企業の力は、人の力で支えられ、“経営戦略とは人事戦略である”ともいわれます。 (株)インタープロスの人材開発部は、女性のきめ細かな感性を生かして、社員のやる気を引き出し、組織の活性化につなげるなど、さまざまな角度からの教育研修サービスを通じて経営支援を行っておられます。 女性ならではの講師陣 ――経営コンサルティングの(株)インタープロスに教育研修部門の人材開発部ができたのが平成2年。それは井上部長ご自身の“起業”がきっかけとか。
――かつてない就職難の時代ですが、例えば新卒採用にあたって企業側の考え方は変わってきていますか。 井上 以前は行動力とか、やる気のある人といった漠然としたイメージだったのですが、この頃はコンピュータはこのレベルまで扱えるとか、着実に結果を出せる人、女性でも残業をいとわない人といったように、求める人材が具体的かつシビアになってきました。また、そんな人でなければ要らない、と企業側がはっきりおっしゃっていますし、新卒者にとっては厳しい時代になりました。 ――学生と企業側の意識のズレも? 井上 それはものすごく感じますね。家庭でも学校でも、当たり前のことが徹底されずに育ってきた若い人は、会社研究には熱心でも仕事の研究、働くことの意義については関心が薄いようです。セミナーで模擬面接をするのですが、友達とのカジュアルな人間関係しか経験がありませんから敬語がわからない、人の目を見ながら話をすることができない、笑顔が出ない…。 新入社員研修でも10年前には“あいさつ言葉をあげてください”というと、10ぐらいはすらすら出てきたものです。ところがいまは、“おはようございます”だけで終わりです。いかに日常生活のなかであいさつが習慣化されていないか、ということの証しでしょう。あいさつ、公私のけじめ、チームワークの大切さは、すべて社会人としての常識です。職場生活の基本がきちんとできるか、できないかは新入社員の成長にも、また職場全体の雰囲気にも大きく影響してきます。 ――企業側からの依頼で最近目立つことはありますか。 井上 こういう時代ですから即、実務の向上や売り上げにつながる研修を望まれますね。そこで私どもでは実際に職場に入らせていただき、どこに問題点があるのかを徹底的にリサーチしたうえで、研修プログラムをご提案させていただいております。 いかなる企業も、それを動かすのは“人”です。その“人”のありようによって、成果に大きな差が生まれます。やる気を育てるには、人間の心を対象とした心理学と同時に、人間集団を対象とした社会学が必要なように職場の環境づくりも重視しています。 カギを握るのは管理職 ――職場の活性化ということでは管理職の役割も大きいですね。 井上 管理職の働きかけ次第で、部下は早く大きく成長もするし、また伸び悩みもします。良くも悪くも若い人は職場のムードにすぐなじんでしまうものです。確かに実績を上げることは、管理職の大切な任務です。でも、期待されているのは部下を育てながら実績を上げることではないでしょうか。管理職が管理職として機能していないから、部下が育たないというケースも正直よく見受けられます。 ですから、管理職の方も対人関係、コミュニケーションのとり方や自分の意思を効果的に伝える手法を習得しなければなりません。ビジネス能力はコミュニケーション能力が原点といっても過言ではないでしょう。会議の進め方や、ディベートのやり方について教えてほしいというご依頼も結構多くなっています。 ――コミュニケーション促進のポイントみたいなものはありますか。 井上 相手のいわんとすることを相手の身になって素直に聴き、理解しようとすることです。人間は、自分の発言が周囲からどう扱われるかによって積極的に発言したり、逆に消極的になったりします。昔から、相手の立場にたってものを考えなさいといわれますが、本当にそのとおりで、接客についても同じことがいえるでしょう。同じものを買うなら、あのお店のあの販売員から買いたいと思われたことはありませんか。管理にしても接客にしても、その根底で人間をどのようにとらえているかということに密接に結びついているように思います。 ――人には人間力、企業には経営力がますます求められてきますね。 井上 いつの時代も“これだけは知ってほしい、実行してほしい”という最低限の常識は不変だと思います。ただ、私どもの仕事にはこれだけでいいということがなく、常に時代に即した新しい技法を取り入れていかなければなりません。 それと同時に、いままでは企業活動の「人」に焦点を合わせてきましたが、これからは「モノ」、商品開発やマーケティングの分野にも力を入れてまいります。そうしたご要望にもすでに対応させていただいており、最も重要な「人」を生かすことによって、商品づくりや販売システム、サービス体制も打つべき方法はいろいろあるからです。
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