1999 AUGUST
NO.286
KYOTO MEDIA STATION

特集
平成11年度 京都府異業種交流会連絡会議
「講演と交流のつどい」開催

交歓会7月22日(木)、京都府異業種交流会連絡会議(異業種京都会)、中小企業総合事業団、(財)中小企業異業種交流財団の共催による平成11年度「講演と交流のつどい」が、京都ブライトンホテルにおいて開催されました。
むせ返るような夏の暑さにも関わらず、当日は120名という参加人数。中沼 壽 京都府異業種交流会連絡会議会長、吉池 一郎 京都府商工部長の開会のあいさつの後、芝 忠 神奈川県異業種交流グループ連絡会議事務局長による、神奈川県の異業種交流活動を事例とした講演が行われました。続く異業種京都会会員グループの活動報告では、3グループによる各々の活動状況の報告や、今後の展開などが話されました。そして、交流交歓会では柳川 秀史(財)中小企業異業種交流財団課長代理による開会のごあいさつ、茶畑 保夫 京都府中小企業総合センター経営部長の乾杯の発声で始まり、会は終始和やかな雰囲気に包まれていました。
異業種京都会では、84グループ・団体が寄り合い、活動が進められています。21世紀に向けて情報の交換・共有化とヒューマンネットワークの拡大を目指し、今後さらなる展開に期待が持てそうです。

基調講演
最近の異業種交流活動と神奈川県の事例

神奈川県異業種交流グループ連絡会議 事務局長
((財)神奈川県中小企業センター企業化支援部参事)芝 忠氏

●国の新たな政策展開の動き

芝 忠氏昨年、異業種交流グループの数は全国で3,000の大台を突破(3,103)、参加企業数は12万6,000社に達し、この10年間でグループ数、企業数とも倍増しています。異業種交流という手法は不況対応というだけにとどまらず、今日では中小企業にとって主要な経営戦略であるといえるでしょう。
国の中小企業政策も、任意団体である異業種交流団体はこれまで施策の対象外でしたが、数年前から積極的に後押ししていこうと政策を転換しつつあります。平成7年の中小企業創造活動促進法、昨年の新事業創出促進法、今年は中小企業経営革新支援法と矢継ぎ早に法制化されているのがその表れです。異業種交流には技術連鎖・多角的連携・広域産業集積・広域ネットワーク型分業体制などさまざまなタイプがありますが、今回の経営革新法ではゆるやかなネットワークも支援の対象にしています。こうした一連の政策の動きを経営者自身がまず把握しておくことが大切だと思います。
米国では1980年代初め、大企業の基盤技術に対し中小企業は応用技術を担っているとはっきり位置づけ、新たに投資制度をつくりました。政府が中小企業のために使う年間の開発資金は、中小企業庁の調査報告によると、米国の1,400億円に対し日本はわずか62億円だそうです。米国でベンチャービジネスが盛んなのは、なにも民間のエンジェルの存在だけではないわけです。そこで中小企業庁は昨年以降、次々に補助金政策を打ち出し、現在では労働・農水省など他省関連も含めてメニューは約40を数えています。このように、中小企業を取り巻く政策は明らかに変わりつつあり、しかもその背後には大きな補助金が用意されているのです。
我々は「神奈川県中小企業政策研究会」を開き、補助金を受けた企業の体験談を聞くなど勉強をしているところですが、いいかえれば補助金を活用できるような企業でないとこれからは生き残れないともいえるのではないでしょうか。また、申請にあたってアドバイスもしています。そのポイントは“あなたの企業が取り組もうとしているテーマや事業がいかに地域、社会貢献につながるのか”ということを明確にすることです。そして申請作業に中間管理職層を参加させれば、何のために会社が存在しているのかを考える契機となり、彼らの意識も変わってくるはずです。

●神奈川県における“事業おこし”
私自身は約20年前、異業種交流のはしりの頃から神奈川県職員としてこの仕事に携わってきまして、県では平成7年に工業試験場など試験研究機関を再編成し、その一環として(財)神奈川県中小企業センターに「かながわ異業種交流センター」を開設しました。といっても、常勤職員は私1人だけで、ビジネスコーディネーターとして大企業OBなど非常勤スタッフ20数名の協力をいただいています。現在では相談件数は電話によるものを含めて年間4,300件、独自に組織化して取り組んでいるプロジェクト(研究会)は40件近くにものぼります。そのなかからいくつか事例を紹介しましょう。

