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京都・鞍馬から、深山幽谷をさらに北へ。丹波高原の美しい山々に囲まれた南丹市美山町。冬は雪に閉ざされる厳しい環境にありながら、清流のせせらぎや深い緑、澄みわたる空気も優しい静寂の里に、織工房「螢庵」はある。 京の栄華を静かに見守り、ひなびた里の風景をそのままに、時の流れを潜った村にあってこそ、創作の心と感性は鋭さとおおらかさが表出される。 そんな想いから、創業者で庵主の田村螢成(けいせい)氏は、35年前、この地に4000坪の土地を購入。茅葺(かやぶ)き屋根の旧家に手を入れて、庵を結んだという。 光ファイバー作品の開発、地元に根付く活動 螢庵の母屋を通り過ぎてまっすぐ行くと、昔ながらの織工房がある。この地で、通信用素材の光ファイバーを布地に織り込むことを発案し、1984年、約3年の試作期間を経て、成功した。以来、様々な織の研究開発に力を注ぎ、主に光ファイバーを用いた大きな緞帳の制作を行っている。
先端から光を放ち、ファンタジックな雰囲気を演出して輝く素材を使用する、このアイデアは、庵主の西陣での修行時代に、勤め先の社長が豆電球をつけた着物を製作、苦労をともにして作った経験にさかのぼる。その仕事が頭から離れず「美しく光る着物を作ってみたい」という庵主の強い思いが、現在の光ファイバーを用いた緞帳製作につながった。今では、日本各地、17ケ所の文化会館で光ファイバーの緞帳を見ることができる。 作品としては、他に帯・着物・打掛、ウエディングドレスやブーケ・タペストリーなどがある。織物以外では、タイル・床材もあり、京都府の創造法の認定を得た。伝統を守りつつ新しいことに挑戦する。人がやらぬようなことに必死で取り組む、それが西陣職人の気質だと考えている。 工房では、織体験とともに、手作りプラネタリウムの上映も行っており、小学校の社会見学などに利用されている。これは、工房の天井に張ったよしず(すだれ)一本一本に光ファイバーを埋め込み、庵主が1年をかけて組み込んだ自信作だ。12星座を彩ったプラネタリウム『いちばんぼしみつけた〜』の観賞(要予約)では、美しい音楽に合わせて無数の星が瞬く様子に、いつも絶賛の声があがる。 また、「縄文土器風の焼きの会」や「茅葺きコンサート」を催すなど、美山町に根付き、土のぬくもりを次世代へ残すための活動でも注目を集めている。
今に生きる西陣の伝統と「螢庵」の創造力、そして共生への模索 庵主は若い頃、西陣の織元で修行し、20代で早や独立・創業。1972年には「株式会社田村屋」を設立して、社長に就任した。以後美山の「螢庵」を開き、創作活動はますます意欲的になる。伝統に新しい息吹を与える独自の作風が高い評価を受けて、数々の賞や宮家献上などの栄誉に輝く。 光ファイバーを織り込んだ画期的なスタイルの開発もライフワークのひとつだ。デザイナー、桂由美のブライダル・コレクションへの参加や第4回国際テキスタイルコンペティションへの入選など、活躍は多岐にわたる。また、二代目の隆久(たかひさ)氏も12年前から、家業を継ぐため、父に師事している。 華々しい創作活動ではあるが、「私たちのやっていることは、西陣の職人も含めての“ファミリービジネス”です」と隆久氏は語る。土地にこだわり、かつ西陣織の伝統を少しでも次世代に残せたらと、西陣の織屋の“おやじ”とその仲間で精一杯守っているのが現状で、それが庵主の心意気でもある。 その心意気とともに、年間に約70万人の観光客が訪れる中、静寂を保つ地元、美山との共生、そして西陣の技を保つ職人仲間との協働に向けて、庵主をはじめ「螢庵」の模索は続く。これからも「螢庵」の活動に注目していきたい。 |
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株式会社田村屋 ■営業時間/11:00AM〜4:00PM(平日のみ) 事前連絡が必要 ■〒601-0773 京都府南丹市美山町三埜 ■TEL/075-493-5550 ■FAX/075-493-5349 ■URL/http://hotaruan.jp/ ■e-mail/info@hotaruan.jp |