◆京都インターネット利用研究会11月例会報告

開催日時 ; 平成12年11月16日(木) 14:00〜15:30
開催場所 : 京都リサーチパーク
インターネット電子決済の現状と今後の展望
講師;野地 英昭 氏
(サイバーキャッシュ株式会社 )

<コンテンツ販売に対応した即時決済システム>

 「お金」の形態には、現金や預貯金、プリペイドカードなどがありますが、決済に 使いやすいお金とは「いつでもどこでも使えて、何でも買える」ということ。つまり 、限りなく現金保有に近い流動性と汎用性を持っていることが必須条件です。

 現在のインターネットECの主な決済方法として、
@代金引替(宅配業者が商品を届 けて、その引き替えに消費者から代金を受け取る)
A銀行・郵便振込(消費者から の入金確認後に商品を提供する)
Bクレジットカード決済(消費者の与信を確認後 、カード会社が代金を回収して売り手に入金)
Cプリペイド型電子マネー(コンビ ニやPCショップでプリペイドカードを購入し、消費者はその金額の範囲内で商品を購 入する)。
 そのほか、「エスクロー」という決済方法は、買い手に商品が届いたことを確認し てから、仲介業者が責任を持って代金を回収するというもので、オークションサイト など「CtoC(消費者間)ビジネス」で特に注目されています。  


<日本におけるEC主要決済手段のメリット、デメリット>

■代金引替方式
<消費者側> メリット:商品と決済が同時にできる  デメリット:受け取り時に現金が必要  
<店舗側>  メリット:システム構築が不要  デメリット:ギフト、デジタルコンテンツは不可

■銀行・郵便振込方式
<消費者側> メリット:だれでも利用が可能  デメリット:支払いに手間がかかる
<店舗側>  メリット:システム構築が不要  デメリット:入金・消し込み確認の作業が面倒

■クレジットカード方式
<消費者側> メリット:オンラインで決済も完了  デメリット:18歳未満は利用が不可  
<店舗側>  メリット:入金管理が行いやすい(カード会社が入金管理を代行)
         デメリット:与信・売り上げ確認の手間が面倒  

EC店舗にとって使いやすい決済手段は、まず第1に入金確認が比較的楽にできて、 受 注と入金の突き合わせが簡単であるということ。次に、販売機会を逃さないために 365 日、24時間運営できる仕組みを作ること。また、システム構築コストが安いというこ とも重要なポイントです。運営コストが高く、利益が上がらない決済システムという のは、売り手にとって意味がありません。  また、インターネットはデジタルコンテンツの販売ができるという特徴があるので 、クレジットカードやプリペイド型電子マネーなど、ダウンロードに対応した即時決 済システムを考えていくことも大切です。


<セキュリティの信頼性が高いSSL暗号技術 >

 個人情報のセキュリティ管理というのは非常に大事な問題です。個人情報がなけれ ば、消費者に商品が届けられません。個人情報を確立するために、少なくともファイ アウォールやSSL(Secure Socket Layer)などでセキュリティ管理をしていく必要があります。
 
 SSLというのは、インターネット上を走るデータの盗聴やハッキングを防ぐため に、 認証の鍵によって文面の暗号化を施す仕組みです。暗号化技術には、40ビット、64ビ ット、128ビットの3種類ありますが、40ビットの場合で、スーパーコンピューター 使って解読したとしても、何日もかけなければ解くことができません。 SSL128ビットを使用して個人情報を暗号化しておけば、日もかけなければ、 いまの時点では破ることがほとんど不可能な非常に信頼性の高いセキュリティ管理の 方法です。  
 また、ファイアウォールというのは、外からのアタックに対し、特定の電文しか通 さないシステムです。EC店舗が顧客の個人情報やカード情報を持っている場合は、こ のファイアウォールによって外部侵入を確実に保護しておかないと、中の情報を盗ま れてしまう恐れがあります。セキュリティ確保のためにはある程度のコストがかかり ますが、これは絶対に必要なものだといえるでしょう。  
 
 インターネット通販の世界では、こうしたSSLの暗号技術を生かして、サイト上で 直 接クレジットカード番号を打ち込む決済方法が、ここ1〜2年の間に急速に増えてきて います。カード決済には2種類あり、まずSET方式というのは、利用者が本人であると いう事前認証が必要なプロトコルのカード決済。SSL暗号方式というのは事前認証な し に、すぐにカードの番号を入力すれば決済ができるという形です。日本ではSET方式、 またインターネットにおいては、電子マネーやデビットカードなどはほとんど普及し ていません。 今後は、SSL暗号方式に対応した決済システムに対応していかなければならないで しょう。


<次世代型の新デバイスとの親和性がカギに>

 インターネット決済の今後の展望を考える上で、顧客に負担を与えるような仕組み は普及しない、ということを念頭に入れておく必要があります。

 SET方式やサーバー ウ ォレット方式(サーバー側に設けられた財布に個人情報をストックしていく方式)な どは、どうしても事前登録が必要になり、手間がかかるということでほとんど普及し ませんでした。  2番目の要素として、システム開発・プログラム開発に負担をかけるような仕組み は 普及しないということ。たとえば、「J-Debit」は、現状のインフラをうまく使っ て、 消費者にも売り手にも負担がかからない仕組みを構築したことで急速に普及しまし た。

 さらに、今後新たに登場してくるデバイスとの親和性が保てるかどうかも大切な要 素です。たとえば、携帯電話の決済ではiモード、J-Phone、KDDIなどの次世代の デバイスに対応していかなければなりません。 セキュリティの点においても、消費者が意識することなく認証が終わるような システム―、たとえば最近は、小型カメラ付携帯電話というものが出てきていますが、 そういうバイオメトリックスを利用した認証システムを構築していく必要があるでし ょう。  


 いずれにしてもインターネット電子決済にはさまざまな種類、そしてそれぞれにメ リットデメリットがあります。ECの規模や販売商品の内容、取引額などに応じて、も っとも適した電子決済の方法を採用することが最も大切です。