大きな広がりを見せ、営業部門の情報化に対する関心を格段に高めました。また最近では、電話回線とコンピュータを結びつけたCTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレーション)など、顧客との接点になるすべての部門に情報技術を取り入れよういう動きも活発化してます。



SFA(Sales Force Automation=営業情報武装)  情報化が最も遅れていた営業部門を、情報技術によって統合的に支援し、顧客満足度の向上や売り上げ拡大を実現しようという考えに基づいた営業支援システム。導入の対象によって、個人型、部門型、全社型の3つに大別される。


◎業務革新の手段としての情報システム

ダウンサイジング(事業の戦略単位の小型化)、CS(顧客満足)、リストラ(事業の再構築)、リエンジニアリング(事業の根本的革新)…バブル崩壊以降、さまざまな業務革新の手段が経営者の間で関心をもたれ、話題を呼んできました。それぞれに対する考え方や実践の仕方はさまざまですが、共通しているのは仕事のやり方を変えてコスト削減、品質向上を図ろうというマネジメント手法であるという点であり、その武器となるのが情報システムの導入だという点でした。
そして、パソコンの普及率が飛躍的に向上した現在では、企業活動の大きな3つの流れ、情報流・商流・物流にIT(情報技術)を組み込み、デジタル化することが業績アップ実現のカギだといわれています。情報流を例にとると、企業にはおびただしい量の情報――製品仕様、受発注、在庫調整、製品開発の情報など――が氾濫しており、会議、電話、ファクス、書類などさまざまな形でやりとりされていますが、これらをデジタル化すれば、時間や場所の制約なく情報が共有できるようになります。こうして、情報を有効に活用できるシステムを導入すれば、従来は現場任せという側面が強かった営業活動についても、人の動きを変え、生産性を向上させることができるとさえいわれています。
期待される情報化推進の効果としては、
(1)営業活動の効率化による売り上げの増大
(2)省力化による管理コストの低減
(3)コンピュータ処理による品質の向上
(4)事務処理や意思決定の迅速化による生産性の向上
などがあげられます。


ただし、情報システムを導入すれば即、明日から効果が表れるというわけではありません。コンピュータ処理を専門的に担当する特定部門を除けば、「日々の仕事に追われて使い方を覚えているヒマがない」「いったい何の情報を共有すればいいのかわからない」といった不満の声が上がり、期待どおりの効果が得られないことも少なくないというのが現状です。
この原因には、まず情報システム化に対する社内的な理解と情報リテラシー(読み書き能力)の不足があげられます。以前なら、コンピュータ処理に携わることのない社員は、担当者が配信する資料をプリントされたものか端末装置のディスプレーで見る程度でした。しかし、今日では、すべての社員が日常業務の中で情報機器を使いこなさなければならなくなっているといっても過言ではありません。
次に、導入効果の把握が必ずしも容易ではないという問題があります。事務系の業務であれば、「これまで丸1日かかっていた仕事が3時間で済むようになった」といった具合に効果を示すことも可能ですが、営業活動に関してはそうはいきません。実際に売り上げ数字をアップさせることの困難さに加えて、顧客情報の有効活用などについては、なかなか目に見える形で効果の表れるものではないからです。
業務の革新とは、各業務の目的を“最短期間”の“最少費用”で達成することであり、情報システムはその手段の一つです。つまり、情報システムは単なる作業効率化の道具でも、システムを構築し、運営すること自体を目的とするものでもありません。情報システムを使って何をするのか、どういう効果を上げていくのか、という明確なビジョンを持ち、そのシナリオを実現するための道具として活用してこそ業務革新につながるというわけです。

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