開催日時 : 平成14年7月10日(水) 14:00〜15:40 開催場所 : 京都リサーチパーク 1号館4F サイエンスホール |
1.今、何が起こっているか? | |
◎"水と空気"のインターネット時代 | |
「日常的にごく当たりまえのようにインターネットを使う人」の割合が、全人口の2割を 超えるとインターネットのマーケットは飛躍的に拡大するという説があります。 アメリカでは1998年当時、その割合が20%でしたが、この年を境にしてマーケットが グッと飛躍的に伸びました。日本はというと、98年当時はわずかに8.3%。それが最新の データでは24.6%にもなっています。日本でもようやくネットのマーケットが急成長する 臨界点を超えたというわけです。 |
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今年になって、高速大容量で低額のインターネットがどんどん普及し始め、ネットを取り 巻く環境がすごく変わってきています。 たとえば何か調べたいことがあるときに、今までは本屋さんへ行って本を買ったり、企 業に資料を請求したり、あるいはお店に電話をしたりしていました。"水と空気"のインター ネット時代というのは、簡単にいえばそれが全部ネットでできるということです。 何かを知りたければ「まずはネットに聞いてみよう」、そういう人がすごく増えています。 ということはどういうことかというと、ホームページの受け皿を持っていないお店や会社は、 商売をしていて電話を持っていないのと同じだということです。 |
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◎ITおばさんがネットを変える |
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最近、インターネットの世界に参入するITおばさんがむちゃくちゃ増えています。 ITおばさんというのは、50代以上の中高年女性で、パソコンのパの字も知らなかった、 いわゆる普通の奥さん方。このITおばさんたちは、パソコン初心者で、シロウトですから、 オンラインショップの名だたる名店のホームページを見せても、「この程度だったら近所の 店のほうがいいわ」などと平気で言うんです。 彼女たちがいちばん嫌いなショップの形は煩雑な、検索しないと見つからない面倒くさい ホームページです。今や中小オンラインショップのノウハウの一つであるメールマガジンや DMのメールに対しても、「あんなもの来るとうっとうしい、余計なお世話」。要するに、過去 のノウハウがまったく通用しない人々がネットの世界に乱入してきているということです。 |
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でも、実はこれはいいことなんです。だって、ネットの世界って、いちばん最初はオタクの 世界だったでしょう。それがだんだんOLを含めたビジネスマンに浸透していって、そしてい まや、普通のおばさんたちにまで広がってきている。 ということは、もう今までのような特殊なもの、特殊な店ではなくて、ホームページもオン ラインショップもごく普通のものでなければならないという時代なんです。 |
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●事例1 ITおばさんに受けるショップ |
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播州ハム http://www.ham.co.jp/ 50代や60代のITおばさんに、100くらいのオンラインショップのホームページを見てもらい ました。その中で、彼女たちが唯一気に入ったのがこのショップです。 この店を気に入る理由は、まずコピーの日本語がきれい、デザインが見やすい。それか ら、たとえばハム1本とベーコン1本とほかの一品で、送料込みぽっきり4000円なんてセット メニューがあって、セットの構成もすごく上手です。送料込みでこの値段ならとても低価格で すよね。 それと人気の理由がもう一つあって、ちょっと追加というメニューも用意されています。おば さんって実質的でしょ? そういうこともちゃんとわかっている。 このホームページの担当者は、特にITおばさんを意識してるわけじゃないと思いますが、 結果的に、そういう普通の人に非常にうけるネットショップになっているのです。ほんとに知 恵が詰まったいいホームページです。 |
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2.販売促進に役立てるホームページ |
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中小企業の方にとって、インターネットは「天からの贈り物」です。ホームページの活用し だいによっては、コストをかけずに、大企業にも伍して業績に大きく貢献する有効なツール となります。 |
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◎ホームページの活用メリット |
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ホームページには、「会社案内」「販売促進に役立てる」「直接販売する」という3つの ステップがあります。中小企業の方にとっては、第1ステップの会社案内だけでは意味が ありません。一歩前進して、販売促進に役立つようにしないともったいない。 例えば、 1.受発注・商談のきっかけ 2.ブランドの浸透・新製商品のプロモーション 3.見込み客・潜在顧客の開拓 4.お客を集めて実店舗へ送客・誘導する 5.リテンション(顧客の固定化・サポート) このように、ホームページにはさまざまなメリットがあります。 単なる会社案内を脱皮して、具体的に商売に役立つ形にすることの再考をお勧めします。 |
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◎販売に役立てるためのコンセプト |
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では、商売にダイレクトに役立つホームページを作成するにはどうすればいいのか。その コンセプトを紹介します。 |
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1.まず何に役立てたいのか |
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前記のメリットのうち、何が目的なのかをまずはっきりさせてください。 | |
2.自社の強み、特徴は何なのか |
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ホームページで「何でもあり」は「何もない」と同じことです。自社の得意分野に焦点を絞っ てください。そのためには、「わが社の強み・特徴」は何なのかを、日ごろから必死に自問 自答することが肝要です。 |
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3.単刀直入に表現する |
