開催日時 : 平成14年12月11日(水) 15:30〜17:00 開催場所 : マリアージュ(アバンティ8F) |
ネットビジネス再スタート! 〜再出発のための処方箋とは?〜 講師:有限会社エヌ・エフェクト 代表取締役 名渕 浩史氏 |
ノウハウの共有化が高いハードルに |
有名ショップのオーナーやセミナーなどで、ネットビジネスの成功事例を聞いたのに売上げが伸びない…。 そんな悩みを抱えている人は多いようです。それはなぜでしょうか。 いくつかの原因が考えられますが、まず1つ目はクリアすべきレベルが高くなっているということ。 ネットビジネスのノウハウは共有化されているので、5年くらい前までは5つくらいのことをやっていれば よかったのが、今では100ぐらいのことをやって初めてスタートラインに立てるという状況になっています。 では何を優先して取り組めばいいかといえば、まずノウハウをいったん自分仕様の形に落とし込むという こと。 たとえば、「たまねぎ工房」さんという着物の生地でアロハシャツを製造・販売しているお店では、お客さん が商品をクリックするとショッピングバスケットではなく、いきなりメーラーが立ち上がる仕組みになっています。 メーラーを立ち上げることによって、お客さんがメッセージを書き込んでくれる確率が高まり、それがリピーターの 確保につながります。 つまり、従来の「ショッピングバスケット」というノウハウでなく、ターゲットや販売アイテムに合わせて自分仕 様にノウハウを落とし込んだわけです。 もう1つの原因として、結果が出るまでなかなか我慢できないというケースもあると思います。今や2人に1人 がインターネットを使用していますが、オンラインショッピングを楽しんでいる人はまだまだ一部の人に限られて います。書籍やCD、家具などの市場は立ち上がっていますが、商材によってはいくら頑張っても売れない場合 もあるでしょう。 しかし、ネット市場はいずれ広がっていくのは間違いありませんから、とにかく地道に更新を続けていくことが 大切です。 そのほか、ネットビジネスに取り組める社内体制になっているか、単なる会社案内やお店紹介になっていない かなど、もう一度あらためて見直す必要があるでしょう。 |
お客さんの視点でホームページをのぞいてみる |
「どうすればアクセスは伸びますか」という質問をよく受けることがあります。 確かに、アクセス対策というのはいくつかありますが、アクセスが伸びてもサイトの中身が今ひとつであれば 売上げにはつながりません。サイトを充実させればページ数が増えていきますから、その分ヒット数が高くなって いくわけです。 また、サイトの中身がおもしろいから雑誌などで紹介されるのであって、検索エンジンの上位にあるから注目さ れるということはありません。 では、充実したサイトとはどのようなものなのでしょうか。 サイトの中身を考える要素として、商品やユーザビリティ(わかりやすさ、使いやすさ)、情報量・質などいくつか ありますが、最も大切なのはコンセプトです。まずはお客さんを自分の中に憑依させて、お客さんがトップページで どんな情報を目の当たりにするか、そのページを見てどのように考えるのか想像してみてください。 たとえば、トップページに目次しか載っていないようなサイトは、こちらからすれば膨大な情報を整理しているつ もりでも、お客さんにはその下に隠れている情報がわからないので、サイトの中身が判断できません。 「うちは何をするサイトか」「だれのためのサイトか」ということをきっちりと考えた見せ方をしないと、お客さんは逃 げていってしまうわけです。 また、これまで法人取引ばかりやっていたメーカーさんが、一般のお客さんを相手に商売をするというケースも よく見られます。しかし、業者さんに向けて情報を発信しているのか、消費者に向けて情報を発信しているのか、 そのページを見ただけではコンセプトがわかりにくいことがあります。 一般消費者をターゲットとするなら、会社案内の中にショップが一部設けられているような内容よりも、いっその こと通常のショップ形態にしてしまうほうがいいでしょう。では、本来のB to B(企業間取引)のほうはどうなるか というと、企業担当者はショップの内容を見て、この店(企業)は取引きができるかどうかきちんと評価してくれます から、コンセプトさえしっかりとしていれば大丈夫です。 |
ネット商圏では「輝く」ことが成功の道 |
インターネットビジネスの後発組には、たくさんの困難が待ち受けているのは確かです。インターネットは1つの 商圏なので、同じ切り口のサイトであれば、内容も認知度も優れている先発組のほうが勝つに決まっています。 では後発組が勝ち残るためにはどうすればいいのかといえば、1つは有名サイトを上回るサイトに仕上げるとい うこと。 有名サイトよりも価格が安い、説明が詳しい、取り扱いアイテムが多い…。しかし、これは非常にコストがかかるし、 それなりのノウハウも必要となってくるので一朝一夕には難しいかもしれません。 2つ目は、有名サイトと同じ路線で少しずつ実績を積み上げる、完全マネ路線。有名なサイトのやり方に倣って、 ちょっとずつ売上げを伸ばしているショップは全国でも少なくありません。しかし、これも現在ではマネ路線の競合 相手が増えてきているので、簡単に売上げを伸ばせないでしょう。 私が一番おすすめしたいのが、輝ける場所を探すということ。 つまり、「専門性」と「ニッチ性」を前面に押し出した、専門店から出発するということです。 