1998 NOVEMBER
NO.277
KYOTO MEDIA STATION
特集
(財)京都産業情報センター設立20周年記念事業
インターネットマルチ会場大会 開催
プレゼンテーション

<北部会場>
インターネット導入による距離の短縮
(株)積進 田中 安隆 氏

府北部の峰山町に本社と工場をもつ従業員100名程度の中小企業で、半導体製造装置や産業用自動化装置などの設計から加工、組み立て、調整まで一貫生産を行っているほか、精密部品も手がけています。
お客さまは京阪神をはじめ名古屋、九州にも及んでいますが、一番近い京都まで車で2時間以上かかり、どうしても距離というカベがありました。
LANを導入したのは1990年。加工と組み立ての工場が分かれていて、組み立ての方から加工へ“部品はいつできるのか”という問い合わせが日常茶飯事のようにあり、社内で情報を共有しようと両工場間に導入したわけです。その後、93年に本社を移転したのを機に本社にもLANを構築し、旧本社との間も専用線で接続しました。インターネットに接続したのは96年で、その折、自社開発した生産管理システムも立ち上げました。

◎インフラ構築の背景

ネットワークの構築は、当初はトップダウンの形で持ち上がりましたが、いったん決まってからは運用面を含めて社員が中心になって進めてきました。その背景には15年前から実施している社員提案制度があります。毎月1人1件以上の提案のなかにネットワーク関連が結構あったからです。製造業は中小企業といえども、コスト、納期、品質面で世界の企業と競争しなければなりません。距離によるハンディで負けるわけにはいかないのです。
もっとも、資金の問題とか、「隣の席同士でEメールのやりとりをしてどうするんだ」という声も一部にありました。しかし、「とにかくやってみてから考えよう」、「世の中の流れに対しては早い段階からやった方が得」という前向きの社風が実現の後押しになったわけです。
現在、主なサーバが4台、PCは50台で1人1台とまではいっていませんが、管理・設計部門、及び部課長については各自1台配置しています。

◎納期短縮、コストダウンに向けて
Eメールは、お客さまへの連絡、CAD/CAMデータの連携に利用するほか、これまでは試作品を持って1日がかりで出向いていたのをデジタルカメラで撮って状況を説明するという形で活用しています。また、お客さまからデータをメールで送っていただければ、それだけ納期短縮にもつながります。
また、地方にいてこれまではなかなか入ってこなかった情報、例えば、他社のカタログなどがホームページを通していつでも簡単に入手できるようになりました。しかも相乗効果というか、社員も情報収集に意欲的になりました。
これからの課題は、CAD/CAMデータの連携をいかに納期短縮、コストダウンに結びつけていくかだと思っています。データを送る側(発注企業様)、受け取る側(弊社)で考えていかなければならないテーマだと思います。

URL http://www.sekishin.co.jp/


<南部会場>
異業種共有ホームページ
(株)第一紙行 ライフデザイン研究所 磯野 仁 氏

関西文化学術研究都市にあるハイタッチ・リサーチパークは、京都の異業種13社で1990年に発足し、21世紀のライフスタイルの創造を共通テーマにそれぞれの領域から研究をしています。異業種交流の一環として研究開発事業委員会を定例で開催しており、96年に委員会のなかにインターネット小委員会を設け、この9月から生活者をターゲットに共同でホームページの発信を開始しました。

◎異業種共有ホームページの問題点とその解決策

ホームページは24時間営業のコンビニエンスストアとよく似ているように思います。コンビニは購買層を把握し、POSシステムを導入して販売管理をするとともに、売れ筋、死に筋をつかんで商品の入れ替えを的確に行い、少人数で運営管理ができるようなシステムになっています。ホームページも24時間発信、少人数のスタッフですが、生活者が望んでいる情報をわかりやすく提供し、的確な運営を行えばより素晴らしい効果が期待できるのではないでしょうか。
あれもこれも情報を詰め込んだホームページを見かけますが、情報をたくさん発信すれば見てもらえると思うのは間違いです。リサーチパークの参加企業はさまざまな新規事業も手がけていて、1つの企業だけでも膨大な情報量になります。そこでまず、各企業に最適項目を精選してもらうことから着手しました。それらの情報をもとに、わかりやすく検索してもらう方法を検討した結果、研究施設を1つずつ紹介するだけではなく、「事業・商品分野」「研究分野」の2つのコーナーを設けることになりました。
事業・商品分野は住宅・照明・設計など、研究分野は技術・文化などのキーワード別に紹介しています。制作にあたっては「問い合わせにもっと簡単に答えられるようにしてほしい」「関西国際空港からの道順がわかりやすい地図をつくってほしい」といった要望があり、また研究施設も360度、どの角度からも自在に見学体験できるよう臨場感あふれる画面づくりに工夫をこらしました。

