◆京都インターネット利用研究会9月例会報告



開催日時 : 平成14年9月20日(水) 14:00〜15:40
開催場所 : 京都リサーチパーク 1号館 AV会議室
「ブロードバンド時代のネットワーク活用術」

     講師:NTTブロードバンドイニシアティブ 担当部長  馬西 徹氏


1.ブロードバンドとは

  圧縮技術の進歩により、ADSLやケーブルテレビのインターネットのアクセス環境でも
ペーパービューに耐えられる画質になってきました。また10から100Mbpsの光アクセス
サービスなら、映画作品を短時間でダウンロードしてから視聴するビジネスモデルも成立
可能になっています。
  ブロードバンドとナローバンドの境は、速度で300Kbps程度を言い、ダウンロードの時
間で言うと、1時間のテレビ番組を700Kbpsなら90分ぐらいでダウンロードでき、10Mbps
の光やADSLなら10分以下でダウンロードできる時代になってきました。

  ダウンロードとは、コンテンツをサーバ等からクライアント側に全て蓄積し、再生は完了
後に開始するのに対して、ストリーミングはインターネットでテレビ放送を実現する技術で、
マルチメディアデータを一方が送信し、これと同時にもう一方が受信しながら再生します。
  ダウンロードはクライアント側にファイルが残るため、改ざん・不正コピーの可能性があり、
映画などのコンテンツホルダにとっては問題が残ります。

  ブロードバンドの特徴としては、ネットワークが高速化したことで、

 1・全ての操作のレスポンスが高速になった。
 2・動画メールや動画チャットといった映像を交えた双方向通信の利用形態が登場してきた。
 3・常時接続があたり前になった。
 4・動画・音楽配信、対戦ゲーム、遠隔医療など新しいコンテンツ利用形態が登場してきた


ことが上げられます。

  社会に対する影響としては今まで使用料が高く大企業しか持てなかった高速回線の
ネットワークを、誰でも持てるようになってきたことがあるでしょう。

 
2.インターネット市場の動向

  近年、ブロードバンド化に伴うバックボーン回線費用の増加と、プロバイダ間の競争激
化に伴い、定額化・低価格化により収入が減少してきており、生き残るためにプロバイダの
連携が起こってきました。
  またサービス自体を無料で提供し、大量の利用者を集め企業からの広告収入で稼ぐ
広告型ビジネスモデルも成り立たなくなってきており、有料会員制の収益モデルの確立が
求められるようになってきています。

3.ブロードバンドの普及状況と課題

  最近、CATVも伸びてはいるが、ADSLがここ1年間で33倍と急速に伸びています。

  ブロードバンド時代に入って利益の上げられるものとして、以下のようなものがあります。

1.コンテンツアプリケーション(映像,音楽、静止画)の配信
2.百貨店的に多くの情報を集めて配信する「アグリゲーター」
   ex.トレソーラー(テレビ局が組んで昔のテレビ番組の配信を行っている会社)
3.端末ソフトウェアによるゲームや携帯電話の着メロの配信


  プラットホームおよびネットワークアクセスは設備投資が大きく大企業向きですが、今は
アクセスサービスだけでは戦えず、上記のような画像コンテンツや動画チャットのブロード
バンドアプリケーションの配信が不可欠です。

  課題としては以下のようなことがあげられるでしょう。

1.アクセス回線は早くなってきたが、ネットワークの随所にボトルネックが発生し、映像や
  音声が途切れたりすることが見受けられる。
2.コンテンツは持っているがビジネスとして課金や決済の仕組みが不十分である。
3.コンテンツが無断で他人に利用されるのではないかとの心配がある。
4.パソコンでは映画や音楽など折角のコンテンツが、家族と共に大画面や臨場感溢れる
  環境で利用できない。


  その他、ユーザニーズから見た課題としては盗聴、なりすまし、不正侵入から守ってくれる
セキュリティーの確保や、プライバシー、個人情報保護など安心して取引ができる環境などの
セキュリティーの確保が望まれています。

4.ネットワーク活用術   

  ブロードバンドを生かすにはコンテンツ、コミュニティー、コマースが上げられます。
  コンテンツはビジネス的には魅力はあるが、ビジネスを展開するには、既存のビジネス
モデルより安くすることはなかなか難しいものです。
  NTT−BBでは、コンテンツホルダ様(映画会社など)からコンテンツの配信権を得て
配信し、利用料金はエンドユーザに料金請求を行い、銀行振込された料金をコンテンツ
ホルダ様と配分(レベニューシェア)する方法を行っています。 動画などでは途切れ途切れ
でストレスを感じることがありますが、CDN(コンテンツデリバリー・ネットワーク)を使うことで、
全てのアクセスが発信サーバにアクセスするのでなく、CDN上に設けた最寄の地域の複製
サーバにアクセスすることでアクセス集中の緩和も図っています。

コンテンツ配信の課題には、

1.ビジネスとしては既存媒体との競争となっている。
2.基本的に不特定多数をターゲットとするため広告戦略が立てにくい。
3.少なくとも現時点の日本では「アダルト」しかビジネスモデルが成立していない。
4.コンテンツ配信には知的所有権(配信権・肖像権等)があり、他社、他人が
  作成したコンテンツにそれぞれが複雑に絡み、権利処理が非常に難しい


などが上げられます。

  コミュニティは、ブロードバンド下でのコミュニケーションサービスとしてのビジネスモデルが
成立していないので、今の業務の効率化に取り組めばよいのではないでしょうか。 チャット
(テレビ電話のようなもの)を使って遠隔コンサルタントで通信費を削減したり、1個所に集まる
会議を映像会議により交通費を削減したりできます。
   最近はキャスティング(自分で作った映像を手軽に配信できるサービス)を使ってマニュアル
など更新頻度の多いものを映像化することで、多数の人に修正マニュアルを送る必要がなくなっ
ています。また、サークルや私的な情報をキャスティングすることで、コンテンツを元にコミュニ
ティ内での情報交換が更に活発になっています。

   
おわりに
  ブロードバンドになっていろんなサービスが誰でもできるようになったが、コンテンツそのも
のを流して収益を得るビジネスモデルは非常に難しいと思われるます。
  世界的に見ても、ブロードバンドを活用してどのようなビジネスが展開できるかは、まだ一歩を
踏み出したところで、どこもまだビジネスモデルとして成功したところはありません。
  それぞれの分野でいろんなビジネスを手がけようとしているのが現状であり、これからが大いに
期待できるところです。