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タイトル お客様を買う気にさせるお店づくりって?
講 師

(有)プラ・ネット・ワーク 代表取締役 兼村美徳

 

●プロフィール
1971年 関西大学卒業、同年(株)鈴屋入社 店長、エリアマネージャを歴任
1981年 同社退職後、(株)TOM入社 取締役チーフコンサルタントとして活躍
1992年 同社退社後、(有)プラ・ネット・ワークを設立。全国小売店の指導、社員教育、出店アドバイスなどを手がける。
著書/「店長必勝マニュアル100」(商業界) 出版・掲載/「商業界」「チャネラー」「月刊 ショッピングセンター」「月刊 ファッション販売

欲しいものがない時代、いかに欲しくさせるかがカギ

 私は、さまざまな商業施設にお邪魔することが多いのですが、最近どこへ行っても「売れませんね」「景気が悪いですな」という言葉が日常会話のように言われています。「売れません」と安易に言っていますが、「売れない」という言葉は、売れるのがあたり前の時に使う言葉です。確かにバブルの崩壊以前にはじっとしていても売り上げが上昇する時代もありました。ところがその頃と同じ気持ちで、「売れない」と言って嘆いているんです。「売れない」と言う前に、「売っていない」と思うべきです。
 では、「売れない」ということについて考えていきたいと思います。売れない理由について聞きますとさまざまな答えが返ってきます。1つに「お客様のニーズがつかめない」という答え。いまだに、売り上げを上げるためには客のニーズをつかめといわれています。ニーズとは、需要、お客様が欲しいと思っているもののことです。つまり、お客様が何かを欲しがっていると思っているんです。実は、これが大きな問題。お客様は本当に何かを欲しがっているのでしょうか?「100万円あげますって言われたら、どうしますか」と聞くと、1番多い答えは『貯金』、続いて『旅行』。3番目ぐらいが地域や年齢によって違いますが、車だとか、パソコンだとか…。ここで言えるのが、今はお金があっても買いたいものが頭にポンと浮かんでくる時代ではないということです。
 今から30年ぐらい前の"3C時代"と呼ばれた時代は、カラーテレビ、クーラー、車…と誰もが欲しいものがあった。つまり、ニーズがあったんですね。今は、お金があっても欲しいものが出てきません。どうしてか。それは、ものが十分に足りているからではないでしょうか。景気が悪いから買わないのではなく、ニーズというものがはっきり見えていないということにあるのです。「何をお探しですか」「何が欲しいですか」、こういう聞き方はもう一昔前なんです。買い物はしたいけれど、欲しいものはない、これが現状です。重要なのは、お店側がお客様に欲しくさせるようにどう働きかけるかということなんです。


お店のライフスタイルやセンスイメージを持とう

 これまでのお店は、「お客様は物を欲しがっているはず」「物が不足しているはず」という考えから、商品自体が主役でした。ですからお店の看板には傘屋、眼鏡屋、時計屋…というように、取扱品目を書いてきました。しかし、最近はカタカナで、しかも看板だけでは何を売っているのかわからないお店をよく見かけます。こういうお店は、物よりも、その店が発信する世界観、イメージといったものを売っているんです。
 今、商業施設をつくる時に、雑貨を中心にしたセンスやイメージを売るお店を入れたいというところが非常に増えてきてます。そのほうがお客様が入るからです。こういう雰囲気のお店には、私の好きそうな何かがあるかもしれないという気持ちをお客様に持たせるからです。西武さんがやっている『無印良品』という店があります。ボールペンから玄関マット、時計、自転車…とさまざまな生活シーンを演出する雑貨が揃っています。色はグレーや生成りで統一され、お客様に無彩色なら無彩色なもので変えてみたくさせる。そんな今の時代感覚に合ったセンスの良いものが多いのが特徴です。これに関連した品目がどんどん増え、店舗スペースも拡張されてきています。「こんな形のライフスタイルを提案しますよ」、「こんなセンスイメージをお客様におすすめします」というお店の主張が発信されていることが、多くの人を呼びこんでいるようです。