◎生きているホームページと死んでいるホームページ
ホームページにとっての“POSデータ”はアクセスログです。それにもとづいてデータの削除や拡大を行い、常に変化しながら成長していかなければなりません。そういった意味でホームページに完成という言葉はないと思っています。  同時に、通信費を払って見てもらっていることを忘れてはならないと思います。例えば生活者からみれば、自分たちに何をしてくれるのか、どんなメリットがあるのか、に興味があるのです。ホームページが生きているか、死んでいるかについて簡単なチェック項目をご紹介しましょう。
  1. 内容が会社案内中心。内容は会社概要パンフレットをホームページにしただけ。
  2. ホームページの内容更新が、1カ月以上なされていない。
  3. フロントページの総データ量が100KB以上もある。
  4. インタラクティブな利用(発信者への連絡)の手だてが記載されてない。
  5. メイン情報を見るのに特殊なプラグインや指定のブラウザが必要とされている。(ただし表現技術PRページは除く)
5項目のうち該当項目が3つ以上あるなら、それは死んでいるホームページといえるでしょう。死んでいるどころか、企業の信用を失っているといえるかもしれません。
インターネットの特徴はいうまでもなく、見知らぬ者同士でも1つのテーマを介して出会い、コミュニケーションが成り立つことです。ホームページは企業や商品に対する信用、よりよいイメージづくりには便利な手段だと思います。リサーチパークの場合は、家に例えるとやっと棟上げを終えたという段階ですが、そうした機能をいかに充実させ、付加価値をどう高めていくかということを重視し、研鑽を重ねていくつもりです。

URL http://hrp.lifedesign.co.jp/


<中央会場>
デビットカードを中心とした情報システム
四条繁栄会商店街振興組合  樋爪 保 氏

デビットカードというのは、金融機関のキャッシュカードで買い物や飲食ができるシステムをいいます。私どもの四条繁栄会をはじめ京都市内の10商店街と料飲組合など2団体の約600店では、今年9月から日本で初めてこのシステムをスタートさせました。キャッシュレス化の流れのなかで、クレジットカードだけでなくキャッシュカードも扱うことによって顧客サービスを図り、金融機関の口座に眠っている預金を流動化させることで個人消費の刺激につながれば、と期待をかけて取り組んでいるものです。

◎通信処理時間は5秒

京都は観光都市ですのでお客さまは国内外に及んでおり、カード対応は欠かせません。参加している商店街、業種組合はいずれも「きょうと情報システム(KICS)」に所属しています。KICSではISDNを介したネットワークシステムで全加盟店の端末に接続、京都市の第3セクターであるコンピュータセンター<(株)京都ソフトアプリケーション>で集中管理されており、関係者の支援をいただきながらクレジットカードの一括処理を行ってきました。
このところマイナスを続ける消費不振のなかでも、クレジットカードの利用は着実に増えているうえ、加盟店にとって一括処理の場合は、1.手数料が個店での契約よりも安い、2.入金サイクルが短い(月2回)、3.統一の販促キャンペーンにも参加できる、などのメリットがあります。
今回のデビットカードは、こうした既存のシステムをベースに始めたものです。現在使っている端末をそのまま利用していますし、本人確認は暗証番号パットにお客さまが番号を入力するだけで署名は要りません。通信処理時間もわずか5秒で済み、店にとっては取り扱うカードの数が増えたという程度の感覚でしょうか。そしてクレジットカードとの大きな違いは、後払いではなく預金の範囲内なら即時決済できるということです。
では、お客さまにどういうメリットがあるのかというと、9月〜12月までに合計利用額が3万円以上の方にはその1%分をキャッシュバックするほか、抽選で1万円を100名以上の方にプレゼントします。来年以降も同じような形で、半年サイクルでの継続実施を考えています。
まず第1弾として地元の4金融機関と提携、11月からは都銀など5行、さらに来年1月からは都銀数行と郵便貯金キャッシュカードも扱うことになりました。私どもは商売という立場からデビットカードを導入したのですが、総合病院などでも窓口支払いに検討されていると聞きます。かつて登場した銀行POSとは異なり、手持ちのキャッシュカードが使えるので、来年あたりから全国的に一気に普及していくのではないでしょうか。

