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1999 OCTOBER
NO.288
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
情報と営業重視の
提案型企業へ
役割転換を図る


将光 株式会社
代表取締役 山室 保雄 氏
山室 保雄 氏


昭和33年に縫製工場として創業。パンスト、タイツ、スパッツなどレッグファッションを陰で支えてこられた将光(株)。地元の綾部に根を張りながらもつねに業界の動きをしっかり見つめ、下請け型企業からメーカー型企業に、そしてマーケット重視の提案型企業へいま一歩を踏み出そうとしておられます。

アパレルメーカーの協力工場の最大手
――社名の「将光」の由来をお聞かせください。

山室 「光」にはいろんな色と波長があります。人にもそれぞれの個性があります。そのなかから、よりすぐったものを集める=「将(と)る」というところから先代社長(山室 保)がつけたと聞いています。

――さて、その人材ですが、主役はやはり女性ということになりますか。

山室 女性のパワーには大いに期待しています。例えばパンストは、まずツマ先を縫い合わせ、ズボン状に縫製し、ゴム部分を取り付けて....と、いくつかの工程を経てつくられます。このように女性は糸をあやつり、それをファッションに変えてしまう当社の貴重な財産ですし、これからも商品として育て上げるのは従業員個々のスキルであることに変わりはありません。
今秋から所属の組合を通じて中国から女性研修生を受け入れます。これがいい刺激になればと楽しみにしています。

――創業以来のメイン事業であるパンティストッキング(以下、パンストと称す)の需要は昨今いかがですか。

山室 全国のパンストの縫製部分1%を当社で加工していますが、10年前の全国生産量12億足をピークに、その後はパンツルックの流行や生足ブームのあおりを受け、現在は約5億足と半分以下に落ち込んでいます。価格もご存じのような安値競争に巻き込まれ、まさに“非常事態宣言”の大変な時代です。

――これまでパンストのほかに、どんなものを手がけられたのですか。

山室 先代社長のあとを継ぐためにこの仕事に従事したのが昭和49年。ちょうど第1次オイルショックの真最中で、当時は某アパレルメーカーの下請け加工一本でしたから、たちまち当社もリストラを迫られました。そこでそれを機会に“このままで生き残れない”と考え、兵庫、奈良方面にも足を延ばして積極的に注文をとり、パジャマや子供シャツをそれぞれ手がけたこともありました。

――それで現在の商品構成、取引先は?

山室 パンストは3年前は70%だったのですが、いまは50%台で、スパッツ、インナー合わせて30%、アパレル他が残りといったところです。  主な取引先は姫路から東海、福井方面まで上場企業を含めて10社、うち売上高の6割はアパレルメーカー一社で占めています。営業はもっぱら私1人でしたが、今年、現場から営業に1人廻して2名でやっています。

――某アパレルメーカーの協力工場としても独自性は欠かせませんね。

山室 某アパレルメーカーの協力工場9社のなかでは当社が今のところ最大規模なんです。それに加えて自動機にかからないものを中心にすすめています。大型機械を導入しようとすれば2,000〜3,000万円の投資やメンテに手がかかります。ましてや先行き不透明な時代ですから、装置産業は我々の手におえるところではありません。これも以前の例のオイルショックの経験から得た教訓です。

May I help you ?の精神で
――ということは、それだけ人手がかかりますね。

山室 従業員は男子が他社からの出向者2名を含めて9名、女子は80名で約半数がパートです。20年前に比べて約3倍に増えましたが、それは取引先の多角化、いろんなニーズに応じる一方で、急ぎの仕事が入ったときなどでも対応するための態勢づくりとしてそうなったということです。確かに売り上げ自体は規模の増大に支えられてバブル期より伸びてはいるものの、要は事業の中身をどうしていくかがこれからの課題です。

――経営のあり方として、今後はどのような方向をお考えですか。

山室 一言でいえば、下請けの賃加工からメーカー型、それも提案型企業になることです。そのためには短納期、つまりスピードと低コスト、そしてどんな場合でも小回りを利かせたクイックレスポンスが必要条件になるでしょう。このあいだも納品のために九州まで夜行で行き、また夜行に飛び乗って戻ってきました。
また、平成2年には生産の集中管理システムを導入し、受注と納期を軸に工程別の進捗状況や出来高が一目でわかるようになりました。おかげで生産現場における問題の所在がはっきりし、人員の配置もだいぶムダがなくなり、それだけコストダウンできたと思っています。

――クイックレスポンスは営業活動についてもいえますね。具体的にはどのように?

山室 “May I help you ?”の精神です。注文をもらうという視点ではなく、お客様にメリットをもたらす方向で考えていけば、その延長線上に必ずビジネスチャンスが開けてくると思っています。
この売れない時代でも紹介を通じて飛び込んでいけば、意外と門前払いはありません。たとえ注文はいただいていなくても何度か足を運び、マーケッターとしてお客様と接していると、「こんなものはできないか」とヒントなり打診を頂戴することもあります。これは特異なケースですが、商社から生地を数年間仕入れているうち、やりとりのなかから新しい商品が生まれ、現在はそれがわりと好調にでています。

女性パワーに期待して...
――提案型企業であるためには、いうまでもなくお客様に価値あるものを提案、提供するという幅広い取り組みが大切になってきますね。

山室 お客様が欲しいもの、役立つもの、利益を得るものをつくるということですが、ドメインというか特化していくべき分野は何か、そろそろ答えを出していきたいと考えているところです。
ただ、いまでも毎週のように京阪神に出向いていますが、京都府北部はビジネスチャンスに至るまでのアプローチにどうしてもハンディキャップがあります。商売のタイミングを逃さず、ニッチ狙いでいくには業界情報の先取りは欠かせません。このたび京都産業情報センターに入会させていただき、そのへんでご指導とネットワークが形成できれば、と。

会社外観
DATA
将 光(株)
代表取締役 山室 保雄
住所〒623-0053
京都府綾部市宮代町前田13の6
TEL0773-42-1026
FAX0773-42-9201
E-mailshoko@mxa.nkansai.ne.jp

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