2000 JUNE
NO.296
KYOTO MEDIA STATION

特集

21世紀に向けKIIC21策定!!


 (財)京都産業情報センターは、平成7年7月に策定された中期事業計画「ACT21」に沿って事業を展開してきたが、その後の事業環境は、ACT21策定当時と大きく変化した。特に、インターネットの急速な普及に象徴される情報通信技術(IT)の目覚ましい発展は、産業構造をも大きく変えようとしている。また、長引く不況から脱出し、経済再生を図っていくために、「多様で活力のある独立した中小企業者の育成」が焦眉の課題となっており、中小企業基本法も平成11年12月に改正された。
 
京都は、これまで1200年の歴史の中で、優れた技術・製品を有する多種多彩な企業群が集積し、新産業創造の先進地として新しい産業を生み出してきたという伝統に裏打ちされた大いなる蓄積がある。 近年、我が国の経済界は閉塞状況にあるが、このような時こそ、中小企業の情報化推進を中心として、京都産業界のITの積極的活用を支援し、京都産業をリードするリーディング産業の創出が強く求められている。
 
かかる状況のもと、KIICが果たすべき役割は、近年ますます重要になってきていることは言うに及ばないが、その一方では、KIICの重点事業を明確にし、より緻密な事業展開が求められてきている。「KIIC21」は、そうした期待に応えるべく、むこう3年から5年を展望し、KIICがいかなる役割を果たすべきか、またどのような事業に重点的に取り組んでいくべきかを明らかにするため、中期事業計画(KIIC21策定委員会報告書)として策定したものである。



KIIC事業の重点方針

1.スローガン  

 KIICは設立以来20数年間、時々の産業や技術の情報を創出・提供することにより、中小企業を軸とした地元産業の健全な発展に貢献してきた。これらの活動を今日の状況にあわせつつ、より広く浸透させていくために、スローガンを設定し、その事業を推進していく。
 「やさしいアクセス、価値ある情報、広がるネットワーク」
 このスローガンは、府内中小企業に「より親しまれるKIICづくりを行い」「本当に役立つ情報の提供と活用の支援を行い」「様々な活動を通じてネットワークを広げること」を目指している。


2.重点施策

 KIICが、現在実施している事業を大きく分類すると、以下の4つに整理することができる。
  情報創出・提供事業
  情報化促進支援事業
  経営相談事業
  人的交流促進事業(ヒューマンネットワーク)

 これらの事業は、中小企業の振興、育成という面において大きな役割を果たしてきた。しかし、中小企業を取り巻く環境は、近年より複雑化し、中小企業が求めるニーズも多様化、高度化してきている。特にKIICには、府内中小企業の情報化に関する中核的支援機関としての役割が期待されている。
 このような現状とACT21の成果を踏まえ、21世紀に向けてKIICが重点的に取り組むべき施策を次の2点に絞り込んだ。
KIIC21の重点施策    
 インターネット活用促進支援の強化    
 人的交流促進の強化

 「インターネット活用促進支援の強化」は、「ACT21」では、「情報ネットワーク」の構築支援の中で位置付けられてきた。また、近年は、情報通信技術(IT)の革新とあいまって、インターネットが急速に普及してきており、その活用如何が企業の競争力を大きく左右するとも言われている。KIICでは、これらの動きに焦点を絞り、より緻密な支援活動を展開する必要がある。
 「人的交流促進の強化」という施策も「ACT21」において4つの方向の1つとして取り上げられたものである。特に近年は、企業間競争がますます激化し、中小企業が自社の枠内だけで事業を維持し拡大していくことが困難になってきており、人的交流活動の促進によるヒューマンネットワークの形成がますます重要になってきている。
 これらの2つの重点施策は、いずれも中小企業の強化を目指すものであり、表裏一体の関係で進めなければならないものである。すなわち、「インターネット活用促進支援の強化」によって、中小企業者のインターネット活用率が高まり、人的交流の可能性を大きく広げていくことになる。また、「人的交流促進の強化」は、インターネット活用ニーズを喚起し、インターネットの活用を促進していくことになる。  なお、冒頭にあげた現在の4つの事業は、上記の2つの重点施策の下で実行していく。


3.インターネット活用促進支援の強化


 インターネットのビジネスでの活用は、今後急速に広がっていくことが予想されている。すなわち、インターネットを介しての電子商取引・企業間取引は年々倍増の勢いで広がっており、これらへの対応ができなければ、企業として生き残っていくのが難しいとさえ言われている。KIICとしては、このような状況を踏まえ、中小企業の情報化を引き続き支援するとともに、特にインターネットをビジネスの中に積極的に取り入れ、効果的に活用できるよう支援を強化する。

(1) インターネット活用支援

ホームページのコンテンツ作成支援  
 ホームページの有効活用に向けたコンテンツ作成に関する支援を行う。
中小企業の情報発信支援
 「京都メディアステーション」(KIICのホームページ)の仕組みを改善し、中小企業の情報発信を支援する。
情報化セミナー・交流会の開催  経営者及び幹部の情報化に対する意識を高めるためのセミナーや先進事例普及のための交流会等を開催する。
情報リテラシー向上のための講習会の開催  初心者向け入門講座、情報技術者向けの専門講座を適時開催し、中小企業経営者及び社員の情報リテラシーの向上を図る。

