秋深し美しきかなこの空にサイレンの中命消えゆく
眠るよな冷たき母の頬なでて目を覚ませよと願い届かん
我が身体亡き母の血を受け継いで愛し子にまたその血流れる
今日もまたありし日の母うかべては忘れることなどできぬと涙
形見分け、ひとつひとつ手に取りてにおいをかいでは淋しさつのる
永遠の別れとなりきお山での閉じる扉の残酷な音
亡き母の思いで深きこの服にそでを通せばあたたかきかな
亡き母の思いで深きこの服にしみつく香りのなつかしきかな
衣替え二度と着れぬと知りつつも来年も着ようねと母をはげます
遠い空母の笑顔を浮かべては時間よ戻れと願い虚しい
桃色のパジャマなじみて棺の中白装束は絶対似合わん
何ゆえに命の期限が決まるのか善悪問わぬは不公平なり
年明けて今年からはと誓うけど母を思えばまた涙かな
舞扇、華やかな舞台戻る日を想いつづけて棺と燃えゆく
あたたかき母の手にいつも抱かれてた昔を想い幸せかみしめ
ベッドにて衣替えの指示あおぐ未練残す目うるんで見えた
寝たきりでいいから生きていてくれと願うは酷な母の苦しみ
少しでも早く楽になりたいと思う気持ちが死の道開く
まぎわまで下の世話にはなるまいとひとりトイレで意識うすれる
生きてさえいてくれればとすぐ思うまだ話すこと山ほどあるのに
手をつなぎ母と歩いたこの道を今は我が子と夫と歩く