1997 OCTOBER
NO.264
KYOTO MEDIA STATION
特集
いよいよ本番世界標準(グローバル・スタンダード)の時代

 ISO9002取得への取り組み
 日本電気化学(株)
この10月にプリント配線板の受注・製造・出荷でISO9002を取得した日本電気化学(株)(京都市山科区)の取得動機は「生産革新のための体質改善」だった。  同社は取引先主催の生産品質革新コンクールでも表彰され、5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)など“土壌”はもともとあった。品質管理システムづくりが社内のマネジメント体制の強化にもつながるとして、2年前に取得を決意。それにはまず「経営者がISOについて一番よく知っていることが必要」(小林大二副社長)と、(財)京都府中小企業振興公社の講習会などに足を運んだ。  昨年9月、社内の推進体制は、小林副社長を管理責任者として従来あった統括品質管理委員会をベースにキックオフ。ビデオによる勉強会を行う一方、社員各自が「品質自覚ノート」を持ち、会社の目標、部門の目標をはっきり認識するなど、組織の上から下まで取得目的の浸透を図った。  最も苦労したのはやはりマニュアルづくりで、ISOが要求している項目とこれまでの業務手順とのすり合わせ。認証の予備審査での指摘はマニュアルの文章表現に関するものが中心だったそうで、小林副社長は「ISOの要求項目に従ってまず一通りつくり、自社のレベルに合わせて精度を高めていくことが近道であることがわかった」と振り返る。  認証取得のための費用は登録審査費用を中心に200〜250万円かかった(ISO9001〜3のどれを選ぶかによって、また個々の企業の事情によって変わってくる)。今後もサーベイランス(維持審査)や更新審査があり、出費もバカにならない。だが、小林副社長は「以前は取引先によってまちまちだった要請が、最近はISOがモノサシになるケースが多いので統一化が図れる」という。それにもまして、取り組みを通じて「生産部門だけでなく、営業や経理、総務の社員も品質に対する意識が目に見えて変わってきた。社員の意識改革が最大のプラス効果」との判断だ。

 PDCAサークルで改善−ISO14001−
 
9000シリーズの延長線上にあるのが環境管理システムのISO14000シリーズで、96年9月にISO14001が発効された。この規格は地球環境問題への対応を目的としたシステムで、環境保全のための経営指針や行動計画の策定、それらを実施するための環境管理体制、この管理体制が規格に沿ったものかどうかをチェックする環境監査の実施、といった社内体制の整備に主眼を置いている。  システムの基本となるのは、「このような考えで、このようなことに取り組む」という環境方針。そして環境方針に則り、管理できる範囲でPDCAサークル<Plan→Do→Check→Action>が回るようにシステムを構築していくことになる。 ・まずは現状を知るため、工場の場合ならばエネルギー、原材料をどのくらい使い、その過程で環境負荷(不要な排出物、排水、排ガスなど)はどのくらい出ているかを調べる。 ・次に、調査結果に対して目標や実行計画を立て、その計画に沿って実際の活動を進めていくが、その際、担当者を決め、必要なことは教育訓練し、手順や運用基準を定めて実行する。 ・実施した結果については、目標に対してどうなっているかをチェック。一方で、内部監査を行って検証をする。さらに、その結果を経営者が見直し、環境方針や目標、実行計画などを修正する。  こうしてPDCAを回していくことになるが、ISO9000が一定レベルを維持していくのに対し、14001は現状を維持するだけでなく、絶えず改善・向上を求めているのが一番の特徴だ。

