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1999 NOVEMBER
NO.289
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
情環境変化をとらえ
独自の技術で
新たな活路を開く


株式会社 舞鶴計器
代表取締役 玉林 久人 氏
玉林 久人 氏


戦後、海の仕事に携わってきた(株)舞鶴計器は航海計器の経験とノウハウから“技術の舞計(マイケイ)”と呼ばれ、造船王国の一端を担ってこられました。
時代の変化とともに、その技術力を生かして異なった分野に進出、新たな機能とシステムづくりをめざして常にフレキシブルに挑戦を続けておられます。

海(船舶)から陸へ
――長年、舞鶴計器といえば航海計器で知られてきましたね。

会社外観玉林 地元の造船所や官庁船、それに商漁船など、かつては船舶関連の仕事が100%でした。漁船さんとも顔なじみで、早朝、出漁間際の漁船から突然、「故障したのですぐ来てくれ」なんていう連絡が入るのは日常茶飯事のこと。サケ・マス漁の船団の仕事もあり、基地のあった富山県に営業所を置き、計器のメンテナンスのために乗り込んで、北海道やソ連の領海すれすれの所まで毎年のように同行したものです。
それが時代の流れとともに、遠洋漁業のほうも次第に廃れてしまい、このあたりでは大型漁船は見かけなくなりなした。いま、船舶関連は全体の50%程度に減っていますが、官庁船や商漁船など船舶用の航海光学・気象観測・エンジン機器の計器や、膨張式救命筏(いかだ)の整備など海の仕事はずっと続けさせていただいています。

――海外相手のビジネスも盛んだったとか。

玉林 現在はシンガポール、台湾、タイなどへ計器の部分を一部供給しているくらいです。昔は直接出向き、至れり尽くせりの歓迎を受けたものですが、現地にも我々と同じような会社ができたものですから、出かけて行くようなことはなくなりました。

――海の仕事から陸の仕事へ、その事業の柱は何でしたか。

玉林 トンネルを掘削する際の方位や傾斜などの測定システムです。シールド工法のトンネル用に独自に開発しました。シールドマシンにそれを取り付けて掘削していくわけです。新規に手がけた当初、実際に口径3mくらいの坑内に入ってみると、足元を地下水が流れ、だんだん不安になって.....でも、なかなか面白い仕事です。

“計器”生かし新規開発
――開発されたトンネル掘削の管理システムはどのようなものですか。

玉林 シールドマシンや裏込めプラントといった各種設備からの出力信号を24時間自動計測して記録するもので、データ計測・帳票作成など管理作業の自動化を実現しました。マルチタスクOSを採用しているので、システム稼働中は常時計測を行い、帳票出力、画面操作なども計測と並行して処理できるのが特長です。
このシステム「SCHOP(スコップ)」は平成6年に科学技術庁長官賞をいただきました。

――トンネルの需要は結構ありますか。

玉林 東京ではすでに80%は掘り尽くされたといわれています。これからは地方を中心に、下水道や電力・ガスの共同抗など口径1〜1.5mの需要にシフトしつつあります。そうしたニーズに合わせて、人間が坑内に入れない狭い口径のトンネル内の測量、地中のどこをどう掘っているのか、それを地上から探知する技術システムの開発に取り組んでいるところです。

――常に新しい技術を取り込んで、独自のシステムを切り開いていく――これまで自社開発した製品にはどのようなものがありますか。

玉林 ガラスには実は表と裏があって、微妙な違いがあるのです。それを判別する装置を地元のガラス工場に納品しました。それから、これは子会社で考案したのですが、クリーニングの自動受け渡し装置。ただちょっとコストがかかりすぎて、売れ行きのほうはいま一つなんですが....。
このほか、地方自治体向けに斜面崩壊解析装置、電力会社などへの超音波水位テレメーター装置、ゼネコンさんへの排土重量計測装置、船舶の舷門監視TV装置などがあります。そしていま手がけているものにゴルフのクラブヘッドにあるスイートスポットの検査機器、こんな遊び道具の研究も事業ネタにしています(笑)。

現状に甘んじることなく
――ところで、それを支えている人材に関してはどのように考えていますか。

玉林 社員42名のうち営業と管理部門が11名、残りが技術者で平均年齢36歳くらいです。このままだとあと10年もすれば会社も高齢化してしまう。若い人たちが新しい感覚で自由にやれるような会社にと、今春、新卒2名が入社し、来春も舞鶴高専など2名採用が内定していて、これからも若い人を積極的に入れていくつもりです。
それともう一つの懸案は、会社の舵取りを任せるに足る後継者づくりです。

――今後の事業展開の方向についてはいかがですか。

玉林 転換期とわかっていても、なかなかうまく転換できないということがよくありますね。いまのところはトンネル関連の仕事がそこそこ入ってきていますので、ついつい現状に甘んじてしまいがちです。要は、先行きに対する危機意識の持ちようでしょう。
我々にとって根っこの技術は電気とソフトですが、周辺の技術をさらに耕していくことと、ソフトの開発を社員にはことあるごとに提案しています。ソフト事業は即結果が出ますし、経営は1年、1年が勝負ですから。中長期的には敷地に余裕があるので、何か有効利用できれば....。時代に対応したいわゆる環境ビジネスや情報ネットワーク事業も視野に入れています。

一歩先の情報をつかむ
――これだけの特殊な技術を持っておられるのですから、広く認知されるための営業活動もまた重要になってきますね。

玉林 地元以外では東京、大阪、名古屋へ出かけています。今年3月まで東京には営業所を構えていたのですが、いまは担当者が月曜の朝から出張して金曜の夕方に帰ってくるというパターンです。営業を問わず社員には「一歩先の情報をつかんでこい」とハッパをかけています。

――フレキシブルな技術者集団をめざすにあたってのポイントはありますか。

玉林 情報の入手には多少“他力本願”みたいなところがあるのでしょうけど、技術開発はあくまで“自力本願”。ですから、人間を画一化する「マネージ」の発想ではなく、多彩な能力を伸ばす「リード」の発想が人間をヤル気にさせる要諦でしょう。もっとも、私の提案が拒否されるのはしばしばですけど(笑)。

DATA
(株)舞鶴計器
代表取締役社長 玉林 久人
住所〒625-0085 京都府舞鶴市和田1067-2
TEL0773-62-1307
FAX0773-62-9487
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