開催日時 : 平成15年12月10日(水) 15:30〜19:00 開催場所 : 京都全日空ホテル |
第1部 ゼロから始めるネットビジネス 第2部 イチから見直すネットビジネス 講師:有限会社エヌ・エフェクト 代表取締役 名渕 浩史 氏 |
1.ゼロから始めるネットビジネス |
日本のネットの現状 |
今年の2月における日本のネット利用者は5千万人・二人に一人はネットを使う時代です。 ブロードバンドも家庭の4割に浸透し、今までは使えなかった写真や動画などの大きな情報が 簡単に送れるようになり、今はネットビジネスにおいてチャンスの時期だと考えられます。 そもそもネットで商売をすることが成り立つと皆が気づきだしたのは1997年頃、家具のアオキ や楽天、傘屋ドットコムが現れ、実店舗を上回るような売上を上げだした頃です。それから2000 年頃までは皆がネットで売れる為のノウハウを探求する時代でした。 今はもうひと通り出尽くし、もっと戦略的に考えなければならない時代になっています。 初期の頃にネットビジネスに乗りだした大手やベンチャーには失敗したところも数多くあります。 早い・遅いはあまり関係ありません。取り組み方を考えることが重要です。 むしろ残ったのは、初期の頃からこつこつ継続し続けてきた中小の電子商店さんです。 例えば上の傘屋ドットコムさんなどは、ごちゃごちゃした一見判りにくそうなサイトなのに売れ ました。「本当に傘が買いたい」と思ってサイトを見る時には、デザインがキレイなだけのところ よりこういうものの方が一度にぱっとたくさんの情報が見られます。また、日傘など、季節がはず れている時には実店舗には置けない物も一年中売ることが可能です。 このような2001年頃までの先行事例はたくさん本になって出ています。大体同じようなことが 書いてあるので5冊読めば充分です。まずはそういう基本のノウハウを身につけて下さい。 |
BtoBとBtoC |
ネットビジネスはもともとBtoCが主流でした。しかし現在、製造業の方が取引先を探すなど、徐々 にBtoBに移行してきています。 フルイチという精密部品の会社があるのですが、そこは大変高い技術を持っているのに顧客に 無理な値下げの要求をされ、作っても作っても赤字でした。そんな頃にネット店舗を立ち上げたとこ ろ、その技術を認め適切な価格で取引をしたいという顧客がネットを通じて何人も現れたのです。 そこで思い切って今までの取引先をやめ、ネットのみで営業をするようになったところ、最初はやは り売上も落ち従業員も減りましたが2年後には3億6千万の売上を上げるまでになりました。 まあこれは極端な成功例ですが、このように製造業で高い技術を持っているのに、お客さんとの 出会いの場が少ないと思っておられる方はすぐにでもネット事業を立ち上げるべきです。効果が早く 出るからです。 今のネットビジネスの市場規模は、BtoCで5兆円程、金額としてはそんなに大きくないですが、 2002年から2003年の1年間で倍、と伸び率が高いです。BtoBは取引額が大きいのでもっと大きな 市場が望めます。 |
サイトを立ち上げる為に |
サイトを立ち上げること自体は大変簡単です。ホームページビルダーなど、安くて性能も良い作成 ソフトが幾つもありますしつくり方の本もたくさん出ています。 ただ、ネットでビジネスをする際には、インターネット特有の性質があるので、それを理解すること が重要です。 例えば、私は最近、定価14万のある椅子をネットで買おうと思いました。 その時にまずしたことはGoogleで商品名を入れて検索をかけることです。そして、売っている各サ イトの値段を見、少しでも安いところを探そうとします。 たくさんの店があるので、それを一度に見る為に楽天を使います。扱っている店とその価格が一度 に見られる、実店舗ではとても見てまわれない数の比較が一度にでき、すべてが透明になります。 そこで8万8千円で売っているところを見つけましたが、それでは決めずに次は2ちゃんねるという 掲示板サイトを見に行きました。ここは政治的な話から近所の噂まで、いろんな情報が飛び交って います。 そこでその椅子についての掲示板を見たところ、「この店は修理が遅い」「ここにこう言ったらこの 値段になった」など、対応や実店舗の状況までも知ることができました。大手の製品開発やマーケ ティング担当の方は、今や必ずこの2ちゃんねるをチェックしています。 ここで言いたいのは、お客さんはあくまでリアルの商品を買う為にネットを使用する、ということです。 ですが、今までの実店舗のみの時代では、お客さん同士がコミュニケーションを取ることもなく、 店のミスも報告されたりしなかったのですが、今はネットでそれが簡単にできてしまいます。すなわち、 その場を取り繕うような対応をしているとそれが一気に広まってしまうということです。 |
ネットの魅力と問題 |
ネットビジネスの魅力とは、従来の商圏では地元しか相手にできなかったものが、一気に全国を 商圏にできるということです。小さな電子商店が全国を相手に実店舗の何倍もの売上を上げること も可能です。 ですが問題は、全国が商圏ということは全国に競合他社ができるということです。今は競争が大変 に激化し、ネットに商品を上げても簡単には売れない状況になっています。その為、検索エンジンの 上位にひっかかってくるということが大変大事です。 また、比較が簡単になった為、判りにくくつまらないページはすぐ見てもらえなくなります。いい加減 な価格やいい加減な品物もすぐ見抜かれます。ネットでは「本物」が問われるということです。 また、ネットでは急速な情報の共有化により急速な情報の陳腐化が起こります。ネットビジネスに おいても、基本のノウハウは既に広まっており、新しいノウハウもすぐ真似されていきます。つまり 底辺が上がってきているということで、これから始める方にはハードルが大変高くなっています。 学んだノウハウをどれだけ自分達の商売に即して生かしていけるかが重要です。 |