(2) ビジネス活用研究活動
インターネット活用事例の研究  インターネットの最新活用事例、ネットワークの普及に伴う不正アクセスの防御、認証サイトの構築などの事例研究を行う。
インターネットビジネス等の研究  インターネットを活用したビジネスに関する最新の事例(電子商取引、企業間取引等)を研究するとともにその普及を行う。
京都府内中小企業の情報化実態調査  京都府内の中小企業を対象に、随時、インターネットの利用・活用状況、またニーズについて、実態調査を実施する。

(3) 行政ネットワーク連携支援
ワンストップ・サービス支援  中小企業に役立つ国・府などの制度・施策に関し、ホームページからの情報発信を強化、充実する。
府内機関ネットワークの整備支援  京都府関係機関、商工会議所、商工会、市町村等とのネットワーク連携を強化、充実する。


4.人的交流促進の強化


 人的交流促進に関しては、効果的な交流活動を企画・コーディネートすることにより、「人的ネットワークの形成、事業の強化、新事業の創出支援」を目指す。その活動形態は、大きく以下の3つに分けることができる。

(1)相互交流活動

  イベント等を通じて新しい出会いの場を提供する。
交流会の企画・運営  中小企業者等が抱える様々な悩みや課題の解決に向けて、相互にアドバイスや意見交換を行う交流会を企画し運営する。  (例)「夢現の会」、「工場見学会」など
異業種交流グループの交流促進  異業種交流グループ同士の交流促進、異業種交流ネットワークの充実に向けた活動を支援する。 (例)「京都府異業種交流会連絡会議」など
産学官の交流活動促進  産学官の情報交流を活発化させ、コーディネートできる場を設定し、活動を支援する。 (例)「産学官交流事業」など

(2)事例研究活動    
事例研究部会の企画・運営  「国際化」「情報化」「環境問題」など特定のテーマを取り上げ、最新事例の研究等を行う場を提供する。  (例)「パソコン活用部会」「エコビジネス部会」「国際交流部会」など
セミナー・見学会・イベントの開催  近年の環境変化に対応していく上で特に重要なテーマを取り上げ、先進事例の研究や交流を行う。  (例)「シンポジウム・テーブル交流会」「情報化プラザ」「インターネット利用研究会」など

(3)新商品・新事業・新業態開発活動  
新商品開発グループの組織化支援  各企業が持っている技術の融合化を図り、新しい商品の開発を目指す研究会を組織化し、活動を支援する。  (例)「LSP研究会」など
ニュービジネス研究グループの組織化支援  ニュービジネスの創出を目指すメンバーを募り、事業プランの作成や可能性の検討を行う研究会を組織化し、活動を支援する。  (例)「ベンチャー研究会」「マーケティング研究会」など
新業態開発活動の支援 新しい業態(小売スタイル)の開発に向け、具体的な事例研究や実施プランの研究を支援する。  (例)「あきんど塾」など


KIIC21の重点事業

 第1章では、KIIC事業の重点施策と活動内容について述べたが、それを具体的事業との関連で整理したのが以下の表である。

1.インターネット活用促進支援事業

具体的事業と施策
活動内容
(1)インターネット活用支援
(2)ビジネス活用研究活動
(3)行政ネットワーク連携支援
(1) 京都インターネット利用研究会支援事業 インターネットビジネス利用研究、最新技術情報提供、技術人材育成等の実施
(2) 情報化プラザ事業 京都内外の情報化先進企業・施設見学、交流会等の開催
(3) 情報化推進教育事業 入門レベルから中級レベルまでの専門講座の開催
(4) ホームページコンテンツ支援事業 ホームページの活用レベルの向上に向けたコンテンツづくりに関する支援
(5) 京都メディアステーション情報発信事業 府内中小企業の企業紹介・商品紹介、異業種交流グループの紹介
(6) 府内機関ネットワークの整備支援事業 府内関係機関・商工会議所・商工会・市町村等とのネットワーク連携強化・充実
(7) ワンストップ・サービス支援事業 中小企業に役立つ国・府などの制度・施策に関する情報の発信
(8) 地域中小企業経営動向分析事業 京都府内中小企業の情報化実態調査
(9) 小売商業支援事業 インターネット通販、セキュアサイト、カード利用等の研究・普及
(10)エネルギー・環境情報提供事業 インターネットによる情報提供
(11)異業種交流・会員交流事業 インターネットによる異業種交流グループ の情報発信支援、会員間情報交流の促進

2.人的交流促進事業

具体的事業と施策
活動形態
(1)相互交流
活動
(2)事例研究
活動
(3)新商品・新事業・新業態開発活動
(1)会員研究・交流活動支援事業 研究・交流部会の企画・運営支援、新しい研究部会、交流部会の創設支援
(2)京都府異業種交流会連絡会議運営支援事業 府内異業種交流グループ同士の交流促進・支援
(3)シンポジウム・テーブル交流会事業 異業種交流グループの新技術・新製品発表の場、市場開拓の場の提供
(4)あきんど塾交流研修事業 各種の小売業が研鑚、交流できる場の提供、新業態開発研究の支援
(5)出会いの場創出事業 新春賀詞交歓会、工場見学会、情報ゴルフ倶楽部などのイベント等を通じて新しい出会いの場を提供
(6)インターネット利用研究会 研究会を通じて人的ネットワークを形成
(7)情報化プラザ事業 企業・施設見学会を通じて人的ネットワークを形成
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