1998 AUGUST
NO.274
KYOTO MEDIA STATION
特集
設立5周年記念
平成10年度 京都府異業種交流会連絡会議
「講演と交流のつどい」開催

異業種京都会 会員グループ活動報告

コーディネーター
京都府起業アドバイザー 吉田 丹治 先生

今回ご報告をいただく3グループは、異業種交流会としての活動歴はいずれも中堅以上に属し、それぞれに独自のカラーを持って活動を続けておられます。
 「COMTEC KYOTO」は、京都府一円の団体の部会組織ということもあってメンバーが多く、交流を通した会員企業の経営の確立を優先課題にされてきました。一方、「遊融NET京都」では皆で知恵を出し合っての商品開発に重点がおかれ、3グループ中で一番新しい「彩遊樹」では、結成当初から人と人とのつながりとモノづくりを併行して取り組んでこられました。
 会員相互の連携については、「COMTEC KYOTO」ではメンバーの自主性と目的意識を尊重、「彩遊樹」ではご夫人方も含めて親睦を深められ、「遊融NET京都」ではさらに一歩踏み込んで地域とともに生きる仲間同士として位置づけておられます。
 このように、3グループの結成の経緯、メンバー構成、地域性や取り巻く環境などは異なりますが、異業種交流におけるリーダーシップのあり方、グループにとっての財産とは何か、また今後の活動の方向性などについてご参考にしていただければと思います。

広範囲かつ息の長い交流活動を展開

COMTEC KYOTO
(京都中小企業家同友会 異業種技術交流部会)
(株)ミツギ 代表取締役 桑原 秀夫 氏


 私どもの部会の母体である京都中小企業家同友会は、昭和45年に結成され、「よい会社をつくろう・すぐれた経営者になろう・経営勘定を改善しよう」を理念として活動を続けてきました。企業間交流の手法の1つとして、昭和57年に機械金属関連の会員を中心に12名で部会が発足し、メンバーは現在31名を数えています。
 異業種交流の心構えとして<ギブ・アンド・テイク>がよく言われますが、発足以来の我々のモットーもこの精神です。具体的な運営内容としては、まず月例会。会員の事例報告や企業・施設見学のほか、テーマによっては講師を招いたりして特別例会も開いています。また、同友会の他の部会や他府県の同友会の異業種交流グループとの交流、10年前からは韓国、台湾を含む国内外のグループとのネットワーク(東アジア異業種交流会)をつくり、海外交流も進めています。
 実際の開発交流に関しては、部会としての成功事例よりも個々に先駆的な人材を輩出してきたことが特徴ではないかと思います。関心あるテーマについて関心あるメンバーがチームを組んで推進するという、最も現実的と思われる活動方針で、これまでにミニ冷蔵庫やおいしい水の量り売り、環境にやさしい機器などが開発されました。現在のところは、開発テーマとしてガーデニングへのアプローチが持ち上がっています。
 異業種交流の原点は、お互いに持っている経営資源を補完し合い、グレードアップすること。それにはまず、それぞれの経営体験を率直に語り合える場が必要です。表面的にはサロンや仲良しクラブのように映っても、短期間で性急に成功を求めるのでなく、10年程度の長期間を視野に入れた取り組み姿勢も大切ではないでしょうか。  活動の継続性については、リーダーの役割の重要さを痛感しています。私自身は、そろそろ例会のさらなる活性化のためにある種のビッグバンが必要かなとも思っていますが……。活動をまとめるにあたっては「ダメ点指摘」から「ヨイ点探し」を心がけ、交流を通して自社の経営強化を図り、創造性の方向を模索するような場づくりをと考えています。

