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「不況」こぼすな負けいくさ
今日は商業・工業・サービス業、万病に効く話をいたします。抽象的に、これからの日本経済とか、あるいはマーチャンダイジングのコンセプトといった難しいことは一切言いません(笑)。実例本位でお話をさせていだだきたいと思います。
不況だ不況だと言っている人が多いご時世です。昨日も中小企業診断士の総会へ行ったときに、開会挨拶で「この不況はいつまで続くのか」って言うから「続いてねえや」と言い返しました。不況の中でも売れてる元気なお店がうんとあるのに、「売れなくて当たり前」と言うのは、みすみす自分のやる気をダメにしているんです。「不況だから売れないんだ、儲からないんだ、仕方がないんだ」と自己暗示するほうが自分に楽だから…。しかし、それで、売上減をカバーする解決策になるんでしょうか?
そこには不況を口実に、売れないことを納得しようとする怠け心(言い訳)も半分ありますネ。だから「不況はウソだ」と私は信じています。
「本当は不況ではない、工夫やアイデアが足りないだけだ」と自分に言い聞かせることが肝要だと思います。
インフレは私のような年輩者なら戦後の新円封鎖といった経験がありますが、現在のようなデフレーションは皆初めての経験です。経済学者は安直にいろいろ予測を立てていますが、これから日本経済がどうなるのか全くわからないと私は思っています。
しかしそんなことを考えるより、今の自分の店がもっと売れて、大型店に負けないで堂々とやっていく、店舗の拡張もして、子どもが喜んで後を継ぐような店にするのが一番大事です。そのためには、いつも元気に「ほがらか屋」でいきましょう。
『ニコニコ笑顔』は、一銭もお金がかかりません。ところが、商品が売れなかったり、大型店が進出したりすると知らず知らずのうちに、怒った顔、沈んだ顔になってくる。それを子どもが見て「この店の後を継ぐんじゃ大変だ」って、大体わかるんですね。だから子どもの目の前で嫌な顔をしたり、グチをこぼしたらダメです。こぼすんだったらお茶くらいにしろと言いたい(笑)。
私がお店へ診断に出向くときも、ともかく表で背筋を伸ばして「今日はお手伝いにきたんだ、この店を良くしてあげよう、それにはこっちも笑顔でなくちゃいけない、ワッハッハッハ! いやあ今日はいい天気だ」、雨の日には「ああいいおしめりだ」と言い聞かせて、おかしくなくても笑って元気よく「おはようございます!」と入っていきます。すると店の人も「先生、元気がいいですね」と笑ってくれますよ。自分がニコニコしていると相手も気持ちがよくなってくるんです。
辛いときもニコニコ笑って、その辛さをむしろ面白がったら運命は変わります。「辛いことがあったら面白くなってきたと思え!」ですよ。運命は来るものでなく、切り開くものと考えます。
お客さんに得をさせる店に
さて、商売をやっていて儲けたくない人はいないと思います。朝は朝星、夜は夜星、昼は梅干しいただいて、日夜一生懸命にモノを売ろう売ろうと考えている。当たり前です。でもその際に注意しないといけないのは、努力と貢献は違うということです。いくら自分で努力したつもりでも、方向が違ってはいけません。東京へ行こうと思って九州へ向いたら、努力するほど遠くへ行くばかり。どう努力をするかが大事なんです。
企業成長の秘訣はたった一つ、”企業や店はお客さまのためにある”ということ。
私は仕事をはじめてから、これ一本で来たといっても過言ではありません。私達が「得」したいのと同じように、お客さんも「得」が好きなんです。お客さんに「得」をさせるにはどうしたらよいか、それだけを考えていれば、お客さんは増える一方です。
「商業界」の故・新保民八先生がこう教えてくださいました。「信者という字をじっくり見てごらん、儲けと言う字は信者と書く、お客さまを儲けさせれば、この店はいい店だということになる」。
なるほどそうですね。「このお店なら大丈夫だ」と顧客から信頼されれば、安ければ「ああ勉強してるんだろう」と思い、高かったら「値打ち品だろう」と思うでしょう。もし信者でなく、高かったら「あれ?? いい値段つけたな」と思い、安かったら「何か悪いものを売ってるんじゃないか」と思うでしょう。だからお客さんを信者にしろということです。
