アイデアや気の利いたプラン、販促ツールが必要なとき、企画からシステムの提案、実施までフォローし、販売促進のシンクタンクをめざす(株)アドルック。多様化する企業ニーズに多面的に対応するには、「スピード」「タイミング」「ヒラメキ」――そして幅広いネットワークをフルに生かしてビジネスのスケールアップを図られています。 販路開拓はネットワークで ――“売れない時代”といわれていますが、業務メニューの中身も変わってきていますか。 山本 大手広告代理店を脱サラし独立して26年、当初はマスコミ広告など総合広告代理業と称していましたが、約10年前から販促企業サービスを前面に出しています。 販促企画というのは、たんにSP(セールスプロモーション)のためのプランやツールの作成をいうのではありません。現在は“つくったものを売る”のではなく、マーケットニーズをにらんで“求められるものをつくって売る”時代です。要するに「送り手発想」「メーカー発想」ではなくて「受け手発想」「ユーザー発想」に立ってものを考えるということです。和装業界でいえば、どんな色、柄のものをつくったら売れるだろうかという商品企画の段階からお手伝いさせていただいています。 ――流通段階では新しい販売チャネルの開発も必要になってきますね。 山本 和装業界を初め各業界、行政、大学、お寺や神社など、いろんな業種、団体とおつき合いさせていただいていますので、それを生かして取り組んでいるのがネットワークサービスです。どういうことかというと、ガラス食器を扱っているお店があるとします。これまでの販促は、どういう媒体を使って宣伝をするかとか、会員システムを導入するといった発想の域を出ませんでした。しかし、もっと違った販売ルートは使えないか、例えば全国2万5,000店の呉服店のルートは利用できないだろうか。あるいはガラス食器に関連した別の商品も扱ってみてはどうだろう――そういったことも提案していくわけです。 また、呉服店にとって「七五三」や振り袖を着る正月、成人式が需要シーズンになりますが、同時に神社にお参りします。とすると着物と神社のドッキング、若い女性をターゲットに“縁結び”などの企画も考えられるでしょう。 ――そうしたソフトサービスで大切なことはなんですか。 山本 お得意先にとって、どうすればプラス要因が生まれるかを考えることです。例をあげると、繁華街に立地している若者向けのショッピングビルのちょっとした広場を集客のためにどう生かすか。キャンパスフェアを打つのも一つのアイデアでしょう。大学にとっては効率よく受験生との接点ができますし、ビル側にとってもなにがしかの収入につながります。 口はばったい言い方ですが、ネットワークサービスにあたっての基本スタンスはお得意先からお金をいただくためではありません。お得意先にお金が入るようにするためのお手伝いをさせていただく。そこから間接的に我々の仕事につながればいいわけで、したがって必ずしも営業というとらえ方はしていません。 豪華客船でのイベント企画も ――最近は大がかりなイベントも手がけておられるとか。 山本 来年の2000年の暮れから2001年にかけてのミレニアム、つまり1000年に1回の一大イベントとして旅行会社とタイアップし、“21世紀 愛のカウントダウン”と銘打って世界最大の豪華客船による「クルーズウェディング」を企画しました。客船は米国の「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」(14万2,000トン)で、あのタイタニック号の4倍というスケールです。日程は12日間、船内チャペルでの挙式や金・銀・銅婚などの記念式とともに、西カリブ海のクルージングを楽しんでもらおうというもので、桂由美さんが総合プロデュースします。全国の貸衣装店などにもポスター、パンフレットを配りました。 ――一方ちょっと知恵を貸してほしい、というときには....。 山本 マーケットリサーチからカタログやパンフレット、POPなどの販促ツール、マスコミや交通機関の広告媒体、展示会、店舗設計、PR誌・機関誌、ホームページ制作、作家などのライセンシー契約まで、“売り”に関することはすべてフォローアップの体制をとっています。 ――社内外のスタッフの連携もまた大切になってきますね。 山本 社内スタッフは9人ですが、プロジェクトに応じて組む外部の協力スタッフを数多く抱えています。いま、アウトソーシングが経営手法の1つとして注目されていますが、その意味あいや位置づけは多少違いますけど、我々の世界はもともと一種のアウトソーシングで成り立っているともいえます。そういった意味で協力スタッフもまた大きな財産です。 ――ソフトサービスというものに対するお得意先の受け止め方に変化はみられますか。 山本 よいモノをつくっても買ってもらえない、なかなか売れない現実に多くの企業がぶつかっています。しかし今日、販売力の強化とは営業マンを増やすことではありません。消費者の求めていること、不満をモノづくりに生かす情報マンであることが大切です。消費者の利便を高めることに徹し、喜ばれる売り方をすれば消費者はサポーターになってもらえます。 これまでの延長線上に繁栄の道はない、だからこそ最近は新しい視点なりソフトの必要性を感じてこられつつあるように思います。 販促企画会社として ――ところで、会社自信が広く認知されることも重要な要件になりますね。 山本 我々は“縁の下の力持ち”、いわゆる黒衣の立場ですし、メーカーと違って新製品発表会というものがありません。ですから業界関係者に声をかけて、なんらかの形でプロジェクト商品などPRの場づくりができないかな、と。 ――社内の体制についてはいかがですか。 山本 仕事柄、プランナーやコピーライター、デザイナーなど関連職種のプロの集団といった方がいいかもしれません。ただ今後、新入社員を入れていくとき、どう業務をよりシステム化し、仕組みとして人材を育成していくか。 また、業種的には広告代理業、マーケティングエージェンシーであることに変わりはありませんが、新しい業態というか、販促企画会社を看板にしていますから、それにふさわしい企業体としての体制を固めていきたい、と考えています。 ――同時に、ネットワークサービスも生かしていかれるわけですが、それに関連して異業種交流を進めるうえでのアドバイスはありますか。 山本 時間を割いて参加するのだから“何かメリットになるものはないか”という意識だけが先行すると、あまり効果は期待できないでしょう。相手にどんな話をしてあげたらメリットになるかを考え、お互いにそういう情報を持ち寄ってこそプラス効果が生まれてくる。それは我々のネットワークサービスの基本姿勢にも共通していえることだと思います。
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