|
“手づくり”の技術に特化して、量販店との棲み分けに成功
京都御所にほど近い閑静な住宅街に店を構える『辻和金網』。茶こしや湯豆腐杓子、水切り網、焼き網など、多種多彩な金網細工を製造・販売している老舗店だ。店主の辻さんがこだわるのは熟練の技による“手づくり”。釘を打ちつけた台をキャンバスにして、銅やステンレスの針金を編み込みこんでいくその様子はまさに芸術的でさえある。「手づくりだからこそ、機械ものにはない“温かみ”や“華やぎ”を生み出すことができるんです」と辻さん。一流料亭や地元の豆腐店、和菓子店など、辻さんの技術に惚れ込んだ得意客も多い。
伝統工芸としての付加価値をプラスすることによって、100円ショップや量販店などの廉価商品とは、うまく“棲み分け”に成功したといえる。
きめ細やかな配慮と親切心で、顧客満足度アップ
同店では、オーダーメイドによる注文も受けている。「ご自分の好きな急須を持って来られて、これにぴったり合う茶こしを作ってほしいとおっしゃることもあります」と辻さん。その使用目的に合わせて、それぞれ針金の太さや種類、編み方にまで工夫を凝らし、お客さま“ご自分だけ”のオリジナルモノを創り出すことで、一人ひとりの満足度を高めることに成功した。
メンテナンスも、茶こし一つ、水切り一つからでも気軽に応じている。単に傷んだ個所を修理するだけでなく、ほころびやすい柄や底の部分をあらかじめ補強しておくなど細やかな配慮も怠らない。ゆるぎない努力と「うちの商品は10年使っても大丈夫、使うほどに手になじむ使い勝手の良さ」という自信とが店の信頼を生み出し、リピーターの獲得につながっているのだろう。
現代風の発想をミックスして、新しいものづくり
「伝統の技を受け継ぎ守りながら、その時代に応じた新しいモノを作っていくことを忘れてはいけない」と辻さん。銅製の金網に和紙を張った「和風スタンド」、亀甲編みという細やかな手法で放物線状に編み込んだ「花かご」や「燭台」など、生活道具である金網商品に現代風の発想を加えることで、インテリアとしての魅力を合わせ持たせることができた。
もう一つの取り組みが、異業種交流による新商品の共同開発だ。「伝統工芸のいい部分と新たな試みを融合させることによって、別途の可能性が広がりつつあります」と。清水焼と金網をマッチングさせた「風情コンロ」や「香炉」「火鉢」など、これまで市場になかったお洒落さが幅広い顧客層に受けている。
体験要素を取り入れ、観光客に適切に対応
4年前に店舗をリニューアルし、全面ガラス張りで外から店内の様子が見えるようにした。御所や鴨川など周辺を訪れた内外の観光客が立ち寄っていくこともあるという。「観光客が立ち止まって、伝統工芸に触れてもらえるような仕組みをつくりたい」と辻さん。年間100人以上の修学旅行生を積極的に受け入れており、各人が自分で作った作品を記念に持ち帰ることができるなど、“体験”要素を組み入れたサービスがたいへん好評だ。
伝統と革新の融合によって、現代ニーズにマッチした新商品・サービスを生み出す『辻和金網』。「お客さまに商品を気に入って、使ってもらってこその商いです」と辻さんが話されるように、常にお客さまを見据えた“顧客第一”の姿勢は伝統店蘇生への道筋を示したものだといえそうだ。
|