中小メーカーと農家が連携
県内の三浦半島は全国的にも有名な大根の産地ですが、収穫後の洗浄や選別作業が大変で担い手確保のネックにもなっていました。このためメンバー企業が農家や農協と協力し、5年がかりで洗浄から計量、選別までの行程を一括して行えるシステムをこのほど開発しました。従来機よりも小型のためスペースをとらず、1.5倍のスピードで作業を終えるほか、アタッチメントを交換すれば夏の名産であるカボチャにも使えます。首都圏では例のない1次産業と2次産業のタイアップであるとともに、地域密着分野の開拓例といえます。
国際交流プロジェクト
韓国とは10年前から異業種交流を始め、年1回のシンポジウムや商談会に加え、今年になって韓国から小型乗用車の輸入がスタートしました。中国山東省・威海市との国際通商交流プロジェクトは2年前に発足し、昨年9月に輸出入と人材交流で覚書に調印、関西国際空港の第2期工事用などの海砂や石材の輸入がすでに実現しています。ベトナムビジネス研究会も越日友好協会経済委員会と昨年10月に交流協定書を締結し、同国の湖沼の環境浄化や水産加工品輸入の商談が活発化しています。
さらに最近、話が待ち上がってきたのがミャンマーです。1次産品の輸入をはじめ、鉄鋼の圧延工程で冷却用にモミ殻を炭化させて使うため大量にモミ殻を買い入れる商談などが進行中で、その運搬に全国の海運会社10数社から引き合いがきています。ミャンマーとのビジネスは今後の展開を考えると県レベルでの領域を超えることも予想され、今後、日本全国に呼びかけていく予定です。
海外との交流にあたっては、個別にやりとりするのではなく、双方で窓口をきちんと決めておくことが大事です。
リサイクルシステムの確立へ
まず自動車と家電製品の2分野を対象にリサイクルシステムをつくろうと、地元の日産自動車や東芝の協力をいただいて昨年8月に循環系産業開発研究会を発足させました。京浜臨海部に多様な企業が集積する利点を生かし、リサイクルシステムを中小企業の新たなビジネスチャンスにつなげていこうという狙いで、同研究会の会長は、日産でスカイラインやローレルなど主力車種の開発をリードした桜井真一郎氏に引き受けていただきました。
「エコタオル」の採用
神奈川県理容環境衛生同業組合と愛媛・今治のタオルメーカーの間を仲立ちして、昨年暮れから県内の理容店でエコロジータオル(高性能純天然素材加工タオル)が採用されました。エコタオルは製造工程で化学薬品を使わないので河川を汚さず、せっけんで洗ってもソフトさを保つうえ、耐久性に優れ肌にやさしいのが特長です。横浜は明治になって洋風床屋の発祥の地ということで、全国に先駆けて導入したのですが、エコタオルを使うだけでなく、サイズなどの使い勝手や顧客の要望をフィードバックし、共同でより環境にやさしい製品の開発にも取り組んでいます。
このタオルの開発については任意団体の限界を超えているので、目下、国の新規事業に関する補助金を受けて新会社の設立を準備中です。そこではせっけんや軟水器も売りますし、環境や健康に配慮したもの、例えば有機野菜も扱う予定です。今回、タオルを重視したのは衣食住の衣の分野で突破口になるのではと考えたからです。

●事業開発型の活動を
異業種交流というのは、情報を交換する母集団といえます。交流を通じてレベルの高い情報交換を心がけなければいけませんが、メンバー全員が1つのテーマに取り組むのは不可能なことです。したがって、事業開発は気の合った仲間同士で、しかもこれからは積極的に新しいビジネスに挑戦していく事業開発型の活動が求められているように思います。
私の経験を通じてキーワードをあげてみますと、
  1. 広域交流(国際交流や愛媛との共同事業)
  2. 事業開発支援(新規創業、新会社づくりに対して補助金が出る) 
  3. 問題解決は異業種連携で(異業種から衆知を集める)

これらのことが異業種交流活動を一歩でも前進させていく要素になるのではないかと思います。

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