ネット商圏では、「輝く」ことが非常に重要になってきます。競争が激しいインターネット商圏の中で輝ける存在に なるには、いかに他と違うことをやるか、または高い専門性を発揮するか、ということが大切です。 たとえば、「てるくにでんき」さんはもともと空調設備や電材商品を取り扱う店でしたが、照明器具専門店にした とたん、急に売上げが伸びるようになりました。取り扱っている商品はナショナルブランドがほとんどで、価格も全国 一安いというわけではありません。ではなぜ売れたかというと、リアル店を上回る豊富な商品知識と現場知識を持って いたということです。お客さんを満足させるサービスを提供できるのも専門店ならではの強みだといえるでしょう。 また、「家具のヤマカワ」さんはスライド書棚を取り扱う専門店です。この店も特に価格が安いというわけではあ りませんが、通常の家具店ではわからないような専門知識をしっかりと持っているので、お客さんの疑問や質問に メールなどできちんと答えることができるわけです。こちらは立ち上げ2カ月目で月商100万円を突破しています。 |
関連商品のスライドで売上げ拡大 |
専門店は特定の分野しか取り扱わないので、コンテンツのボリュームが少なくてすむというメリットがあります。 何か1点に絞り込んで集中して取り組めば、先発組よりも内容で上回ることができます。だから輝きやすいのです。 また、専門性を要求するお客さんは一定レベル以上の方が多いので、複雑なキーワード検索によってわざわざ 店を見つけてくれます。情報量、情報の質そのものに付加価値を感じてくれますから、多少価格が高くても、また 知名度が浸透していなくても、いい商品があれば買っていってくれるわけです。 では、どのような専門店にすればいいかということですが、それぞれのお店や会社の中身によって違うので、 まずはビジネス資産の棚卸しをすることから始めていただきたい。自社商品のどこに特徴があって、どんなお客さんを ターゲットにしているのか、それらを1つ1つ見極めること。珍しい商品だとか、だれもやっていない商品であることに こだわる必要はありません。専門性が発揮できるカテゴリーや、一部で熱烈に支持されている商品のカテゴリーと いうのは必ずどこかにあるはずです。 専門店にして「輝く」ということは、市場が限られてしまうということです。ある程度ビジネスが軌道に乗ったら、 その次の展開をどのようにするのか考えなければなりません。 その方法の1つとして、関連商品にスライドさせていくというものがあります。「ワイングッズドットコム」さんはワイン の周辺グッズを取り扱っている専門店ですが、非常に珍しいサイトなのでいろいろな雑誌などに紹介されて売上げを 伸ばしました。ところがあるとき、ワインを販売する「サイバーワインショップドットコム」さんへと変わったのです。競争 が激しいワイン市場にいきなり参入するのではなく、まだだれもやっていないワイン周辺グッズの販売で実績をあげ てから、関連商品にスライドさせていったユニークな事例です。 |
デザインよりもコンテンツ優先で |
すでにホームページを立ち上げている方、売る商品が決まっているという方は、まずホームページの整理をして いただきたいと思います。既存のコンテンツをほんの少し見直しただけで、売上げが増えたというケースはよく見 かけます。 もう1つ大切なことは、立ち上げ時のページはあくまでも「たたき台」だということ。お客さんからいろんな質問を受 けている間に、どこを変更すればいいかということが見えてくるはずです。 たとえば、デザイン事務所などで高価なお金を支払って立派なホームページを作ってもらっても、文字1つを更新 するにもどうしていいのかわからないというのでは絶対にネットビジネスはうまくいきません。 JPEG(写真データ)とGIFだけで作られたホームページを見かけたことがありますが、ご存じのようにロボット型検 索エンジンというのはテキストデータだけを取り上げるので、理論上、このタイプの検索エンジンから、そのホーム ページへのアクセスは絶対にあり得ないわけです。 専門サイトはコンテンツがすべてであり、デザインはあくまでも補助的な要素だということを忘れないでいただき たいですね。 まず、そのサイトでどのようなビジネスを展開するのか、そしてそのビジネスの形にあったデザインは何かという ことを考えて、試行錯誤を繰り返しながらサイトを構築していってほしいと思います。 ネットビジネスというものは、手間ひまをかけないと絶対に成功しません。とりあえずホームページはあるけれど、 誰が担当者かわからないというのでは利益は生まれないのです。 もし、どうしても時間や制作の技術がなければ外注を使うのも一つの方法ですが、マーケティング志向の強い 業者、コミュニケーションの取りやすい業者にお願いしてください。それと、ホームページの内容や更新をすべて 外注任せにするのではなく、必ず社内の担当者がかかわるようにしていただきたいと思います。 本日の講演を参考にして、ぜひネットビジネスの再スタートを切っていただきたいと思います。 どうもありがとうございました。 *参考サイト ●たまねぎ工房 http://www.tamanegi.com/ ●てるくにでんき http://www.terukuni.co.jp/ ●家具のヤマカワ http://www.kagu-ya.ne.jp/ ●サイバーワインショップ.com http://www.cyber-wineshop.com/ |