スタート時の注意点 |
まずはパソコンを買うこと、そしてネットとメールを自分で使ってみること、つまりお客さんの気持ちに なってみることが大事です。そして同業社のページをよく見て研究してください。 ノウハウ本を読むのも大事ですが、本が苦手ならこういうセミナーにも積極的に参加しましょう。 始めた最初は売れません。しかしその間も継続的に時間・お金を投資しなければならないので、 社内の運営体制を整えていく必要が゛あります。 もし自分達でそれができないなら、無理をしてやるよりも外注を使うという手もあります。 その際のポイントは、まず丸投げは決してしないことです。業者には商品そのものの知識はあり ません。そこにはオーナーがどんどん口を出し、業者は制作に徹するようにして下さい。 また、安すぎる業者はやはりあやしいです。サイトをつくるというのは手間暇がかかることで、安い ということはその程度に手を抜いているということです。良いものは期待できません。お勧めは他 から紹介してもらうことです。 そして外注する場合、その後の連携が大事です。 立ち上げた後の更新は必須ですが、それも外注していく場合、「ページ単位でお金を払う」「月に 定額を払って希望時に更新してもらう」「売上が出たら支払う」などが考えられます。 ページ単位の場合、どうしてもお金がかかり修正しにくくなり、そうすると更新も少なくなって売れなく なる、と悪循環です。月単位では、殆ど更新しない時もあるかもしれませんが、しょっちゅう更新する ような月もあるでしょうし、業者の方も固定の収入があることで連携が強まるのでお勧めです。 |
2.イチからの見直し |
検索の重要性 |
今までお話したように、お客さんは物を買う時まず検索エンジンで探します。その際に重要なのが 検索に使うキーワードです。 自分が売りたいと思う商品名で検索をかけて、幾つのページがヒットするか見て下さい。その数が その商品の商圏です。 自分が売りたい物をお客さんはどんなキーワードで探すか、お客さんの欲求をキーワードに置き 換えて想像してみて下さい。そして外せないキーワードを幾つか考え、実際に検索してみてどんな ページが出てくるか見て下さい。例えば「商品名」「ブランド名」「安売り」「アウトレット」など。 そして検索のトップに出てきたページをよく見て、何故それがトップになるのか、そこと自分のページ のどこが違うのかよく考えてみて下さい。 ネットで物が売れるかどうかはその商品に即した売り方をしているかどうかが重要です。その商品 の情報量が多いことが良いのか、綺麗なデザインの方が良いのか、自分の商圏に入るお客さんが 何を望んでいるのか身極めることが大事です。「絶対的に強いサイト」というものは無く、すべて他と の比較になります。その競合の内容をまず見極めましょう。 |
お客さんを見極めるヒント |
自分のサイトのコンセプト、誰にどんな商品をどのように売るのかをよく考えてください。 お客さんは何故その商品をわざわざネットで購入しなければならないのか、それをイメージする為 にも自分でネットで買い物をしてみて下さい。 ネットで買う理由には、まず実店舗にそれが無い、ということが考えられます。無いからネットで 検索をし、購入するという行為が当たり前の時代になってきています。 また、実店舗に行くのが面倒だからネットで買うという人もいます。この場合、配達のスピードや 支払方法が多く自分で選べることなどがポイントになってきます。 そして今は、オークションや共同購入などでネットショッピングそのものを楽しむ人達も出てきて います。 ネットで物を買うには、このように「ここにしか無い」「安い」「ポイントがつく」などたくさんの理由が あります。この為、リアルのビジネスからネットに展開する場合、実ビジネスと全く同じ商品・売り方 ではあまり成功しません。 レイトしては、企業の外注として金属部品をつくっていた会社なんですが、一般のお客さん向けに ネットで部品を販売しようとしたところ、さっぱり売れませんでした。 これは初め、「何でもつくります」というウリでやっていたのですが、そんなキーワードでは誰も検索 しないのです。そこで、「バイクの部品専門」に変えてみたところ、「バイク」「部品」「オーダー」などの キーワードでひっかかるようになり大成功した、というところがあります。 また、眼鏡屋さんなのですが、眼鏡は調整があってネットで売るのは難しい為、商品をサングラス に特化、更に「芸能人の〜が使っているサングラス」という品ばかり集めて売ったところ大変よく 売れた、などの話があります。 このように、「自分の商品を上手く編集する」ことがネットビジネスでは大変大事です。持っている 商品を全部載せよう、などと考えない方がいいです。 他に、ネットでどうお客さんとコミュニケーションを取っていくかも大事です。 |
まとめ |
まず大事な点は、専門性をいかに高めるかということです。実店舗では無い物や情報、または徹 底的に安い価格などでもいいです。 そして顧客に判りやすい提案をしていくこと。「何でもできる」はダメです。自分の得意分野を生かす ことで顧客のレベルの高いニーズも満たすことができます。 それから、店そのものの詳しい情報を出すことも大事です。それによってお客さんは信用と安心を 持つことができます。それに関連して、SSLなど、セキュリティにも配慮する必要があります。 それから先程も申し上げた通り、検索エンジン最適化(SEO)は大変に重要です。キーワードとなる 単語をページ内にたくさん出すこと、いろんなサイトとリンクしていくことなど、検索での順位を上げて いくことを心がけて下さい。特に競合の多い人気商品を扱いたい時はSEOは必須です。 そして始めたら、しばらくの間は我慢も必要です。これからネット人口はますます増えます。最初は ダメでも少しずつ売上は伸びていく筈です。 まずは始めてみて下さい。 |