すばらしい成功事例
1つ目の実例、たった一坪の売り場で年商1億円の惣菜店。ちょっと考えられないでしょう。ここの本店は、イトーヨーカドーの隣で、そのうえ、すぐ近くに東急ストアがあります。コロッケを中心に16品目、特に変わった品揃えではないのに、どうして大型店を向こうに回してそんなに売れるのか。
年商1億円とは、年中無休で1日に27万3973円売らないといけない勘定。事務室、食堂、便所の壁に、寝室の天井にも「27万3973円」と大きく書いた紙を貼って、この張り紙を見て「今日は達成できなかった、ちくしょう!明日は必ず取り返すぞ…がんばるゾ!…」と、これをやってると本当に売れるようになるんですよ。
それに、この店は時々、コロッケを1個5円で大売り出しするんです。10時に開店して11時半には3000個が売り切れです。買い損なった人は「今度いつやるの!」と聞いてくるとか。
もちろん、大売り出しはあくまで賑やかしであって、これだけで儲かるものではありません。しかしお客さんに「得」をさせることで信用が生まれて、他の商品も買ってみようかという気持ちにさせるんです。
2つ目、『石毛魚類』という有名な店があります。20坪程度の本店だけで年間16億円を売り上げます。人口が減りつつある千葉市にあるものだから競争が激しく、『石毛魚類』をはじめた当時、周囲に8店あった魚屋が今や一軒もないそうです。
どうしてこの店だけがこんなに伸びたのか。つぶれた8店は、ふつうの魚屋さんがふつうの売り方をしていたんですネ。この店は違います。午前4時から仕入れに2人も出て、少しでも安く良いものを仕入れる努力をしているんです。もう一つ、「数多くの店がある中で、うちの店に来てくれるなんてほんとに有難いから、よほど「得」をして帰ってもらわないといけない」というので、これだけ儲けてもいい気にならずに安く売っています。
売れる売れないに、店の大きさは関係ないんですネ。石毛魚類の現場を見るとよくわかります。全員ハチマキをして大声で呼び込み、ご主人は店の隅でお客さんの荷物を管理したり、汚れたところを掃除しているんです。自分で売ったほうが楽だと思うんですが…大したものだと思います。
3つ目、『石原青果』という八百屋さん。ご主人はちょうど30歳と若いです。小さな八百屋さんを親父さんから引き継いで、一挙に伸びてきました。2年で3億3000万円。この人は方針がいいんですよ。
いいものは売らない、だけど悪いものも売らない。非常に逆説的でしょう?
市場に行って、一番最後に売れ残ったものを仕入れます。例えばキュウリなら、形がちょっと曲がったものを専門に売るわけです。しかし考えてみるとね、キュウリが曲がってたって食べるには困らないわけですから、値段が5分の1だったら喜んで買うでしょう。この人はそこを狙ったんですね。それと、この人、大声で呼び込みしてるんです。そうしたらうんと売れました。
魚屋さんや八百屋さんっていうのは、威勢のよさっていうのが大きな演出なんですネ。
高く買っても安く売れ!
4つ目、41歳の人が経営している『コニー』という洋品店は、現在、東京都内に4店舗、年商6億円です。洋品店としては大した規模です。この店の特徴は、値引きしない、売り掛けしない、そのかわり絶対安い。しかも返品交換は何日以内なんてことは一切やらず、いつでも引き取るっていうんですよ。実際に私が指導にいく店でも、よく返品交換は1週間以内でレシート持参なんて書いてあります。そんな紙を見たら私は、ビリッと破って、「返すつもりで買ってくお客さまがいるか。1週間以内って自分の都合を書くんじゃねえよ」と言ってやりますネ。
この本店の場所がまた、いいんですよ。イトーヨーカドーがすぐそばにあります。ヨーカドーに来たお客さまがついでに寄って、『コニー』のほうが安いっていうので買ってくれる。大型店が近くにあるからといって売れないと思うのはとんでもない話で、立地条件をむしろチャンスにするんです。
「うちは売れないなあ、イトーヨーカドーのすぐそばなんだから…」と愚痴をこぼす人、「イトーヨーカドーのそばなら、絶好の場所だ。有難い!」と集客を元気に前向きに考える人。あなたはどっちのタイプかな?
