- 特集
地球温暖化防止京都会議
「環境経営」の時代へ
■2010年に向けて
- 京都会議後は、会議の結果を踏まえて、国際的合意による温暖化防止を前提とした経済運営が求められてくるだろう。わが国の基本体制としてはすでに環境基本法(93年制定)があるが、さらに具体的にCO2削減のための総合的な枠組みや、各種施策の体制づくりが急がれることになる。京都府でも環境保全計画を策定したが、「環境問題が人間の活動から生まれるものである以上、国、企業、個人というすべてのレベルで取り組まなければならない。その意味でポスト京都会議の動向に注目したい」(京都府地球温暖化防止京都会議推進室)としている。
ところが現状は、わが国のCO2排出量は90年以降も増加傾向にあり、「2000何年までに90年レベルまで戻す」という当初の目標は達成困難な状況にある。特に民生部門と運輸部門は増加の伸びが大きくなっている。
このため、政府は省エネルギー対策として、現行のままでは2010年の排出量が4割近く増える民生部門を横ばいに抑えるほか、同様に4割増が見込まれる運輸部門を17%増に、同5%増の産業部門を7%減にそれぞれ圧縮するという目標をこのほど提示した。目標達成に向けて、エネルギー効率を家電で3割、住宅2割、ビルで1割程度引き上げるとともに、「国民のライフスタイルの抜本的変革」として (1)28度未満の冷房、20度超の暖房の自粛 (2)給油温度の引き下げ (3)TVなど使用しないときでも微弱な電流を流している「待機電力」をやめる――などを挙げている。
また通産省では、2010年までにCO2を5%削減した場合、GDPを2%程度押し下げると予測。大型家電の生産禁止や、断熱性に優れた建材の導入など新築住宅への次世代省エネ基準の義務付け、自動車燃費の25%向上、ガソリンと電気を併用したハイブリッド車の生産などを全生産台数の半分まで引き上げる必要があるという。
産業界でも、経団連はこの夏、90年を基準に2010年に向けた業界ごとのCO2削減のための「自主行動計画」を発表した。例えば、鉄鋼業界では生産工程でのエネルギー消費量10%減を掲げ、そのためには約3兆円の省エネ投資が必要だという。環境対策をいかに経営に取り込むかは、企業の将来を大きく左右しかねないだけに、技術面などで従来の枠を突き破ろうとさらなる対策はすでに始まりつつある。
日本のCO2排出量 部門別内訳と推移(単位:炭素換算100万t、%)
部 門 | 1990年度 (構成比) | 1995年度 (構成比) | 90年度/95年度 |
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産 業 | 133.7 (43.6) | 133.8 (40.3) | 100.0 |
民生 | 家 庭 | 37.7 (12.3) | 43.5(13.1) | 115.4 |
事務所 | 34.0 (11.1) | 39.2(11.8) | 115.3 |
運 輸 | 58.3 (19.0) | 67.8 (20.4) | 116.3 |
その他 (発電、焼却など) | 43.0 (14.0) | 47.9(14.4) | 111.4 |
全 体 | 306.7 (100) | 332.2 (100) | 108.3
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- ■「エコビジネス」に注目
- 「持続可能な開発」――自然環境を守りながら、生活レベルを維持・向上させる経済活動を通じて、具体的にどのような需要が見込まれるのだろうか。環境への悪影響の少ない持続可能な経済への転換は、産業革命になぞらえて「エコ産業革命」とも称されている。
通産大臣の諮問機関である産業構造審議会がまとめた「産業環境ビジョン」(94年)によれば、左記のような分野があり、市場規模は15兆円(93年)から2000年には23兆円、2010年には35兆円に拡大すると予測。現在の景気の動向を考えると相当速いスピードで、マルチメディア産業などと同じく近未来の産業として成長する可能性があるとして有望視されている。
地球温暖化防止法をはじめとする環境対策が人類の未来にとって最優先すべき課題の1つである限り、マクロな視点でみれば、エコビジネスが今後大きく拡大していくことは疑いようがない。ただ、環境への取り組みをたんなる“ブーム”に終わらせないためには、確実な成長分野はどこか、ミクロの視点でしっかりと見きわめることが重要な戦略課題となってくるだろう。
環境産業の分類
- 環境支援関連分野
(公害防止装置、環境コンサルティン グなど)
- 廃棄物処理・リサイクル関連分野
- 環境修復・環境創造関連分野
(河川浄化、都市緑化など)
- 環境調和型エネルギー関連分野
(コージェネレーション、自然エネル ギー利用、低公害車など)
- 環境調和型製品関連分野
(リサイクル化・廃棄物減量化・再生 資源利用製品など)
- 環境調和型生産プロセス関連分野
(省エネ型プロセス技術など)
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――地球温暖化防止京都会議(COP3)を支援します――
(財)京都産業情報センター(理事長立石義雄)では、平成9年12月1日(月)から10日間、京都国際会館で開催される地球温暖化防止京都会議(COP3)を支援するため、インターネット接続への無料アクセスポイントを開設します。ホームページの閲覧はもちろん、インターネットメールの情報交換が可能です。詳しくは、 http://www.joho-kyoto.or.jp/mediastation/free.htmlをご覧ください。
開設期間:平成9年11月25日(火)〜平成9年12月15日(月) |
MONTHLY JOHO KYOTO
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