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得意分野や強みは、単刀直入に具体的にページ上に表現します。自己満足のデザインや あいまいな言葉遣いはやめてください。 |
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4.ホームページから受注への一貫性 |
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メールでの問い合わせ等お客様の関心を、すぐにアクションに結びつける仕掛けが大切 です。 |
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5.徹底した「コンテンツリッチ」 |
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ホームページは自社の得意分野を「深く」見せられるメディアです。得意分野については、 他社がかなわない徹底したコンテンツリッチ(豊富な情報)を実現しましょう。 |
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●事例2 販促に役立つホームページ |
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第一プラスチック http://www.daiichiplastic.co.jp/ 三和メッキ工業 http://www.sanwa-p.co.jp/ NCネットワーク http://www.nc-net.or.jp/ |
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ネットビジネスには、消費者にものを売るBtoCと、企業間取引のBtoBがあります。その BtoBに、町工場を集めてネットワークづくりをしている『NCネットワーク』という組織があって、 現在1万1,000社くらいが加盟しています。 その会員の町工場のおじさんたちを対象に『エミダスホームページ大賞』というコンテストを やったんですよ。見事グランプリを受賞したのが『第一プラスチック』のホームページです。 ホームページには3秒ルールというのがあって、見に来た人が「ここは何のページか、何を やってるところか、私に関係あるか」を判断する時間が3秒。このホームページがいいのは、 「わが社とは何か、自社の強みは何か」をトップページで端的に打ち出していることです。 もう一つの注目点は、自社の技術をアニメ(動く図)で紹介しているところ。 最近ネットショップで動画やアニメを利用するホームページが増えてるんですが、みんな 非常に下手です。動画って1分とか2分とか拘束されるから、かったるいものなんです。 ところが、この会社のアニメは非常に上手にできています。 |
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『三和メッキ工業』は、コンテンツがすごいんです。 中を見ると「めっき豆知識」というページがあって、表がのっています。私が見ても何の ことだかさっぱり分かりませんが、クロウトが見ると「この会社はすごいぞ」と解かるそうです。 要するに、ここはメッキという自社の得意分野においては、大学や業界の他社がかなわな いオリジナルの情報をのせているわけです。わが社の強みは何か、そしてその強みを表現 するコンテンツを徹底して打ち出すこと。こういうホームページをコンテンツリッチといいます。 |
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●ネットビジネスの成否を分ける要因 |
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A.戦略・マーケティング 1.事業戦略の適切さ 2.良好なユーザー経験の提供 3.バックオフィス整備によるサービスレベル向上 |
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B.体質・カルチャー 1.企業の価値観 2.意志決定の仕組み 3.トップ理解度 4.人材登用の視点 |
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C.ネット理解 1.ネットの本質・オキテへの理解 2.ネット特有のマーケティングへの理解 3.実店舗との差別化の形 4.オンライン経験の蓄積 |
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D.人材 1.センス・企業家精神・Vision 2.技術と智恵のバランス 3.顧客感度 4.好奇心・体験主義 |
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●よくないページのチェックポイント |
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1.トップページの重要性を理解していない |
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もっとも重要なトップページに、ただきれいなだけの花鳥風月の写真、自社ビルや社長の 写真などが出てくる |
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2.ユーザビリティのレベル |
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お客様にとっての使いやすさ、見やすさ、商品の選びやすさが充分に考えられていない |
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3.3秒ルールに耐えない |
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会社やお店の強みや特徴がなかなか認識できない |
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4.情報デザインが悪い |
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情報が共通性のある項目でまとめられていない |
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5.自己満足の抽象的な表現 |
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「わが社はお客様にご奉仕して」「最高のご満足を提供」「技術に優れた」などあいまいで 耳触りのいい言葉が多い |
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6.不要な動画・アニメの類 |
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お客様にとってまったく意味がない動画やアニメが出てくる | |
7.無意味なアクセスカウンター |
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会社の特徴を示す情報として無意味・担当者の自己満足にすぎない |
