“香初心者”の心をとらえる商品コンセプト
“香”の専門店として、京都で随一の老舗のれんを掲げるのが『松榮堂』。明るくオープンな店内には、様々な種類の線香や練香、匂い袋、香木、香炉など、他店では手に入らないオリジナル商品がぎっしりと並ぶ。
「香が初めてというお客様のために、親しんでもらいやすい商品をたくさん用意しています」と話すのは、京都本店店長の小坂さん。シルクロード時代の香料を研究し開発した「南山」「南都」、源氏物語五十四帖の華やかな世界を香りでイメージした「源氏かおり抄」など、これまでにない新感覚アイテムに人気が集まっている。商品コンセプトを明確にし、お客様にわかりやすく伝えることによって、これまであまり香になじみのない若者層にまでファンを広げることができた。
原材料との出会いも一期一会
300年の伝統の原点となっているのは、徹底した原材料の吟味と品質管理である。香の原料として使用されるものは、白檀や沈香、伽羅(きゃら)など数十種類で、海外でしか手に入らないものも多い。「全く同じ素材には、“二度と出会えないかもしれない”という気持ちで、商品化の工夫を考えます」と、第12代目当主の畑正高さん。現在でも、年に数回、中国やインド、東南アジアなどの原産地に足を運び、自分の目と鼻をフルに使って原料を厳選するという。
今から数年前、上海の骨董店で見つけた香炉に魅了され、日本で同じ形・サイズのものを作って販売したところ、シンプルなデザインと使い勝手を重視した品が好評で、売れ筋商品になった。「常にアンテナを張りめぐらせれば、チャンスは見えてくる」と畑さんは話す。
懇切丁寧な対応がウェブショップの信頼につながる
ホームページは平成11年に開設し、香の歴史や雑学、畑さんのエッセイ、暮らしの中で香を楽しむアイデアなど、読み物としても十分に楽しめる内容が好評で、アクセス数も着実に増加している
。
本格的なインターネット販売に取り組んだのは、昨年9月になってから。「右に倣えでは失敗する。自分たちの中で抑えきれないものが吹き出すまで、ノウハウと気力を蓄積したんです」と畑さん。香に関する商品は、香りを試してみて、実際に手に取ってみないとその良さが伝わりにくい。同店では、開設したウェブショップを第6号店と位置づけ、商品の仕様だけでなく、開発コンセプトや原材料などを明示して、対面販売と同じようなわかりやすさ、親切さを心がけている。
文化活動を通して、商いでは出会えない新たな顧客創造に成功
香文化の啓蒙活動にも積極的に取り組んでいる。香りについてのエッセイを募った「香・大賞」には毎年3,000点近い応募があるという。また、京都本店の「松吟ルーム」を講演や展示会に利用しているほか、修学旅行生などを対象に製造工程の見学会などを開催している。「いろいろな層のお客様と出会うきっかけづくりになっています」と店長の小坂さん。店づくりやサービスの一つ一つに、顧客本位の姿勢が表れている。
「伝統と革新は表裏一体」と畑さんが話すように、受け継いできた伝統資産を磨き上げることで生み出された“温故創新”の経営理念が、『松榮堂』ののれんを支えることにつながっている。
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