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先代から商売を引き継いで62年 先代の父親が、宇治川でとれた川魚を宇治市近郊へ行商していた。その後、鰻、鮎、鮒、鯉、モロコなど季節の川魚を専門に料理して、お客様に届けていた。そして、昭和47年に株式会社ふな栄と改組。 その頃、父親から商売を覚えるため、現店主で代表の千葉章弘氏は、冬場の閑散期に小さなバイクの荷台に商品を積んで地域の外へ行商に回り、それを10年以上続けたという。 商売の原点は、お客様といかにコミュニケーションをとり、売り手の心を感じ取ってもらうかである。千葉氏は、お客様の懐に飛び込んでいく商いマインドを行商で学んだ。それを命じた父親は、無言で商売とはいかにあるべきかを教えたかったのだろう。
店頭で焼く蒲焼きのなんともいえない匂いが商店街を通る人たちの食欲を刺激する。見た目の焼き色、音と匂い、いわゆる「シズル感」でお客様に訴求する売り方、商売の原点がこの店にはあるようだ。 鰻の蒲焼きは、「開き3年、串打ち8年、焼き一生」といわれる。要するにこの仕事は一生勉強という教えなのだ。千葉氏は、おいしい鰻を食べさせたいというこだわり・執念からでてきたこの格言を反芻しつつ、毎日実践している。まさに料理人の心意気を感じる。 鰻は国産のものしか使わず、長年の経験から選び出した産地のものの備長炭で焼いている。タレに使う醤油、酒、砂糖など、旨い蒲焼きに必要な素材にこだわっている。「頑固親父がつくる究極の蒲焼き」ということができる。お客様とは「味」でつながり、味がお客様をつくるという考えがぶれない、一徹な商いである。 今では、宇治市以外まで「ふな栄」の名前は知れ渡り、うまい鰻の店として多くのファンを獲得している。 北は北海道から南は九州まで冷蔵で全国発送されている。口コミで「ふな栄」のおいしさは広がり、いいものなら遠くからでも取り寄せたいというファンが全国にいる。今後ますます増える傾向にあるという。 商売へのこだわり
地域に同業者がないため、味で競争することはない。しかし、他店で評判の良いものを買って頻繁に味見をする。また、自前の蒲焼きも家庭でよく食べるという。常に味に対して敏感でなくてはならないという考えが、店に浸透している。 今や「鰻も味はあっさり」の傾向にあるという、鰻の蒲焼きの味も時代と共にあるのだという。時代の変化を読むという商売に必要な勘所はしっかりと押さえている。 今後の商売に対する思いは 千葉氏は、現在の商売の状況が続いてくれればいいと考えている。「今のお客様を大事にすれば、またお客様がお客様を呼んでくれると思っている」と語る。そして、「うちは提灯の商売でいい」とも話す。提灯は足もとだけを照らし、ライトは遠くを照らすが、足もとが見えないから暗く、蹴つまずくということだ。自分が見えている範囲の商売ができればそれでいいのだという。身の丈にあった堅実な経営姿勢だ。味を守ることが店を守っていく唯一の方法と、どこまでも愚直な店主である。鰻のように長く店が続いていくことを願わずにはいられない。 ※シズル感とは、ステーキなど肉や揚物がジュージューという音をたてていること。転じて、食欲や購買意欲を刺激するものをさしていう。
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株式会社ふな栄 |