1999 JUNE
NO.284
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
中小企業経営者の よき相談相手として 経営を支援

有限会社 アルフ経営
代表取締役 辻井 功 氏


50歳で脱サラしてコンサルティング業に転身、クライアントの企業とともに考え、行動し、生産コストの低減や品質改善など常に現場の視点に立った指導を心がけてこられました。最近はISOの認証取得に対する支援を行う一方、(財)京都産業情報センターのエネルギー使用合理化相談員として日々奔走しておられます。

中小企業ゆえの苦労を知る
――得意としておられるコンサルティングの分野はなんですか。

辻井 「企業は人なり」といわれるように、スタート時は人事評価制度の策定や管理者・スタッフの意識改革のための研修をはじめ、どんなご相談にも対応させていただきました。そのなかでも私自身、長年モノづくりに携わってきた経験から生産管理面を中心としたコンサルティング、生産部門のコストダウンや品質改善をメインに取り組んでいます。最近ではISO9000S(品質保証システム)、14001(環境管理監査)の認証取得に対する指導依頼が増えてきました。

――そもそも独立されたきっかけは?

辻井 鉄鋼関連のメーカーでは28年間、技術畑を歩き、製造部門をはじめ、設備計画や外注先の技術指導をしてきました。その間、出向も経験しましたが、サラリーマン時代を通じて肌で感じたのが中小企業であるがゆえのさまざまな苦労です。やがては独立して中小企業のために何か役立つ仕事をしたいと考え、在職中に中小企業診断士(工鉱業部門)の資格を取り、平成4年、50歳のときに退職して、その翌日からこの仕事を始めました。

――そうするとクライアントは大体メーカーになりますか。

辻井 やはりメーカーがほとんどですけど業種は問いません。なぜなら経営者の視点というのは、製造業であれ、小売り・サービス業であれ同じなんです。製造業は目に見える商品をつくります。小売業は製造こそしませんが、たんに商品を売るだけでなく、売り方、サービス業もサービスという無形の商品をつくり出しているという側面を持っています。そういった意味で、それぞれ経営課題は人の問題であったり、有形無形の違いこそあれ“商品”の問題であることに変わりはありません。

――コンサルティングを行うにあたって心がけておられることはなんですか。

辻井 まず、相手の経営者の話をじっくりおうかがいするということです。どういうことを問題点として認識され、私どもに何を望んでおられるのか。それに関連して研修スタイルをとりながら、現場の社員の方ともよくやりとりをします。そうして周辺から問題を固めていくと、阻害要因は何か、そのための解決方策は何であるかが見えてきます。

ISO導入はトップのリーダーシップで
――昨今はISOの認証取得に関する案件が多いそうですが、その取得動機は?

辻井 親企業から要請があったためとか、海外で輸出をしていて取得が取引条件になったというような必要に迫られてのケースも確かにありますが、経営ツールとして、マネジメント手法として導入する企業も増えています。取得するためには作業手順をマニュアル化したり、各人の職務分担や権限、責任を明確にするなど社内体制を整備しなければなりません。その結果として社員の意識が向上したというプラス効果の期待も大きいようです。

――効率的な導入の要件みたいなものはありますか。

辻井 なによりもまず、経営トップがその気になることです。例えばISO9000Sで要求されている20項目の最初の項目に、経営者は企業のめざすべき品質方針、管理責任者の選任、推進計画を明確にしなければならないとうたってあります。社長自らがISOの全容を理解しておく必要があり、まさにトップダウンによるプロジェクトなんです。

――ただ、管理する文書の量が増えて事務処理が繁雑になるのではという懸念はありませんか。

辻井 こうした問題を最小限にするには、マニュアルを形だけ規格に合わせるのではなく、現在社内で行われている品質管理のレベルから等身大の継続可能な品質システムを構築していくことでしょうね。私の経験では企業規模がコンパクトなだけ、中小企業のほうがシステム構築が簡単であるともいえます。いずれにせよ、中小企業といえどもどういう品質方針、環境方針に基づいて仕事をしているかを社会に知らせていくことが、今後求められてくるのではないでしょうか。

――いうまでもなく、中小企業も時代の潮流と決して無縁ではないということですね。

辻井 身近なところでは容器包装リサイクル法が来年4月から中小企業も再商品化義務の対象となります。適性に義務を履行するためには正しく理解し、実施に向けていまから準備をしておく必要があります。中小企業だから、下請けだからといった受け身の考え方では取り組みが遅れてしまうことにもなりかねません。

広がる省エネへの取り組み
――(財)京都産業情報センターのエネルギー使用合理化相談員としても活動しておられますね。

辻井 これは省エネルギー対策に関する指導・助言について、京都産業情報センターが中小企業事業団から委託を受けて取り組んでいるものです。企業から問い合わせや相談があると、いつでも無料で工場に出向きアドバイスをさせていただく一方、問題点などを洗い出し、同事業団に登録されている専門員に派遣を依頼するという仕組みになっています。

――エネルギー・環境問題に対して企業側の意識の変化は見られますか。

辻井 一昨年末に地球温暖化防止京都会議が行われてからは目に見えて関心が高まってきています。それまではセミナーを開いても20人ぐらいしか集まらなかったのですが、京都会議以降は出席者が3〜4倍に増えました。製造原価に占めるエネルギーコストは平均で2%程度、比率の高いところでも10%前後です。しかしこの頃は、少しでもコスト低減と環境に配慮した企業活動に取り組もうという真剣な姿勢を感じます。

――コンサルタントの仕事は経営支援業。中小企業の経営について何かお感じになることはありますか。

辻井 企業規模は小さくても果たさなければならない経営機能は基本的に大企業を変わるところはありません。相違するところは、その機能を大勢で分担してやるか、少人数でやるかだけです。たとえ下請けであっても自立する経営、自社のポリシーを持ち独自性を発揮していくことが大変重要だと思います。社名の「アルフ」とはアルフレッドからとったもので、本来“よき相談相手”という意味だそうです。ともに考え、知恵のある経営をお手伝いさせていただこうという気持ちを社名に表しました。

――最後に経営者に一言...。

辻井 経営活性化とは、「現状否定」をする勇気と「再構築」を図る執着心である、と思います。

DATA
(有)アルフ経営
代表取締役辻井 功
住所〒619-0025 京都府相楽郡木津町木津川台1丁目33番地8
TEL0774-73-2320
FAX0774-73-2276
E-mailalf 2276@mail-joho-kyoto.or.jp

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