買い物好きは商売上手楽しい気分が買う気を引き出すんです

 「お客様のニーズをつかめ、売れ筋を切らすな」とよく言われます。売れ筋を切らさないということは、いつ行ったって、手に入るということですよね。じゃあ、慌てて買う必要はない。結局それは、別に欲しいものでもなかったということになるんです。
 最近では、不足する商品、限定商品のほうがヒットするといわれています。「限定10個です」といわれると欲しくなる心理からです。
 では、欲しくさせて、買い物したくするために私たちは何をすればいいのでしょうか?
 まず前提として、お客様は買い物をしたがっています。一生懸命働いて、お金を得ている。それはお金で何か楽しいもの、素敵なものが買えると思っているからでしょうね。一生懸命働いて貯めたお金です。「使って良かったなあ」と思わせてあげるために、私たちは商売すればいいんです。
 どうしたら買いたくなるのか。1番はお客様を楽しくさせてあげることです。さきほどの「100万円もらったら何に使いますか」という質問で、旅行とおっしゃる方が多かったですよね。ただし、「買い物してはいけませんツアー」だったら誰も来ないでしょう。今、海外旅行へ行く人の1番の目的は、観光ではなく買い物です。結局、楽しいから買い物して帰るんです。 
 楽しいということと買い物ということはつながってくる。それは、店づくりにもいえること。特に男性は買い物が苦手な方が多く、楽しさをあまり知らない。商売をやるんだったら、お金を使うことが好きな人でないと難しいんです。まずは、皆さんが買い物を好きになってください。

自らの感性でセレクトした商品をおすすめするのが商売

 次に大切なことは、おすすめ上手になることです。私は京都商法というのは、商売の原形を持っていると思います。呉服屋さんの商法がベースにあり、お客様がいらっしゃったら、その方に似合う反物を店員さんが見立てて「こういうのはいかがですか」っておすすめするんですね。商品を全部見せて「選ぶのはお客様の自由です」ということはやりません。
 ちょっとした料亭に行った場合に、メニューやお品書きがないのもそうです。この店の主人が、おすすめの料理を出してくれます。これからの商売はお客様が欲しがるようにすすめる役目というものが非常に大事になってきています。お客様は欲しいものがあって探しに来たんだと思っていたら、売り上げは上がりません。
 それでは皆さんは、お店にある商品をお客様におすすめできますか。使ったことがない、好きでもないなんて商品はすすめられません。すすめるためには商品を好きになってください。今の小売店というのは、好きじゃないけれど売れるから、流行っている商品だからというように、売れるもの優先で商品構成をしていることが結構あるんじゃないでしょうか。
 今、洋服の世界では、お客様が何を求めているか、何が流行っているかという商品構成ではなく、そのお店がこれはいいと思うもの、おすすめのものを仕入れて販売する"セレクトショップ"の動きも活発です。


お客様の話は体で聞いて、言葉で返す接待の気持ちで接しましょう

 次に、買ってみようかなと思わせる接客法についてお話しします。

○1ほめること

 今までは主役が商品でしたから、お客様が求めているもの、欲しいものさえ揃えていれば、なんで私がお客様にわざわざお愛想を言わなきゃならないんだって勘違いしている小売店が多かったんです。気がつくとほめるということをやらなくなってしまった。でも、ほめてくれたり、いい気分にしてくれるお店には必ずまた行きたくなるんですよ。

○2 お客様の話を聞くこと

 20〜30代の女性のストレス解消法の1番は『おしゃべり』、2番は『ショッピング』だそうです。3番ぐらいになると、『美味しいものを食べる』、『カラオケに行く』などが出てきます。私たち小売業者にとって、こんなに心強いことはないですね。まず、ショッピングは満足させてあげられる。もう1つのおしゃべりについても満足させてあげられます。販売員の大半が「話をしなければいけない」って思ってるんですが、大切なことは話をすることではなく、話を聞いてあげること、おしゃべりさせてあげることなのです。話を聞くためには、まず声をかけましょう。返事をしてもらうためには、まず当たり前のことを聞く。例えば、「暑いですね」「雨ですね」など、日常のこと。また、見たままのことをそのまま口に出してもいいですね。「今日は赤い服をお召しなんですね」「お子様ですか」など。返事はできれば「はい」になるようなことを聞きましょう。「雨、降ってましたか」「やんでましたよ」では、話がはずみませんよね。

○3 体全体で、もてなす気持ちで聞く

 話を聞くことでもう一つ大切なのは、体で聞くこと。体で聞くとは、無表情で聞かないということです。うなずいたり、笑ったり、見える聞き方をすること。それと、言葉で聞くことも大切です。「そろそろ暖かくなってきましたね」「ええ」、「冬物もう着れないでしょ」「ええ」。この返事では、言葉できちんと返したとはいえないですね。お客様は、自分の言ったことを相手がどう聞いてくれているのか、聞きたいと思って聞いてくれているのかを確認しているわけです。「そろそろ暖かくなってきましたね」「ほんと、暖かくなってきましたよね」と言葉で返してあげると、話しているほうはとても気分がよくなるんです。これが接客の技術です。
 営業マンで接待の上手な人というのは、相手の話すことにうなずきながら聞きます。会話をするというより話を聞くことが、相手のストレス解消になる。接客というと、どうしても「いらっしゃいませ。何をお探しですか?」から抜けきれません。それは、接客とはお客様の買い物のお手伝いをすることだと教えられてきたからです。それでは、買わないお客様のお付き合いはどうするんだってことですよね。ですから、欲しいもののあるお客様には接客、特に欲しいものがないお客様には接待なんです。接待というのは、特に欲しいものがない人を欲しいという気持ちにさせるためにお相手することだからです。

