◆京都インターネット利用研究会12月例会報告


開催日時 : 平成14年12月26日(木) 14:00〜15:30
開催場所 : 京都リサーチパーク1号館AV会議室
     ハイテク犯罪の現状と対策について
     講師:京都府警察本部生活安全部生活安全課
         ハイテク犯罪対策室長 警視 寺田 良輝氏


多種多様化するハッカーの手口
  平成14年版の情報白書によりますと、平成13年の国内のインターネット人口は5593万人、平成17年には
 8720万人に達するのではないかと予想されています。
  インターネットは、アメリカの商務省長官が「産業革命を凌ぐものになるだろう」と述べているとおり、いまや
 生活のあらゆるシーンの中で欠かすことのできない存在だといえるでしょう。

  しかし、その一方でウィルスや不正アクセスなど、いわゆるハイテク犯罪が多発しています。
  インターネットというのは、もともとセキュリティを考えて構築されたものではありません。特に、企業の97.6%が
 インターネットを利用している今、いったんウィルスに感染してしまうと、自身の業務に多大な影響を与えるだけで
 なく、取引先に対して信用低下につながる場合もあります。
  最近のウィルスは多種多様で、メールの添付ファイルを利用してネズミ算的に拡大していくものや、ホームペー
 ジを閲覧すると同時に感染するものなど、その内容は悪質化しているのが現状です。


常時接続の落とし穴。ある日突然、加害者に
  コンピュータウィルスとともに増加している不正アクセスの問題ですが、これはネットワークやシステムのセキュ
 リティホール(脆弱性)をついて相手のコンピュータに侵入することです。警察庁が全国57カ所に設置したネット
 ワーク防御システムに対するサイバー攻撃の状況を調査したところ、平成14年7月〜9月の3ヶ月間で5万件以上の
 攻撃がありました。

  最近ではADSLの普及にともない、常時接続でインターネットにアクセスするケースが増えています。常時接続は
 IPアドレスが長時間一定であり、ハッカーの標的になりやすいことから、不正アクセスの踏み台にされ、ある日突然、
 相手企業から抗議を受けたり、訴訟を起こされたりすることもあるので十分な注意が必要です。

  ハイテク犯罪の特徴ですが、他人に見られないネットワークを通じた攻撃であるため、攻撃者の特定が困難な場
 合が多いということであります。また、現実の世界の犯罪では指紋や足跡など何らかの痕跡が残るものですが、ハ
 イテク犯罪ではその痕跡が不明確で被害の発見さえ難しいこともあります。ネットワークにつながったパソコンさえあ
 れば、いつでも、どこからでも低コストで攻撃することができるので、いざ犯人を検挙してみたら少年だったということ
 も少なくありません。


管理者のセキュリティ意識の向上を
  ハイテク犯罪の相談で最も多いのは、ネットオークションに関わるトラブルです。具体的には、オークションで落札し、
 代金を前払いしたが商品が届かない、あるいは、デジカメを購入したが商品がまったく動かないなど、さまざまな相談が
 寄せられています。その手口も連絡先をプリペイド携帯電話にするなど巧妙化しているので、よく確認してから利用する
 ようにして下さい。

  また、インターネットの掲示板などに自分のメールアドレスや電話番号を知らないうちに書き込まれるという事件も増
 えています。掲示板が特定できる場合は、管理者に削除を依頼することも可能ですが、掲示板は非常にたくさんあるの
 でなかなか削除できないのが現実です。自分の個人情報を第三者に教えたり、パソコンに安易に入力しないように気
 をつけてほしいと思います。

  ハイテク犯罪の取り締まりですが、平成14年の検挙総数は前年比約94%増、ネットワークを利用した犯罪は全体の
 約98%を占めています。なかでも、児童買春や児童ポルノ法違反事件は昨年の約2倍と、著しく増加しているのが分か
 ります。
  京都府警では平成13年3月にハイテク犯罪対策室を設置し、情報セキュリティ対策や不正アクセス禁止法違反などの
 ハイテク犯罪の取り締まりに努めていますが、被害防止のためにはやはりセキュリティに対する意識を高めていくことが
 大切です。ID・パスワードの管理を確実にする、怪しげなサイトに近寄らない、ウィルス対策ソフトを導入するなど、十分
 な防御対策を実行していただきたいと思います。