◎「電子代引」の提案
私どもでは昨年、EC(電子商取引)を試みましたが、うまくいきませんでした。それはセキュリティーの問題、つまりお客さまの方で本当に商品が届くのか、クレジットカードの番号がどこかに漏れるのではないかという不安感があったからです。
現在、通販は商品が届いてから現金決済するという形になっています。そこでインターネットとデビットカードシステムをドッキングさせてみてはいかがでしょうか。モバイル端末が開発されつつありますので、例えば宅配業者が配達した玄関先でモバイル端末を使ってクレジット、キャッシュカードに対応するわけです。そうすればセキュリティーの問題を解決する一つの方法になるのではないかと思います。

URL http://www.net1200.or.jp/


<中央会場>
営業支援のためのイントラネット構築
田中精工(株) 坂本 栄造 氏

当社は本社がある伏見区と宇治市に工場をもち、精密金型の設計・製作からMC機械加工、組み立てなど高品位ダイカスト完成部品の一貫生産を特徴とする、授業員約120名のメーカーです。
情報化については、すでに20年前に製造の仕組みを変えていかないと生き残れなくなると経営トップが方針を打ち出し、1983年汎用コンピュータによるCAD/CAMシステムを完成、85年に生産管理システムを独自に開発し、88年には本社工場〜宇治工場間をオンラインによるデータベースの一元管理を確立しました。さらに90年からはLANによるFAネットワークシステムを構築して、リアルタイム処理で情報の全社的な共有化を進めています。
現在、三次元CAD/CAMシステムには、材料費や加工費などを積算する見積もり機能、発注者からのCADデータをもとに製品図をおこす金型組立図作成機能、高速・高性能の加工用NCデータ作成機能を備えています。生産管理についてはMRP(生産在庫管理方式)とかんばん運用による後補充生産の異なる二つの方式を共存させたシステムを導入、全工程を一元化したデータベースによって管理しています。

◎イントラネットへの機能拡大

営業部門を支援するイントラネットは、生産システムのデータベースと営業データを統合した情報の共有による迅速な判断と経営のスピード化。必要な情報がいつでも検索できるための文書管理の電子化・ビジュアル化。社内外からどこでも検索を可能にすることで営業活動の“クィックアクション、クィックレスポンス”を図る、ことなどが狙いです。この結果、営業社員が出張先でも必要なときに情報が取り出せるようになり、顧客のニーズに素早く対応できる情報武装が実現します。
また、社内文書の電子化・ビジュアル化によって事務処理の効率アップに大きな成果を上げる一方、独自に電子カタログシステムを開発、製品のイメージ画像や音声・動画による生産情報の提供を通じて情報の流れとモノの流れの有機的な結合と、インターネット上で顧客との“対話”を行えるようにします。又これの準備のために当社は、2年前からホームページを開設しています。
これらの開発運用によって社内はもちろん、取引先、協力会社、また出張中の社員それぞれがインターネットを利用して、リアルタイムで情報を共有することができます。

◎「Web電子オフィス」の構築
このような情報共有のシステムを「Web電子オフィス」と名付けています。それは「掲示板」「専用会議室」「ホットライン」「スケジュール」の4つの機能から成っています。
  • 「掲示板」−だれもが自由に参加して提案できる情報交換コーナーと生産技術データの紹介
  • 「専用会議室」−商談や見積もり提案などを行うコーナーと社内外のインタラクティブ会議室
  • 「ホットライン」−営業、技術など各担当者が顧客からの質問、要望に応えるコーナー
  • 「スケジュール」−当社工場の稼働状況、会社行事などを紹介
こうした電子オフィスを構築することによって、経営の合理化、情報提供のスピードアップをめざしています。
今後も、イントラネットで情報の統合化・共有化、マルチメディア化をさらに推進し、取引先や協力会社とのシームレスな連携を確立していくなかで、1.報提供のスピードアップによる営業活動の効率化、2.生産性の向上とリードタイムの短縮による製造原価の低減、3.事務処理のさらなる合理化−−にチャレンジしていくつもりです。

URL http://www.tanakaseiko.co.jp/


MONTHLY JOHO KYOTO