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タイトル パネルディスカッション
「21世紀型あきんどを志向する」
パネラー 青木良夫氏
 (ネット通販の先駆者『家具のアオキ』)
桜井寿美氏
 (足と靴のご相談『フットクリエイト』)
コーディネーター 芝田直樹氏
 (京都放送メディア企画推進グループ)

『家具のアオキ』の青木さんは、インターネット・ビジネスの世界では京都だけでなく世界でもかなり有名な方と言っていいと思います。
『フットクリエイト』の桜井さんは、ご夫婦で脱サラされてまったく新しい商売を始められた起業家です。お二人に事業の概要について紹介していただきたいと思います。     


青木
95年8月にビジネスのホームページを立ちあげて、ほぼ1年かかって月商100万円。その3カ月後に月300万円売れたんです。ネットの売り上げと店を貸し出すテナント収入、これを合わせればやっていけるという計算がありまして、97年12月に実店舗のほうを閉めてしまいました。去年('99年)の9月には会社組織にしまして、まだ1年になってないんですが、おかげさまで一期目は1億5000万円くらいで決算できるんじゃないかと思っております。
 インターネット・ビジネスが軌道に乗ってからというものは、不景気というのはどこの国の話かなと思うくらい景気はいいですね。そこで今年の1月からスタッフを3人入れまして、現在は4人体制でやっております。なぜ人を入れたかといいますと、ネット上の最近の動きを見ていて、今後マーケットが非常に大きくなっていくだろうと。今のうちに人的な手を打っておかないと変化についていけないと考えたからです。私自身が毎日の作業(e-mailでの応答、商品の受発注、その他)をしていますと全体の流れを見ることができないので、現在はまったく作業はしていません。ネットで遊ぶのが、私の仕事になっています。


「ネットで遊ぶ」というのは具体的にはどういうことですか?


青木
まず、私はメールマガジンを1日に150通くらい読みます。その中で紹介されてるサイトをずーっと見てまわるわけです。そして、気になる物販のサイトで実際にモノを買ってみる。そこで買ってサイトのナビゲーションを見ていくわけですね。モノを買うためにどれだけクリックしないといけないか、どれだけユーザーに情報を求めているのか、モノが届くのに何日かかるか、支払いはどういうふうにしたらいいか。それが非常に大切な部分ですね。私が遊んでるというのは、サイトを見てまわって自分とこに取り入れられるものがあれば取り入れていこうということです。

桜井
私どもの店は靴を売ってるんですけれども靴屋ではありません。足のケアもしてるんですけれどもエステのサロンでもないんです。“お客様が歩くことによって健康になる商品とかサービスを、いろいろな分野から選んで提供する店”ということで、今までになかった形態じゃないかなと思ってます。それまで商売の経験がなかったまったくの素人がゼロから始めて、5年間でようやく先が見えてきたかなというのが現状です。
 青木さんが、いろいろなサイトを見にいくとおっしゃってたんですけれども、私たちも何から始めていいのかまったくわからなかったので、まず繁盛っている店の顧客になってみることで、いろいろなことを学んできました。顧客になったらダイレクトメールが届いたり、さまざまな催しの案内が届きますね。そういう中から、「ここはこういう理由で繁盛ってるんだな」という部分を勉強するようにしています。


期せずして同じような答えが返ってきたんですけれども、青木さん、顧客になるというのはそんなに大切なことですか?


青木
この前、ネット上である食品を買ったんですけれども、送ってきてお金を払おうとすると、振込用紙に自分の名前や住所、相手の名前を全部書かないといけない。これは客を馬鹿にしてると思いましたね。これでは2回目は買わない。客は最後までお客様であって、何も書かなくても郵便局へそれを持っていけばそのままお金が払えるという仕組みをつくっておかないとだめです。つまり、買っていただいたお客様にどうやって満足感を感じていただけるか! これはやはり自分が客にならないとなかなかわからないことです。


次に、今やっておられる事業でこれを大切にしているとか、これだけは守ってるといった事業のコンセプトはどんなものですか?


青木
まず買っていただいたお客様のリスクをゼロに近づけるということですね。ビジネスですから、どちらかがリスクを持たないといけない。そのリスクを完全に販売店が持ってしまう。それは何かといいますと、一応ホームページ上には「返品できません」と書いてありますけれども、100%返品を受けます。もちろん料金は後払いです。インターネット上で見ただけではなかなか家具は買えないですから、事前にカタログを送ります。カタログを見て商品を気に入って、価格を気に入って、後払いであれば、お客様のリスクはないわけです。
 二つ目は顧客満足度を高めるということ。私のところは1日に1000アクセス以上、ページビューでいいますと1万5000〜2万ページを見ていただいております。それだけの人が入ってきて1日にどれだけ売れているかというと1〜2%くらいです。後の99%の人は入ってきて帰るだけ。ということは、一度来ていただき何も買わずに帰った人に、次回どうして売るか、買っていただくか、という部分がホームページでは重要なんです。ですから、ひやかしで入ってきて一回りして帰ってもらうときに、いかにいい気分で満足して帰ってもらうかというのがコンセプトです。


リアルな店舗でも、ひやかしのお客さんをどうやってつかまえるかというのは非常に大切なことではないかと思うんですけれども、桜井さんは事業のコンセプトをどこに置いておられますか?


桜井
販売方法としましては、真ん中に購買というものがあったら、その前後に非常に時間をかけるようにしています。
 まず購買にいたるまでの過程ですけれども、通常の接客からもう一つ踏み込んだカウンセリングという形を取ります。その方の生活状況から仕事の内容、どこの部分が痛いか、お医者様はどういうところにかかっているかとか。そういう細かいカウンセリングをして、十分にお客様とコミュニケーションを得た後で商品を提案します。次にその商品を買っていただいた満足度を100%に近づけていくためのアフターケア、それにもかなりの時間を費やしてます。


そういった商売が新しく成り立つという見込みをつけられたのは、どういったところなんですか?