強固な結束力で地域産業にも貢献

遊融NET京都
山崎内装工業(株) 生産技術部長 小谷 留好 氏


 京都府南部の地場企業で結成して、会員は当初の20名から現在は9名に減りましたが、どのグループにも引けをとらない結束の強さが自慢です。
 共同開発商品の代表的なものは木装オリジナル壁紙。南山城地区は古くから家屋の壁紙、ふすまの産地として知られますが、全国の壁紙の99%までが今では塩化ビニール製です。そこで残りの1%にあたる本物の壁紙をつくろうということで、5年前に開発しました。当初の反応はいま一つでしたが、化学物質による室内の環境汚染が問題視されるようになり、ようやく追い風が吹き始めたところです。
 常に地域のお役に立とうということを念頭に置いて活動していますが、その1つが柿の自動皮むき機。宇治田原町では毎年、正月用のコロ柿が出荷されますが、その皮むきは昔と変わらない手作業でしたので、作業をロボット化して地元の農協に十数台を納品したら喜んでいただけました。また同じ宇治田原町で、後継者難のため荒れ放題だった茶畑の草刈りを日曜日にボランティ
アで行っていたのが高じて、今では茶の無農薬栽培まで手がけています。  会員には家族的な企業が多いため、月例会は会場を持ち回りで開き、やりとりもざっくばらんです。ある会員が珍しいものを見つけてきたら例会で商品開発の検討材料にし、お互いの“台所事情”も隠さず打ち明けるなど、強い仲間意識が会の支えになっています。
 そして現在、グループとして関心を持っているのは流通に関する問題。販売業者に任せっきりではなく、ユーザーとの直接的なつながりを心がけています。たとえばオリジナル壁紙のカタログをラミネート加工してつくったところ、消費者の方から指摘があって、資源節約の一環として簡素なものに改めました。消費者の目は非常にシビアで、立派なカタログと売れ行きは関係ないというわけです。
 会員は常にモノづくりにかける意欲に満ちています。こういう時代だからこそビジネスチャンスがあるということで、一度、頭の中を空っぽにして従来とは違った角度から市場を見直してみようと、現在も話し合っているところです。

独自商品のブランド化をめざして

彩遊樹 (株)洛陽 代表取締役 岡本 尚男 氏


 平成2年に京都府異業種企業技術・市場交流プラザの一員として誕生し、お互いの親睦を深めることから活動をはじめていきました。彩遊樹とは自由に空を飛び回る孫悟空の『西遊記』から名付けたのですが、いろんな人の集まりで彩りを、その間に遊びも入れて大樹のように育てていこうという願いが込められています。
 会員は現在12名で、結成当初から月例会以外にも企画会議の場を設け、商品開発について意見交換をしてきました。そこで生まれたのが、端切れを再利用したネクタイ、におい袋、ティッシュボックスなどの商品です。もともとが端材ですから文字どおりオリジナルで、同じ柄のものは世界に2つとありません。これこそパーソナルな時代にマッチした商品と自負しており、昨年は異業種京都会の100テーブル交流会にも出展させていただきました。
 ただ、多少の利益が出ているとはいえ、これまではどちらかといえばモノづくりのほうに熱中しがちで、販売面についてはさほど考えてこなかったことが反省点です。市場での競合が激しい昨今、ニーズを的確にとらえ、どのような商品をどのように使っていただくか、売り方をどうするかなどの目的をはっきりさせた商品づくりが当面の課題であり、さらに付加価値を高めて彩遊樹ブランドとして売り出していきたいと考えています。
 もう1つ大事なのは、好ましい人間関係こそが財産だということ。異業種交流は皆が集まって顔を合わせることが基本ですが、その点、私どもは月例会の出席率が9割以上というのが自慢です。毎年、他府県のグループとも交流を行っており、昨年は岡山県の88技術交流プラザを訪問し、商品開発の進め方などについて見聞を広めました。また、メンバーを支える家族、奥さん方を交えての懇親例会をパートナー会と名付けて開いているのも特徴といえるでしょう。
 会員の経営事情については、一種の社外重役のような立場からお互いにアドバイスをし合っています。今後の運営については再度、会員企業を見学してみてはどうかと考えているところ。グループの誕生当時からの変化を点検することで、新たなアイデアやヒントが生まれてくるかもしれないからです。


MONTHLY JOHO KYOTO