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1999 DECEMBER
NO.290
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
害虫駆除を通して
衛生を管理する
環境ベンチャー


(株)京都インテリジェンスサーチ
代表取締役 吉村 賢 氏
吉村 賢 氏


ゴキブリ被害がビルなどに広がっています。出てきたら薬剤をまいて退治する「駆除」から出没しない衛生的環境をつくる「防除」へ――(株)京都インテリジェンスサーチは、少量の薬剤による独自のコントロールシステムで環境ベンチャー企業として一歩を踏み出しました。

事業の面白さに魅せられて
――どのようないきさつから起業されたのですか。

吉村 3年前、大学卒業のときに大企業に就職が決まっていたのですが、ベンチャー企業に行きたいなと考え直して、大阪の社員100名程度のビルメンテナンス会社に入りました。就職したというより、そこの社長が科学的にゴキブリなどの害虫を防除しようとJSA(日本環境システム協会)を組織し、大学研究者とも提携して全国ネットワークで防除システムのビジネスを展開されるなど、その考え方に共鳴するものがあったからです。
京都地区ではそのような会社がなかったものですから、「自分でやってみたい」と申し出たところ、快く資金援助をしてくださり今年5月に会社を設立しました。

――かねがね起業家を志しておられたのですか。

吉村 いえ、自分がそうなるとは考えても見ませんでした。学生時代にアルバイトで京都・嵐山で観光客向けに人力車を引いていましたが、やっているうち同じアルバイト仲間と一緒に営業のやり方や観光ガイドの方法を勉強したり、事業主と相談して自分たちの給料までも決めたりするようになりました。
また、卒業前にはブライダル関係のビデオ製作、それもセレモニーの撮影だけでなく、シナリオを考えてストーリー風に仕立てたところ、口コミでそこそこ受注もありました。そんなわけで事業をやることの面白さがなんとなくわかってきたような気がします。ビデオ製作の仕事は今は後輩に譲っていますが....。ですから、大学を出て普通に就職して、いわれたことをやるというのでは物足りなくなってきました。

――現在、会社のスタッフは?

吉村 私以下5名ですが、受注案件によってはJSAの技術者とも連携してプロジェクトチームを組みます。われわれの業務はたんなる害虫駆除ではありません。駆除する、退治するというより、害虫の侵入を防ぐと同時に衛生管理、害虫が生息しない環境を提供する、というのが基本的な考え方です。

“局所重点”の処理方法
――そのシステムはどのようなものですか。

吉村 従来のゴキブリ駆除は、ゴキブリが生息している、していないにかかわらず均一に薬剤を散布していました。そして出てきたらまた薬剤をまくという繰り返しで、年4〜12回の散布が必要とされてきました。このような方法ではゴキブリを根絶することは難しく、安全性の面からも適切であるとは言えません。
私どものやり方は、独自のノウハウでゴキブリの生息状況を把握し、生息場所にのみ高性能の機械を使って薬剤を施用する“局所重点処理方式”をとっています。この方法だと薬剤の危険なイメージに対して安心していただけますし、散布回数も年1〜2回で済みますのでお客様の手間も省けます。また、3〜4カ月に1回の点検で1年を通してゴキブリをほとんど見かけない状態を維持管理します。

――ゴキブリの生態や害については意外と知られていませんね。

吉村 賢 氏吉村 一般家屋で見かけるクロゴキブリに対し、飲食店やビル、工場、ホテルなどに出没するのが最も小型のチャバネゴキブリです。チャバネゴキブリは壁の内部やすき間などに潜伏・生息していて寒さには弱いのですが、暖房が行き届くようになったため年間を通じて繁殖を続けています。それはどんなに最新鋭のインテリジェントビルでも例外ではないでしょう。
なぜ防除しなければいけないのかというと、あの姿や動きが嫌われるからではなく、コンピュータ機器の回路に入り込んで性能をマヒさせたり、病原菌(サルモネラ菌、大腸菌など)を媒介する衛生害虫だからです。O-157による食中毒などを機にHACCP(衛生管理手法)の導入が進められつつある食品工場では、ゴキブリ防除はHACCP承認の前提条件になっていますし、病院でも院内感染防止のために防除は欠かせません。

――具体的に業務はどんな手順で行われるのですか。

吉村 まず施設調査でダクトの穴や壁のすき間など侵入口をチェックしたあと、生息調査をします。これはもちろんオフィス内の機器類も含めて徹底的に行います。ゴキブリは熱に依存しますから、熱源はどうなっているのか、機器の中にも潜んでいないか、いるとしたら機器を分解してみる必要があるのかどうかまで調べるわけです。そうして少しでも生息の可能性がある場所にトラップを仕掛けて何匹捕れるか、捕虫指数をきちんと出します。
次にどんな薬剤をどのくらい使うかを決めますが、施用はJSAの定めたカリキュラムを修得した技術員以外は認めていません。あとのメンテナンスは、定期点検を通して予防措置をとります。特に食品加工場や病院の場合は毎月モニタリング実施する一方、お客様には改善事項も盛り込んだ「環境報告書」を提出します。つまり、衛生管理に対するコンサルテーションというほうがわかりやすいでしょう。

衛生的環境づくりを見据える
――当初考えていたことと現実とのギャップみたいなものがありましたか。

吉村 別にとまどいはありません。むしろ予測していた以上にニーズがあり、手応えを感じています。これまで身近な衛生面が改善されないまま、置き去りにされてきたからではないでしょうか。“考え方はわかったが、実際にできるのか”といわれることもありますが、それを科学的な方法によって可能にしたのが私どものノウハウなんです。ここへきて大阪、名古屋方面からもまとまった案件が持ち込まれています。  その他の事業として、廃棄物処理や廃水システムなど環境問題を衛生面から広くとらえていきたいと考えています。それには人材育成が必要になってくるでしょう。大学にもそうした分野、例えば衛生的環境を整えるサニタリーデザインを体系的に教えている所があまりないようなので、その橋渡し役ができればとも思っているのですが...。

――学生や若手起業家が増えつつありますが、これまでの経験から一言。

吉村 いろんな角度からいろんな分野に接してみることです。それも目に見える部分、メーカーだと商品がいいとか悪いとかとかではなくて、なぜその商品が生まれたのか、背景を考えてみる。そうしたなかから、自分がやるべきことが何かつかめるんじゃないかと思います。

DATA
(株)京都インテリジェンスサーチ
代表取締役 吉村 賢
住所〒612-8037 京都市伏見区桃山町鍋島27-1
TEL075-605-0701
FAX0075-605-0702
E-mailsearch@mail.joho-kyoto.or.jp
URLhttp://www.joho-kyoto.or.jp/~k-search/

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