桜井
最初はまったく誰も知らなかったところから、一人、二人お客様がこられて、そのお客様が別のお客様を連れてこられたんです。私どもの店は非常に口コミが多く、自分で会報誌をつくって配ってくださるお客様もおられるんです。それくらい惚れ込んでいただけるということは、今のやり方で間違いないと思っています。


青木さんから「ホームページを活かす方法」についてアドバイスはございますか?


青木
私は先ほどカタログをお送りしていると言いましたが、最近これをCD-ROMのカタログに変えました。これまでに5000アイテムほど揃えています。なおかつ、そのCD-ROMカタログそのものをWebサイトにアップしてます。ここではカテゴリーごとの検索はもちろん、サイズ、価格、すべて検索できます。そういった使い勝手で他と差別化をしていく。
 それからリピーターを増やす。顧客を囲い込むという意味では、メールマガジンが一番効果があります。次がお客様に遊びや楽しみを提供するという意味でオークション。これも非常に大きな効果があります。このシステムは独自で組むと非常に高くなるんですが、私どもは『楽天市場』のシステムをそのまま使っています。オークションとメールマガジン発行のシステムだけを考えても、『楽天市場』の月5万円は非常に安いと思っています。


『楽天市場』自体の力は評価されますか?


青木
今、モールで出店するとしたら『楽天市場』以外の選択肢はないと思います。システムを使えるのは当然ですが、やはりあそこに集まる人をどれだけ自分の店に持ってくるか。それが非常に大きな魅力ですね。


しかし、誰でも『楽天市場』に出店したら売れるというわけではないですよね?


青木/ユーザー層を取り違えると売れませんね。インターネットの世界でも、たとえば『楽天市場』に行くユーザーと我々の通常のWebサイトに来られるユーザーとは年齢層も収入も好みもまったく違うんです。私ども、通常のWebサイトの一番のターゲットは「関東圏の30歳代の妻帯者で共働き」ですが、『楽天市場』の場合は、20歳代の女性が圧倒的に多い。そこらへんを見極めてホームページをつくっていかないと売れないですね。


桜井さんのほうはお客様をどうやってつかまえていらっしゃいますか?


桜井
まず、お客様にリピーターになっていただくために、会員システムにして、定期的に足や健康に関するいろんな情報を提供しています。
 そして次に私たちのやっていることを理解していただくためにホームページを立ちあげています。そういうハイテクノロジーの部分と同時に、これからは人が来て、いろいろな話をして、集えるというのが、商店が生き残っていく方法だと私は思っているんです。どんなものでも、どこからでも、手に入れることができる時代に、なぜその店に行くのかという部分を商店は考えていくべきだと考えています。


業界の将来性についてはどう思ってらっしゃいますか?


桜井
将来性は非常にあると思っています。これからは高齢社会になってきますが、死ぬ寸前まで自分のことは自分でできる自立した高齢者を目指していかれる方が増えてくると思うんです。そういうときに、私たちが提案している「歩いて健康になる」「足を大切にする」という部分はなくてはならないことですから。


青木さんにお聞きしたいんですけれども、これだけ『家具のアオキ』が売れていると商売敵が次から次へ出そうですが、その点はいかがですか?


青木
商売敵というのはほとんど私どものコピーですから怖くないんですよね。これは誰もが言うことですが、インターネットの世界では先行者利益というのが非常に大きくて、先にやったもん勝ちなんです。それと、インターネットのホームページというのは、商品があってボタンを押したらものが買えるというのはどこもみな同じです。ですから売れるか売れないかは、そのバックの仕組みをどのようにつくるかです。同じ商品を同じ価格で売っても、たぶん今、インターネットで家具を売られてるどの店の粗利益よりも、私どものほうが多いはずです。はっきり言えば、他の店の値段の下をいくのは簡単です。


二番煎じだから追いつけないとなると、この世界で青木さんの後に続くことは、とくに家具の世界ではもう不可能ですか?


青木
二番煎じがだめだというだけで、二番煎じでなかったらいいわけです。たとえば私どもよりも商品、サービスすべてにおいて優れていたら私のところが潰れます。もう一つのやり方というのは、あるカテゴリーに特化したビジネスです。総合ではなく、ある部分を取って「これはあそこが一番や」と。
 ナンバーワンという考え方には二つあって、支配率のナンバーワンというのと占有率のオンリーワンというのがありますよね。これから生き残っていくのはオンリーワンだと思います。


先行優位とオンリーワン特化に繁盛のヒントがありそうですね。最後にお二人から一言ずつ、青木さんには、これからインターネットで商売しようとする方にアドバイスを。それと桜井さんには、これから起業しよう、商売を始めようという方にアドバイスをお願いします。

青木
インターネットの中ではすでにビジネスモデルというのができています。このビジネスモデルの先行者がすでにあるところに二番手、三番手で入ろうというのは非常に難しい。ですから、インターネットの中のすき間ですね。他のやってないすき間を狙って、そのカテゴリーに特化するサイトを考えたほうがいいと思います。これは家具だけじゃなくて他でもいえることです。そしてそれをやるときには、実店舗の非常識がネット上では常識になるということ、これは頭に置いておいてほしいと思います。

桜井
働くというのは、昔はlabor(労働)とかwork(仕事)ということだったんですけれど、今はplayといわれています。つまり働くことが楽しくないといけないんですね。しかめっつらして商品を売っていても、そんな人から誰が買いますか? だから私は、まず自分自身が商売をやっててワクワクするかドキドキするかというのが、一番の根本だと思います。
(平成12年7月10日パネルディスカッションより)

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