『環境に同化するデザイン』

  

 このワークショップでは、西洋と日本における「自然観の違い」を手がかりに、デザインがその専門性をとおして今日の環境問題に接近するための視点と方法について考えることが主な目的となる。環境問題はいま、これまでの持続可能な方法に関わる技術論から、人々の生活や生き方に対する新たな価値観の創造へと、論点が拡大している。ここでは、デザインの役割をより豊かに想像することで、生産や消費に対する考え方の転換を試みようとするものである。そのため、ここでの主題は包括的・思弁的な内容のものから具体的・方法的な提案にいたるものまでが対象となる。これは“多様な価値観のもとでのデザイン”を考えるための契機である。

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◆ワークショップの進行と内容
 ワークショップは、それぞれの参加者においてあらかじめ用意された内容にもとづくプレゼンテーションを中心に進められた。ワークショップ・リーダーによる主題設定の意図、ゲストによる「茶室、庭、住宅などにみる日本的自然観の特徴」について、ワークショップの主題解題をかねたレクチャーがあり、続いて、各参加者によるプレゼンテーションに移った。
 プレゼンテーションの内容は、その発表内容にしたがって大きく四つに整理できる。一つは、日本的自然観の形成過程やその変遷に関わる文化史的・民俗学的考察。ここでは、西洋と日本の自然観の違いにつながる宗教的価値観への言及、西欧に学ぶ近代化の過程で失われた日本的精神性、およびその環境との感応についての論証、その回復のための提言など。二つめは、企業内での実践事例をもとに“環境共生”技術開発の考え方、あるいはさまざまな実験(e.g.バイオ・スフィア)に対する悲観的意見や提言など。三つめは、これまでの科学的合理主義に替わる人文学的なコードによる環境問題の読み替え。そのもとでの合理的発想による新たな「もの」づくりへの提言。最後は、多様な価値観の実践にともなう問題の発見。多民族が学習する教育現場での事例をもとに、異文化が交錯し合う状況での文化的アイデンティティの保存、迎合、解体、再構築など、その過程についての心理分析的な研究報告。

◆ワークショップの成果
 プレゼンテーションの内容が示すとおり、主題へのアプローチは多岐におよんだ。しかし一方、すべての報告に共通する見方も明らかになった。すなわち、文化の生態系における一元論が、いわば強制的に環境を破壊させる結果をもたらした、との認識である。例えば、これまでのデザインが意図的に切り捨てている“時間”や“愛着”といった概念がある。これらをデザインの主要なアイテムとして取り込み、人々の能動的な感情を持続して引き出すための発想や考え方が語られた。それは、これまでの工業製品を生み出してきた思想とはあい容れない考え方だろう。だが、いまの事態にいたる要因をたぐりはじめると、その思想に行きあたるのもまた事実である。
 ここでの議論が「多様な価値観のもとでのデザイン」を考えるために、そして行動への一歩を踏み出すために、一つのきっかけとなることを願う。


リーダー:和爾 祥隆/東京造形大学教授
ゲ ス  ト:薄  靖彦/東京造形大学教授
参 加  者:赤荻 浩之/東京造形大学学生
     秋山 明美/(株)オープンハウス
     稲葉  聡/(株)プテロフォーメイション
     小野  正/(株)本田技術研究所、デザイン第6スタジオ
     鏑木  崇/明星大学学生
     川本 誓文/大阪府立産業デザイン研究センター
     最所 祐二/松下電工(株)
     酒井 良治/東京造形大学学生
     菅原 史也/東京造形大学研究生
     須知眞知子/エディター
     田村真理子/武蔵野美術大学学生
     中川 邦彦/東京造形大学・フォンス(有)
     原田 健治/ユニチカ(株)デザインセンター
     溝口 寛二/プラス(株)オフィス環境研究所
       WRIGHT,Rosemary/川崎医療福祉大学
     和田 麻弥/東京造形大学学生
 
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