○4 接待する気持ちで接する

 東京ディズニーランドではお客様をゲスト、スタッフのことをキャストと呼んでいます。お客様に楽しんでもらうために、スタッフはそれぞれの役割を担っています。例えばミッキーマウスの役をする人には「あなたはミッキーマウスの役でお客様をおもてなししてください」と言われています。ミッキーマウスは主役ではなく、主役はお客様だということなんです。ですから、お客様の夢を壊さないおもてなしをしなくてはなりません。子どもに蹴りを入れられても痛いなんて言ってはダメなんです。一切、声を出してはいけない役ですから。また、一番人数が多いのがほうきとちりとりを持ってお掃除をする人(カストローズ)で、彼らは「カストローズの役でお客様をおもてなししてください」と言われています。実は、掃除をするだけならそんなに人数はいらないんです。彼らの一番の仕事は、お客様の写真を撮ってあげること。知らない人に「撮ってください」は言いづらくても、掃除のお兄さんやお姉さんには言いやすい。このようにいかにお客さまをおもてなしして、いい気分なってもらうか、ということなんです。そこまで気を配り、楽しい時間と環境を提供してくれるから、ぬいぐるみだ、クッキーだ、時計だと買い物したくなるのです。
 皆さんのお店は、お客様(ゲスト)を気持ちよく迎える体制になっていますか?商品は乱れていませんか?照明は当たるべきところにあたってますか?販売員さんの身だしなみは整っていますか?毎朝のチェックがあるのは、このためです。ぜひ、皆さん、明日からは、接客じゃなくて接待をしてください。お客様にいい気分になってもらって、「じゃあ何かいただいていこうかしら」って思わせることがこれからの我々の仕事です。買う、買わないの問題ではなく、来てくださったお客様に「よくお越しいただきました」、「お待ちしておりました」という気持ちで接しましょう。そのためには、お客様の話をちゃんと聞いてあげましょう、体で聞いてあげましょう。こうつなげていくと、今までやってきた商売の仕方と少し違うことが必要なんだなということがおわかりいただけてきたと思います。


手数を惜しまず気配りが大切

 お客様に対して手数を惜しまないことも大切です。私は洋服屋さんをご指導することが多いんですが、頭にくるのは試着お断わりが多いこと。着てみないとわからないですよね。せめて、試着はできませんけど、寸法を測ってみましょうかとメジャーで測る、このために販売員はいるんです。お客様に対してもっと手間ひまかけてください。相手のしてほしいことを事前に察知して行動で示す、気配りを大切にすることです。例えば、レストランに行って、席についているのに、「いらっしゃいませ」も何も言ってくれないと、来ていることがわかってないんじゃないだろうかってイライラするわけです。座ったときに目を見て、「いらっしゃいませ」って言ってくれると、ほかの客より先に来たことがわかってくれてるんだって安心感を持ちます。そういう気配りを大事にしてください。
 これからは、お客様に声をかけることが必要になってきます。先ほども申しましたが、「いらっしゃいませ、何かお探しですか」ではもうダメです。特に欲しいものがないんですから。だから、「ごめんなさい、ちょっと見てるだけ」って逃げちゃうんですね。お客様は声をかけると嫌がるから…ではないんです。結局は、声のかけかたが間違っているんです。その気にさせられなかったことに問題があるんです。
 
お客様に欲しいものを描いてもらえる店づくりを

 お客様にきちんとアプローチしてください。お客様にきちんとアプローチできないと売っている商品に自信がないんじゃないかって思います。自信があるから置いている、自信があるから仕入れてるんじゃないですか。自信があるものをお客様に提供するのは当たり前のことです。
 もう一度、自分のお店を見回してみて、自信を持ってすすめられるような商品があるか、お店であるかということを考えてください。商品の魅力をお客様に伝えるとは、その商品をお客様が手に入れること、使うことによってどんなメリットがお客様に与えられるかをちゃんと説明してあげられることです。「これを買うとハッピーになりますよ」を、実感込めて説明できるかどうかです。ニーズはあまり意識しなくてもいいんです。景気が悪いから売れない、お金がないから買わないのではなく、欲しいものが描けていないから、お客様は買わないんです。ですから、「あの店に行けば、なんだか買いたいものが出てくるわ」という商品構成、店づくりをすすめていただけば、不景気だろうがなんだろうが全然怖くないと思います。ぜひ、このようなことを含めて、魅力のあるお店にするように努力してください。(平成11年4月27日講演より)

講 師
有限会社プラ・ネット・ワーク 代表取締役
現代商売研究所 所長 兼村美徳
電 話
03−3357−7851
FAX
03−3357−7855

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