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2000 AUGUST
NO.298
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
商社業務と
加工サービスで
最前線へ挑む

大西電気(株)
代表取締役社長 大西 俊一 氏
大西 俊一 氏


時代は商社に何を求めているのか――。大西電気(株)が取り組んでいるのは、商社本来の機能である資材の提供と、加工・組み立てサービスの2本柱の経営です。これからの新しい商流のなかで、どのような価値を創造できるかを意識しながら、絶えず自らの機能のイノベーションをめざしておられます。

ファブレス加工業

――電気・電子材料、部品、ユニットの複合商社として、どういったことに取り組んでおられるのですか。

大西 取扱高の多いものを挙げると、工業用粘着テープ、コネクタ、プリント基盤関連の順ですが、その中身は加工販売が全体の60%を占めています。今日、単に商品を調達して納品するという従来の商社機能の枠内にとどまっていては、お客様に満足していただけません。工業用粘着テープの加工も多いですし、開発設計をサポートしたり、半導体とか部品をアセンブリーして納めています。部材の加工・組み立ては協力企業に外注しています。
業種分類からいえば卸のカテゴリーに入りますが、既製品を右から左へ流しているのではなく、“ファブレス加工業”といったほうが理解していただきやすいでしょう。

――取引先も幅広いですね。

大西 昭和33年に父が電気絶縁材料の販売からスタートし、OA・情報通 信機器などの進展とともに商品群も急速に広がってきました。現在、コンピュータに入力しているお得意先は2,300社、仕入先も800社を超えます。しかも商品単価は何円何十銭というものまであります。ですから情報システムを組んでも、データ量 が多くてたちまち容量がいっぱいになってしまうのが悩みです(笑)。

――支店やデリバリー体制は?
大西 大阪支店や関東支店(神奈川県藤沢市)のほか、受発注業務と物流の効率化を図るために10年前、京都・五条に商品センターを設置しました。平成9年にはシンガポールに現地法人を設立し、また昨年は品質システムの国際標準であるISO9002認証を取得しました。


全員参加の経営めざして
――組織運営のあり方も大事になってきますね。

大西 組織は環境変化や事業上の必要に応じて組み替えていくべきものですが、従業員70人規模では変更はなかなか難しい半面 、全員参加型の体制はとりやすい。営業部とか総務部といった通常の組織とは別 に、兼務の形でコンピュータ委員会、新商品開発委員会やISO事務局、さらにプロジェクトチームを組んで対応しています。例えばコンピュータ委員会では、情報システムの専門部署がないものですから、支店を含めてコンピュータに精通 している者6名がメンバーとなり、随時集まってシステムの継続的な改善を進めています。
また、プロジェクトチームは商品別に電池、医療機器、ディスプレー、産業機器の4つの領域に分け、どのお客様がどういう商品を望んでおられるのか、情報交換を通 じてしっかりと把握し、戦略的にお客様にアプローチしていこうというのが狙いです。

――日ごろ営業現場に対してはどのような指示を?

大西 「もっと効果的にお得意先を回ってほしい」とハッパをかけているのですが…(笑)。なにしろ取扱商品やお得意先が多いうえ、最近は商品のライフサイクルも非常に短くなってきました。ご承知のように携帯電話などはものすごいスピードでビジネスが進み、毎日のように図面 がきて、その型をおこし、加工に出して、という繰り返しで、とかくスケジュール業務にのみ追われてしまいがちです。
そのなかで最優先課題は、足を運ぶだけの時間競争から「何のためにするのか」という目的を持った作戦競争へ。プロジェクトチーム編成もそうした体質転換の一環です。


社員MVP制度も
――平成元年に社長を継がれて以来、最も心がけてこられたのはどういうことですか。

大西 社内的には、社員それぞれの役割と目標をより明確にしていくことでした。そのためには会社の情報をオープンにしなければいけません。課長職以上の幹部には四半期ごとに経営内容を公表していますし、主任以上の社員に対しては毎年、決算報告会を開いています。  対外的には、的を絞ったお得意先・商品の全国的な重点営業、地域別では関東地区での拡販です。海外展開についてはいま、シンガポールを拠点としてベトナム、中国市場に注目しています。また、香港にも拠点を考えています。

――営業活動を真に支えるものは?

大西 毎年、その年に一番活躍した社員を表彰するMVP制度を設けています。CS(顧客満足)経営は広くいわれているところですが、もう一つの方策として“社員満足”も大切です。MVP制度はたんなるインセンティブということだけではなく、CSを推進するにはお取引先との接点で働く社員のやりがいや達成感があってこそだと考えています。

“選択と集中”のなかで

――仕入先も得意先もメーカーですから、つねに最前線の情報が求められますね。

大西  大西 最新のエレクトロニクス情報とともに企業情報の収集も欠かせません。お得意先は大手メーカーが多いだけに、海外現地企業やローカル企業の動向もたちまち影響してきます。

――社内での情報の共有化は?

大西 今年になってからやっと営業担当者の全員がノートパソコンを持つようになりました。まずは営業活動における情報の流れの輪をつくること、管理のための道具ではなく、営業革新へのツールになればと思っています。


――経営のキーワードにしておられるのは何ですか。

大西 「選択と集中」、そして「スピード」です。  選択と集中はプロジェクトチームの目的でもあるのですが、限られた経営資源をどう有効活用し、どこにシフトしていくのか。それがいかにうまくできるかということで、その企業の競争力というものが決まってきます。また、ITのすさまじい進展で“1年ひと昔”にさえなっていて、お客様が要求するものはどんどん変わってくる。情報をつかんだら即アクションにつなげていくことが時代の要求に応えていくことだと思っています。

DATA
大西電気(株)
代表取締役 大西 俊一
住所 〒600-8883
京都市下京区西七条北衣田町41
TEL 075-312-7805
FAX 075-311-9179
E-mail p.onishi@ohnishidenki.co.jp

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