1997 DECEMBER
NO.266
KYOTO MEDIA STATION
特集
環日本海交流への躍動
舞鶴港FAZ施設開業

■動き出す北部開発
新規航路の開設、港湾施設利用のポートセールス活動を主体に、対岸諸国へのミッション派遣や受け入れを推進している舞鶴港振興会の萩原豊専務理事は「半径50km圏内の後背地に貿易関連産業をいかに集積していくかが課題」と強調する。
府南部に比べ、遅れ気味だった北部開発は21世紀を目前に控え、急速にピッチが上がっている。舞鶴港から近畿自動車道敦賀線で約20分の距離にある綾部工業団地(総面積136ha、20社)が昨年春に完成。福知山市にすでにオープンしている長田野工業団地(同400ha、44社)のほか、三和町の北部中核工業団地(同72ha)も平成13年度分譲開始をめざして建設中。舞鶴港とこれら3つの工業団地間の連携を深め、府北部活性化のかなめとするのがねらいだ。
さらに、京阪神地域の企業47社と京都府、舞鶴市、京都商工会議所などの関係団体で「舞鶴港活用企業研究会」を4年前に結成。関西財界とのパイプづくりや舞鶴港の振興策を検討しており、同研究会が今年3月まとめた調査「港を選ぶ基準」によると、「陸・海上コストが安い」「取引先との定期航路がある」「交通アクセスがよい」などが上位を占めた。なかでも舞鶴港が抱える課題は交通アクセスで、京阪神地域との時間的距離があげられる。
府北部を走る高速道路は、近畿自動車道敦賀線が来年3月に舞鶴東ICまで延伸。府域の南北をつなぐ京都縦貫自動車道(久御山〜宮津間101km)は昨年春に丹波ICまで伸び、21世紀初頭には全線が開通する見通しだ。
一方、舞鶴湾口の千歳・大丹生地区では関西電力舞鶴発電所(石炭火力、出力90万kw・2基)建設に向けて、周辺工事が本格スタート。海面埋め立てを含む約100haの土地造成、7万t級の石炭船が接岸できる桟橋などの港湾設備や護岸工事、取放水設備工事、工事用道路工事などが着々と進められ、発電所は2003年(平成15年)運転開始が予定されている。
こうしたハード面の整備が着々と進むなか、舞鶴港振興会では舞鶴21ビルの完成を機に同ビル入居企業と連携、新しい貨物の集荷などの活動を強化し、「上海、大連、台湾との新規定期航路の開設にも取り組んでいきたい」(萩原専務理事)という。

■舞鶴港を丹後産業の起爆剤に
京都府の「丹後産業21世紀ビジョン」では、交通網の整備や国際化に伴う産業発展の基本的視点として、環日本海経済圏と日本海国土軸の入り口をめざす▽自然景観、歴史、文化など地域資源の活用▽絹織物など既存産業のネットワーク化、の3点を掲げ、新しい産業の創出や立地促進をうたっている。その中核となる舞鶴港が担う役割は大きい。  また、舞鶴港とリンクした丹後産業の活性化とともに、農林水産業と連携した観光振興の取り組みも広がりつつある。近年、赤れんが博物館、引揚記念館、五老スカイタワーなど観光スポット誕生の話題にこと欠かない舞鶴市だが、舞鶴21ビルのすぐ南側には、地元で水揚げされた魚介類を販売する海鮮市場「舞鶴港とれとれセンター」がこのほどオープン。東港エリアでは、商工業と観光振興の拠点施設として商工観光センターが建設中だ。  鉄道網の整備もこの10月、1999年(平成11年)秋の開業をめざしてJR舞鶴線(綾部〜東舞鶴間26.4km)の電化・高速化工事に着工。舞鶴方面へのアクセスが便利になるのをはじめ、山陰本線や福知山線と一体となった鉄道ネットワークが形成されることになる。  物が集まるところには人が集まり、人が集うところには活力が生まれる。対岸の中国、韓国、ロシアや、東南アジア諸国の経済の自由化が進むなかで、これらの国々と航路によって縦横に結ばれる――日本海側の門戸港・舞鶴港には「飛躍への夢と可能性がある」(萩原専務理事)。それは同時に、府北部地域の産業拠点として新たな発展のカギを握っているといっても過言ではない。





MONTHLY JOHO KYOTO