1998 AUGUST
NO.274
KYOTO MEDIA STATION
特集
設立5周年記念
平成10年度 京都府異業種交流会連絡会議
「講演と交流のつどい」開催

京都府異業種交流会連絡会議(異業種京都会)、中小企業事業団、(財)全国中小企業融合化促進財団の共催による平成10年度「講演と交流のつどい」が、去る7月21日(火)京都ブライトンホテルにおいて開催されました。
 当日は110名の方々にお集まりいただき、中沼 壽 京都府異業種交流会連絡会議会会長、阿部 聡 京都府商工部産業推進課長の開会のあいさつに続いて中島 博 岡山県異業種交流プラザ協議会長の講演、異業種京都会会員3グループからの活動報告では、それぞれの交流活動を通した体験や意見などについてお話しいただきました。また、島元 國勝(財)全国中小企業融合化促進財団専務理事のごあいさつ、内田 頼利(財)京都産業情報センター専務理事の乾杯の音頭に始まった交流交歓会では、参加者相互の親交がより一層深められました。
 異業種京都会は今年で設立5周年を迎えますが、これからもヒューマンネットワークのさらなる拡大を目指し、異業種交流がビジネスチャンスを生む重要なステージとなるよう活動を進めていきます。

基調講演要旨


「岡山県の異業種交流について」

講師 中島 博氏 岡山県異業種交流プラザ協議会会長
ナカシマプロペラ(株)代表取締役副会長


 私どもはもともと船舶用プロペラのメーカーですが、昭和57年に岡山県内で初めての異業種交流団体「'82岡山県技術交流プラザ」が発足した際にその代表幹事をつとめさせていただきました。以来16年を経て、大企業では大量生産の段階が過ぎ、中量生産、やがては少量生産の時代を迎えようとしていますが、中小企業はそのすき間をねらってモノづくりをしなければなりません。そのためにも、異業種交流をより活性化させていく必要があると思っています。

■社長自ら手がけたカーブミラー
 単独企業では難しくても、メンバー同士で人材と技術を補完し合えば開発できるものはたくさんあります。我々はまず、各社の社員提案で不採用になったものを持ち寄り、「世の中で困っているもの」をキーワードに開発テーマを探しました。  その成功例の1つが曇り防止機能付きカーブミラー「くもらーず」の開発。カーブミラーは夜間から早朝にかけて気温が下がると鏡面が曇りますが、これを防止するには車のラジエーターオイルの凍結防止剤を使えば効果があることが検討の末にわかりました。販売先は、国土庁、建設省、運輸省といった官公庁が相手ですので流通経路は簡単。ちょうど国鉄の民営化に伴う合理化で無人駅が増えて、運転手がわざわざ車両から降りてミラーをふかなければならなくなったため、早速、JR西日本から800台の受注がありました。  ところが、困ったことに各社とも人手がなくて、結局、社長自らが作業にあたることになり、そのことがTVで取り上げられて話題に。おかげで、北海道や名古屋の私鉄でも採用されました。やがて類似品が出たため国内と海外で特許を取得しましたが、マネをされるようになれば逆にしめたものです。  一方、農業分野の開発品には大根欠陥非破壊検査装置があります。これは、岡山県北部にある大根の産地に元気がないという話を聞いて取り組みを始めました。大根の内部にできる欠陥を調べるため、出荷時には暗室で1本ずつライトをあてて透視検査を行いますが、これはかなり大変な作業です。そこで、センサーを使って流れ作業でできる装置をつくりました。  さらには、欠陥ができないような土壌改良に取り組むため県農業試験場の方々と勉強会を開き、実験圃場を借りて土中の温度分析を実施。最近では、大阪の卸売市場でも私どもの検査装置によるチェックが必要ということになり、他府県からも引き合いが出てきました。また農協からはジャガイモやキャベツの検査装置に対する要望もあって、今後さらにこの研究分野は広がっていくかもしれません。

■豆腐1丁5,000円
 メンバー企業のなかに豆腐メーカーがありますが、豆腐は大体1丁50円なので売り上げがあがりにくく、売れ残れば返品されてきます。そこで、国産の一番いい大豆を使って1丁5,000円の豆腐をつくり、東京の百貨店へ売り込んでみると、実際に買ってもらえたばかりか、作家などの著名人から思わぬ礼状も届いて口コミという波及効果を呼びました。その後、孟宗竹を使った竹入り豆腐も売り出しましたが、たかが豆腐という考え方ではこういう新しいビジネスの発想は湧いてこないでしょう。  また豆腐の絞りカスであるオカラから乳酸菌を取り出し、豚の排泄物と混ぜると匂わない堆肥ができます。こうして、以前ならお金を払って処理を頼んでいたオカラを、今ではお金をもらって持ち帰ってもらうようになりました。  環境問題に関連していえば、瀬戸内海ではよく赤潮が発生して海水が汚染されるのですが、海水の対流を起こして活性化を図ろうと、農林水産省からの予算で目下、研究を進めています。研究予算がつけばそれなりに人材を投入することもできます。  このほか、岡山県内のある繊維メーカーは、従来のタテ・ヨコ系の二軸に斜めも加えた四軸の非常に強固な布を10年かけて開発。それが今、あのNASA(米国航空宇宙局)のロケットに使われています。私の本業でも、耕運機メーカーとともに水中プロペラの振動防止の原理を利用した振動の少ないトラクターを開発して10年来のヒット商品になりましたが、いずれも異業種交流あってこその成果です。

■生産設計から開発設計へ
 「'82岡山県技術交流プラザ」が発足した当時、岡山県の年間工業出荷額は6兆円で、大企業が林立する水島工業地帯がその半分以上の3.3兆円を占めていました。それが今は全体が7兆円、うち地場企業が4兆円ですので、岡山に限らず、中小企業が頑張らないと日本は沈没しかねません。小ロットの分野という宿命はあるものの、やる気と関心さえ持っていれば中小企業にも研究開発のテーマは無数にあるのです。  今日、厳しい経済情勢下で大企業は経費削減を余儀なくされ、各種会費などは真っ先にその対象にあげられます。しかし多くの中小企業の場合、異業種交流への参加費用は経営者のご判断でなんとかなりますし、それによっていろいろな産業の生きた情報が入ってきます。どれだけ広範囲で詳細な経済調査でも、新たな産業の情報がなければ、必ずしもすべての産業動向の実態を反映しているとはいえません。情報とは、自ら求めて探し、自分なりに使いこなさなければ価値を持たないのです。  また下請企業であっても、これからは単に生産設計だけではなく開発設計をやることが必要。そして、こうしたテーマを持つことで従業員のやる気も変わってきます。そのためのニーズを探し出すことこそ、経営者の仕事ではないでしょうか。

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