◎新しいダイレクトコミュニケーションメディア
最近、多くの人たちがインターネットを使うようになりました。今後、世の中の物流ス タイルや広告手段、コミュニケ−ションの方法はどんどん変化していくのではないか と思います。そこで本田技研では「NCプロジェクト」と呼ばれるチームを発足させ、 新聞・テレビに代わる新しいメディアとしてインターネットを活用するために、さま ざまな検証や実験を進めています。''96年7月10日に自社のホームページを立ち上げ< ましたが、現在、トップページの訪問者が平均で約1万5千件、ページビューで20万程 度のアクセスが毎日あります。この結果から考えると、私たちのホームぺージの視聴 者数は約10〜50万人くらいだと推測することができます。メディアとしての有意性か ら鑑みて、これは充分に満足できる数字だと思っております。
インターネットの最大の利点は、アクセス数がタイムリーに分かりますから、消費 者のニーズをすぐにつかむことができるということです。また、これまでのデータを 比較検討することができるので、去年の今頃は何が売れたのかなど、実際に追跡調査 することで市場動向を探ることができます。同時に、どのような年代層にどんな商品 が人気を集めているか、ということも分析できるわけです。
しかし、ともかくたくさんの人に見てもらわなければなりませんから、消費者がい ま何を求めているかを充分に把握し、それをコンテンツに反映させていくことが必要 不可欠だと思います。
◎メディアミックスで広がるインターネットの可能性
インターネット広告は、新聞や雑誌、テレビなど既存のメディアと組み合わせることに よって、もっと大きな効果を期待することができます。但し、インターネットは不特 定多数の人を対象にしたマスメディアではありません。つまり、ホンダの商品を買い たいとか、ホンダに関心のある人が自らの意思でアクセスしてくるわけですから、あ る意味では特定少数の人に対する販売促進メディアだといえるでしょう。
では、インターネット上に張り出されるバナー広告と組み合わせると、どのような 効果が期待できるのでしょうか? たとえば昨年、「HR?V」という新車が発表された とき、日本最大手のプロバイダーである「yahoo」にバナー広告を張りましたところ、 アクセス数が約8倍にまで増えました。その際に重要になってくるのは、広告の費 用対効果の問題です。人気商品は別ですが、アクセスが増えたからといって必ずしも 販売に結びつくとは限らないからです。どれくらいのお金を広告にかけて、消費者の 関心をどこまで惹きつけるのか、そのへんのバランス感覚が大切です。また、最近で は広告単価の安いサイトも多数ありますので、いろいろと検討してみることも必要で しょう。
◎インターネット広告は販売促進につながるのか?
さて最も肝心な点は、インターネット広告が販売促進につながるかということです。販 売につながらなければインターネットをやるメリットはありません。
その一つの目安となるのは、カタログ請求の数です。ホンダの場合、全車種につい て96年6月以降、インターネットでカタログ請求ができるようになっています。その< うち、昨年7月から10月の間にカタログ請求された方を対象に追跡調査したところ、イ ンターネットを通じて実際に自動車を購入された方は全体の12.4%でした。このデー タから昨年の新車販売のおよそ2%にインターネットが確実に影響したということが 分かります。さらに、現在検討中という方も7割くらいおられますから、将来の販 売台 数はさらに伸びる可能性があります。こういう点から考えると、インターネ ットが販売に果たす貢献度は、ほぼ実用化の段階に入ったのではないかと思います。
◎メールサービスが果たす役割
最後に、電子メールなどを使用した消費者とのコミュニケーションツールについて考え たいと思います。ホンダが今年4月に販売を始めた「S2000」というスポーツカーは、 テレビCMも新聞広告も一切出さず、ただホームページに情報を掲載しているだけです。 それでも「S2000」のメール登録者数は3万人以上になり、月2回のメールニュース で情報のやりとりをしています。特徴的なのはメールを出しますと、翌日のアクセス が顕著に増えるということです。また、メールニュースは、今すぐに新車が買えなく ても、将来お金を貯めて買おうという人の購買意欲をつないでおく効果があるように 思います。最近では「ステップワゴン」をはじめ、ほかの4輪車にもメーリングサー ビスを行い、まずまずの効果を挙げています。
さて、これまでさまざまなインターネットの活用事例を述べてきましたが、最も大切 なことはホームページ自体に意味を持たせるということです。ほかでは得られない貴 重な情報をどれくらい掲載することができるのか、それがキーポイントだと思います。 また、ホームページには集客効果はありますが、実際に販売に結びつけていくとな るとまだまだです。しかし、マーケティングには応用ができそうですので、今後いろ いろな可能性が広がっていくことは間違いありません。
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