『負のデザイン』

 現在、モノを産み出すこと、いわば正(プラス)の方向が過剰となり、ゴミが増え、生活環境が狭隘に萎えてきている。  今こそ、負(マイナス)の方向を強く自覚したデザインが必要なのである。
 止める、省く、放置するといった、これまで好まれなかった行為にスポットを当てて、真の問題解決に踏み出したい。

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◆ワークショップの作業手順
1. あらかじめ拙著『負のデザイン』を読了してWSに望んでもらう。

2. 自己紹介と本WSに参加した動機および負のデザイン(以下負D)に対する想いを語る。

3. ミニ講義:負D(森本)
 量的にも質的にもバランスを失った今日の社会で、デザインの最も重要な役割は、人間の暮らしを「本来の姿に戻す調整機能にあると考える。
 特に、モノへの依存を強めすぎた近代的都市生活は、規模、質、精神的充足など、どの面をとってみても拡大主義に走りすぎている。
 生物としての人間は、実は相当にわずかな生活資財で事足りるという素朴な事実を無視して、欲望を煽るばかりの商品の開発や生活規模を肥大化させるばかりの営利事業に熱心である。
 こうした正の方向への偏重を是正するには、まず、マイナス創造、つまり負のデザインという概念を鮮明に自覚しなければならない。消費者、生活者以前に、一個の生命体として、真に必要なものとは何なのか、いわば生を保障する最小律をどのように定めるかを明らかにしなければならない。

4. 現状の暮しにおける「過剰創造」の事例を指摘し、その「負のデザイン化」を構想。
 やり過ぎで無駄の多い創造事例を「過剰創造標本」、その無駄を排除した結果を「負のデザイン化標本」と呼び、参加者に、この二つの標本カードを配布しアイデアを記入してもらった。そして各人発表後、その提案内容に即して全体で議論した。
 事例の一部を紹介する。前者が過剰創造、後者が負D化。「墓→土に埋める」、「ぴかぴかの車→艶消しの車(手入れが楽)」「アイロンカバー→不要」「部屋の鍵→不要(家族間の信頼)」「柄がツイストした歯ブラシ→真っ直ぐの柄(無意味な構造)」「トイレットペーパーのミシン目→不要」「銘々皿→大皿」「和風建築風電話BOX→ガラスの電話 BOX(目立ちすぎない)」など。

◆ワークショップの成果(ここで出た特に興味深い議論を箇条書きにする)
●音響製品の問題。「出す」音にばかり創造力が使われ、「消す」工夫があまりにも検討されていない。
●CADによる設計の問題。使い慣れたコマンドで安易に線を引いてしまい、実際のモノが備えるべき要件を無視して機械的に処理してしまう。
●住み手が建築家に完成品を要求してくるのはおかしい。建築家は最小限の構造を設計するだけでいい。住み手自身がただの家屋(house)を家庭(home)にするのだ。
●キャンプで、友人達が持ち込んできた道具類があまりにスゴモノ揃いであり、こんな場で「もうたくさん」と強い嫌悪感を覚えた。


リーダー:森本  武/嵯峨美術短期大学デザイン学科
通  訳:片山  環/
参 加 者:上田 正幸/イシダアイデス(株)
     加藤 淳子/インテリアデザイン
     小橋 浩子/武蔵野美術大学
     上島 健二/東京造形大学在学中
     高橋祐一郎/多摩美大学生
     西堀  晋/松下電器産業(株)オーディオ事業部デザイン部
     野口  聡/
     野口 直人/武蔵野美術大学建築学科
     平井 正人/(株)デザインオペレーション21第3デザイン室
     藤井  潔/(株)東芝デザインセンター
     本田 圭吾/
     宮城しのぶ/デザイン、建築関係
     宮崎 祥江/東京造形大学デザイン科II類3年家具コース
     八十 常充/松下電器産業ナショナルリビングプラザ
     山本 卓身/東京造形大学4年生

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