それに、この人は仕入れがうまい。95%までは大阪、あとは東京、名古屋の現金問屋へ自ら出向いていって、売れそうなものだけを現金で買い、思惑買いは一切しません。大型店と違って仕入れた人が売り、売った人が仕入れる、お客さんの好みがわかっているから今売れるものを仕入れる、これ商売の常識です。
ここのもう一つのやり方として、メーカー卸値1着1500円の在庫ジャンパー20着を再三の交渉の結果、999円で仕入れた。いくらで売ったと思いますか?
大声で客を呼び込み、1円儲けの1000円で売って評判になった。それから時々、問屋在庫の超安いものを仕入れて、超破格安値(儲けが3円〜8円とか)で売ることで非常に人気を得た。「あそこは、むちゃくちゃ安い、面白いものがある」と中高年のオバサン達に大人気!
これは商品を売って儲けるのではなく、お客さんに「得」をしてもらうために、催事として評判(人気)を売り、他の商品もまたまた売れる例。オバサンの購買心理を理解した、特売のにくい売り方だと思います。
5つ目、大阪の枚方にある、『フジ』という実用衣料のお店は現在3店舗で年商は4億5000万円。ご主人がいつも得意にしているのは、高いものは売らない。高級ファッションは定番のデパートや、高級ブティックへどうぞ、普段着は『フジ』へ。これが看板になってます。息子さんも加わって、いっしょにやっておられます。
もう一つ注目すべきことに、最近では中国や韓国に仲間といっしょに月一回は出かけ、安くて質の良い商品を仕入れてこられます。このように、今後は仕入れもどんどん世界的な視野で動くことになるんじゃないでしょうか。
今まで極めて簡単に申し上げました商売の秘訣は、「安く買ったら安く売れ、値つけに迷ったら安く売れ」そして「高く買っても安く売る」んです。ここで大抵の人が、安く買って安く売るのはいいけれども、高く買っても安く売ったら商売が成り立たないだろうと、考えるのが一般的です。
でも考えてもみてください、高く買ったのは自分の仕入れが下手だったから自分の責任ですよね。だから安く売る。これを心がければ、何とかして安く仕入れようと必死に努力するから、仕入れの腕が自然と上がりますよ。
繁盛のモトは、仕入れの才覚だといえるんじゃないでしょうか。
極楽はゆずり合い、地獄は奪い合い
最後に、故・山田無文老師の法話をご紹介しましょう。
ある人が、間違って死んで閻魔様のところへ連れていかれました。そこで、まだ寿命が残っているので現世に返してやるけれども、折角だから地獄と極楽を見て帰りなさいということになったんです。
地獄と書いてある門を入ると、ご馳走をのせた机があって、その周りで、亡者どもが背丈ほどもある、長い箸で食べようとしています。しかし箸が長すぎて、自分の口に入りません。他の亡者に取られまいと、ものすごい形相をして食べようとするんですが、一口も入りません。にらみ合い、奪い合いの繰り返しで、食べたいと思うとますます遠ざかって食べられない。
一方、柵の向こうの極楽は、ニコニコ笑いながら、山のようなご馳走を食べてるんですよ。地獄と同じように、長い箸で食べなくてはいけないのですが、自分のお箸でつかんだご馳走を、向かい合った人の口に、入れ合っているのです。
何やら仏教くさい話になりましたが、今の世の中も同じじゃないでしょうか。
「どうぞあなたからおあがりください」って言う人には幸せが訪れるし、「食いてえ食いてえ」って言う人はうまくいかないようになっている。
実際、ひとかどの経営者に会ってみると、顔つきが違います。皆さん割合、気配りや心配りが上手で掃除が好きです。だから従業員を叱るときも目の前で「ばかやろう」なんて言わずに「こうすると、なおいいなあ」という言い方をします。自分がしょっちゅう失敗していますから、相手のことを思いやれるんですね。
地獄極楽を見てきた話、ぜひ従業員の方、ご家族の方を集めて話してください。
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