 ISO14001 全社員への徹底
(株)堀場製作所
(株)堀場製作所は、ISO9001取得に続いて今年6月、国内の分析・計測機器専業メーカーでは初めて本社・工場の全部門で14001の認証を取得した。  同社は環境関連の計測機器を手がけているだけに、事業活動における環境対策にもいち早く取り組んだ。91年に環境管理室を設置し、92年の地球サミット(リオデジャネイロ)の展示会に単独出展したほか、WMO(世界気象機関)の基準観測所である気象庁・南鳥島観測所にCO◇2◇測定装置を納入。14001発効前の96年1月にキックオフ、「消費電力、廃液発生量が従来機器より5%少ない機種の開発」や「プリント基板の無洗浄化、金属加工品の水洗浄化により、2000年度までにフロン系、塩素系溶剤使用の全廃」などを目標に掲げた。  “取得宣言”と同時に、全員参加へ向けて社内ポスターの掲示や、毎週発行の社内報に15週にわたって環境ISO特集を連載。推進のための組織は、経営者(環境担当役員−専務)による議決機関として「ISO推進会議」があり、それを受けて執行機関の「環境会議」が各部署へ指示・伝達を行い、また審議機関である「環境管理委員会」が課題を洗い出して管理責任者(鈴鹿周正 環境管理室長)に報告するシステム。生産工程だけでなく、製品組み立てや包装時のごみの分別収集から昼休みの消灯運動まできめ細かな取り組みも進めている。  マニュアルは「細かい見直しを含めると5回改訂した」(鈴鹿環境管理室長)という。管理システムの稼働状況に対する内部監査は、監査員教育によって資格を取得した社員18人で編成して今年2月に一斉に実施、登録審査への準備を整えた。現在でも「毎日のように各現場から環境対策に関する相談や問い合わせがある」(同)そうだ。  自由闊達な研究開発型企業で知られる同社ならではの事例ともいえるが、鈴鹿室長は「省エネルギー・省資源、廃棄物の減量化、環境負荷の低減は、環境対策として重要なばかりでなく、今日、企業経営にとってもメインテーマになっている。それはシステム構築もさることながら、普段からの取り組みと経営者の熱意に左右される面が大きい」と話している。

 ◎導入目的を明確に
 
環境対策にはコストがかかると一般的には考えられている。確かになんらかの投資があり出費が伴うが、だからといって時代の流れに背を向けるわけにはいかない。そこで、環境対策に積極的に取り組んでいくには、経費節減、利益向上に結びつくテーマを取り上げることも重要なカギとなる。環境保全と同時に経費節減にも貢献できるという利点を説き、全社的な理解を得ていくことも大切だ。またISO14001には、企業内での経営方針の徹底を監査の対象としていることから、「環境面だけでなく、経営システムそのものの効率化につながる」と幅広い“効能”を期待する声もある。  そこで大切になるのは、システム構築のねらいは何かを経営者がはっきりさせておくこと。例えば、企業イメージを上げる▽取引上有利な立場に立ちたい▽環境保全と同時に経費削減に役立てたい▽リスク管理の一環にしたい▽体質改善運動の1つとする(認証取得にあたっては全社的な運動が必須となる)……。こうして経営者が決断し、環境方針を社員に示すことから始まる。  対策を進めていくうえでの基本的な手順や運用基準は、できるだけ簡潔に、フローチャートなどを活用すると使いやすい。記録類はフォーマットを作成しておくと便利だ。文書作成の目的は、誰でもミスがなく、同じように作業ができるようにすることである。  中小企業の場合、問題は目標達成への道筋をどうするか。取り上げたテーマに詳しい専門家が社内にいなければ社外の力を借りることになるが、それを補うにはまず情報入手・相談ルートを確保すること。京都府内では、(財)京都産業情報センター、京都府中小企業総合センター、(財)京都府中小企業振興公社、京都市中小企業指導所など多くの機関が企業への情報提供やセミナーの開催などを行っている。  通産省によると、今年8月末現在でISO14001の認証取得件数は電機、鉄鋼などを中心に389件、世界では英国(570件)に次ぐ。産業界だけにとどまらず、自治体でも認証取得や率先垂範の動きが活溌化。こうした動きは、大企業からやがて中堅企業、中小企業へと波及してくるだろう。そのときのために、現状の自己診断など基本的な準備をしておきたい。

◎ISOシリーズ
(財)日本適合性認定協会(JAB)認定審査登録機関
審査登録機関TEL
ISO9000ISO14000
(財)日本規格協会03-3583-806103-3583-8012
高圧ガス保安協会03-3436-616303-3436-1351
(財)日本品質保証機構
ISO審査本部
03-3584-912303-3584-9088
(財)日本電気用品試験所03-3466-974103-3466-9242
日本検査キューエイ(株)03-5541-2751
日本化学キューエイ(株)03-3580-0951
エスジーエス・ジャパン(株)
国際認証サービス部
03-3353-2781
※JAB認定の審査登録機関は9月現在で品質管理システムが21件、環境管理システムが8件。本表では両方に対応している機関のみ抜粋した。  各機関には認定されている分野(範囲)があり、より詳しい情報はJABホームページ(http://jab.or.jp)で入手できる。


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