京都インターネット利用研究会10月例会報告

開催日時 ; 平成12年10月31日(火) 15:20〜17:00
開催場所 : 平安会館
北欧はなぜ次世代モバイルI T革命を成し遂げたのか
〜フィンランド、スウェーデンに学ぶI T命と京都のプランディング情報戦略〜
講師;武邑光裕 氏
(東京大学大学院 新領域創成科学研究科メディア環境学分野助教授)
◆ 北欧を世界標準に押し上げた3つの社会基盤
@「知識基盤型社会」(knowledge based society) : 国民全体の知識基盤を極めて大胆に底上げしていこうということ。 大学や研究機関で生まれたスキルやノウハウを中小企業や国民一人ひとりに対して即時に分配していくという発想。

A「グローバル・ニッチ・スタンダード」(global niche standard) : 地域のニッチ(すき間)なスタンダードを重視することによって、 それがグローバル・スタンダードになり得るということ。(例えば、フィンランドの『ノキア』・スウェーデンの『エリクソン』)

B「クラスタニング」(clusterning) : 既存企業、行政、教育機関、技術体系そのものの機能をすべていったん切り離して、それにNGOやNPO、ベンチャービジネスなどを加えて、これまでにないダイナミックな機動力を生み出そうとする考え方。

 ⇒社会、産業、経済全体のシステム革命といった本当の意味での「IT革命」
◆ I T社会構築に欠かせない国家のステアリング
フィンランドやスウェーデンでは、国家のステアリングやハンドリングの力が、 企業や大学間の研究開発の競争力を向上させていく現象が起きている。

・これから国家にとって必要な研究開発とは何か、また具体的な研究テーマは何かということを 具体的に練り上げていく政府機関があり、そこが予算配分のすべての権限を握っている。
・あるエリアに大学や様々な企業の研究機関を集積させ、このエリアだけで新たな産業の 誘発が起こるような仕掛けを積極的に展開している。
◆ 携帯電話からハイブリッド・マルチメディアへ
「ワイヤレスインターネット」
ヨーロッパでは3G(第3世代)、日本では「IMT-2000」という新しい移動体通信規格がスタート
・様々なメディアが垣根を超えて統合し合う「ハイブリッドなマルチメディア」の誕生
・「ロケーテッド・インフォメーション」(located information):GPSをベースにした場所情報が主流を形成
◆ 京都のブランド力をサイバースペースで活用
 フィンランドを理解する4つの「S」
* 「SUOMI」:ラップランド全体の古称。
 歴史の流れの中で現在の国家があるということをフィンランドの国民は強く意識しいる。
* 「SISU」:日本でいう「大和魂」的な頑張りの精神のこと。
* 「SAUNA」:日本の温泉文化とまったく同じ感覚。
* 「SIBERIUS」:フィンランドが生んだ大作曲家。
 故郷の伝統・文化の中で豊かな音楽の才能を育み、彼こそ、「グローバル・ニッチ・スタンダード」の原点。
 
 ⇒日本の文化や精神に似ている。
⇒今後は、地域社会が世界と直結した新しい社会基盤になる。
特に京都は、世界と完全直結した国際都市であり、そのブランド力をいかにサイバースペースの中で活用していくかが重要なポイント。
  京都のニッチなスタンダードをグローバル化していくことが大切。
 「京都型IT革命」とは何か、そしてスキルやノウハウを即時分配していく仕組みをいかに構築していくか、産・官・民が一体となって真剣にプランディングしていく時期に差しかかっている。