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3.勝ち組オンラインショップの特徴 |
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◎コンセプトメイクが的確 |
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誰に、何を、どのように見てもらいたいか、いかにして興味を持たせるか、それをいかに 販売に結びつけるか。こういった事業のコンセプトや狙いが明確なところが、勝ち組の特徴 です。 そして、それを大きく左右するのは、トップがホームページをきちんと理解しているか、誰が やっているかということだと思います。 そういう意味では、ネットビジネスは大企業よりも中小企業のほうが本当は有利なんです。 どうしてかというと、まずネットの商売というのは、あきんどの知恵がすごく大事だからです。 それに加えて、中小企業ではオンライン経験がトップの方のなかに蓄積されています。大 企業は担当者がコロコロ変わるからそれができません。 さらに、いろんな部署の利害がからんでどうしても総花的になりがちな大企業に対して、 中小企業は高い専門性、目玉商品やサービス面での自社の強みにコンセプトを絞り、それを 深くアピールすることができます。その結果、日本のBtoCは事実上、中小企業が引っ張って きたんです。 |
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◎ホームページの特性を理解 |
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ホームページのお客様は関心があるから来るのであって、関心のない人ははじめから 来ないんです。関心のある人が見に来て、「おもしろそうだな→中を見てみようかな→よさ そうだな」と思う。そう思ったらすぐにアクションできることがホームページのいいところです。 ですから、チャンスを生かし勝ち組になるためには、お客様の関心を「購入してみよう・ メールで問い合わせてみよう」というアクションに流し込む、さらにお客様のアクションに対し ては「打てば響く」対応ができる。そういう一貫性のある仕組みづくりが重要になります。 |
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◎勝ち組オンラインショップは誰か |
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勝ち組の筆頭は、クリック&モルタルの専門店です。 クリック&モルタルというのは、ネットのお店も実店舗も持っているような会社のこと。その 代表業種は例えばパソコン屋さんや家電屋さんで、筆頭は『ソフマップ』です。ここは総売り 上げの約15%をネットが占めます。 もう一つの勝ち組は通販会社で、その筆頭は『千趣会』です。 どちらも成功要因は同じです。実店舗やカタログと同じレベルの商品、同じ品揃えの幅、 深さを、ネットならではの形をつくってドンと見せ、実店舗以上の価値をネットで展開したわ けです。 |
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◎ネット売上高10%を目指せ |
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成功しているオンラインショップの一つの目安は、ネットの売上高が総売上高の10%以上 を占めていることです。店舗のコストよりネットのコストのほうが安いですから、ネットの売上 が1割を超えだすと全体の収益が向上し、経営効率が大幅にアップします。 実店舗を持って商売されている方は、まずはネットの売上高10%の壁を突破することを目 標にされるといいでしょう。 |
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◎コンバージョン率の高いサービスの提供 |
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コンバージョンというのは「転換率」の意味で、来店者を購入者に転換させる割合という 意味で使われます。お店にお客様が100人来られて、購入者が2人だとすると、コンバー ジョン率は2%。これがオンラインショップの平均で、優良店で8%くらいです。 ところが、例えばチケット予約などのサービス業になると、コンバージョン率が1桁違って きます。航空会社のANAクラスだと、今年ネットの年収だけで1,000億近くになります。 ですから、オンラインショップの世界では、物販業より、はじめから予約したい人が来る サービス業のほうが圧倒的に有利なんです。 |
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●勝ち組オンラインショップの参考事例 |
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141 http://www.141.co.jp/ 3939 http://www.3939.co.jp/ 珈琲の王国 http://www.beans510.com/ ナチュラム http://www.naturum.co.jp/ 和泉屋 http://www.rakuten.co.jp/wine Powells http://www.powells.com |
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4.ノウハウをリセットして原点に立ち戻れ |
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今日の私の結論は三つです。 一つは、ひょっとしてまだホームページを持っていらっしゃらない方はすぐに作ってください。 なぜなら、無(ゼロ)と有(1)は大違いだからです。ゼロはいつまでたってもゼロですが、 「1」は努力や工夫をすることで「10」になる可能性があります。 二つ目は、すでに作ってらっしゃる方は、それが商売に本当に役立っているかをすぐに見 直してください。 三つ目は、この際、今までのノウハウをリセットしてみてはというご提案です。 京都はオンラインショップ発祥の地で、チャレンジャータイプや優等生タイプの有名なお店が たくさんあります。日本の中小のオンラインショップをリードしてきたと言っても過言ではありま せん。 これまでそういう中小オンラインショップは、「親切・丁寧・迅速・ハイタッチ」をネットらしさと してやってきました。しかし、オンラインショップの現状を見てみると、ネットの売り方はこうだ、 お客様の声はこうするようにといったノウハウの共有がすごく進んで、似たようなホームペー ジが多くなっています。 ネットが"水と空気"時代になって、新しいお客様がどんどん入ってきているいま、過去の成 功ノウハウだけで本当にいいのか、インターネットらしい奇想天外な選択肢の提供や、技術 に語らしめる方法等々、もっと違うやり方があるんじゃないか。この機会に成功ノウハウを リセットして、さらに活力ある繁盛ホームページに作り替えるために、もう一度見直されては いかがでしょう。 |