1999 MARCH
NO.281
KYOTO MEDIA STATION

特集

インターネット
通販・情報発信“奮闘”交流会 開催

小売商業支援センターでは平成8年度より、商店街等を対象とするインターネットモニター事業と交流会を実施しています。
2月17日(水)に当センター会議室において開催されたインターネット通販・情報発信“奮闘”交流会では、商店街、商工会、商工会議所や個店の方々にお集まりいただき、今後さらなる取り組みが求められているインターネット通販を中心に4店舗・団体の方から事例発表をいただきました。
発表内容要旨

独自性を大切に、
お客様本位の楽しめるページを

宇治 駿河屋 関 満 氏
URL http://www.surugaya.co.jp

ネット通販で勝負をするには

 宇治で和菓子屋をしています。エレクトロニック・コマースは将来間違いなく大きな市場になる、迷ってるよりやった方が早いということでインターネット通販を始め、それからほぼ2年がたちました。当初はメールでの注文が3,050円の1件だけでしたが、昨年12月には24万円ほどの売り上げがありました。これは実店舗の通販の約20分の1の金額とはいえ、こちらの予想以上の成果であり、独自ドメインの取得経費くらいは浮かせられたかというところです。
 また、私は平等院表参道商店街のホームページも管理させていただいていることから、各店舗が自らのページを更新できるようになって、これを商売に結びつけていきましょうと呼びかけてきました。みんなで一緒に勉強して力をつければ、商店街自身、商店自身の活性化にもつながるのではないかと期待しています。
 今のインターネットの世界は、戦国時代が始まる前の陣地争いの段階と同じで、本当に厳しくなってくるのはこれからです。勝ち残るためには何らかの形での独自性や主体性が必要であり、値段、サービス、対応の早さ、品揃えなど、これだけは絶対に負けないというものがなくては通用しません。そして、資本力に乏しい小売店が利幅を確保し顧客の心をつかんでいくためには、どんなに困難でも自ら更新する力が必要だと思います。

私にとっての“http”
 ホームページについては、自分のお店や制作者の立場からではなく、あくまでも見ていただくお客さまの立場になってつくるべきだと考えています。メールなどの情報を通じて、アクセスしてこられるお客様がどういうことを望んでいるのか、どういうことを情報として欲しいのか、といった声が聞こえてきますので、これらを大切にしていただきたいと思います。私はhttpという略語を自分なりに解釈していて、hは「本当に」、2つのtは「楽しく」て「ためになる」、そしてpは「ページ」。これを心がけています。
 当店のホームページへのアクセス数は月に2,000件から2,500件くらいです。トップページのインデックス部分は、明治35年の菓子のデザイン帳の図案を読み込んで加工したのですが、少し発想を変えてお店にあるものを利用するだけでも面白いページはつくれると思います。一番人気のお菓子作りコーナーには多くの相談が寄せられており、最近ではニューヨークからお菓子の作り方を教えてほしいというメールがありました。今はまだわかりませんが、こうした地道な展開がいずれは商売に結びついていくのではないかとも考えています。その他、冠婚葬祭のマナーを京都バージョンで紹介するコーナーではタイトルごとに音楽を変えて流すなど、見てもらうお客さまをいかにして楽しませるかということも、ホームページづくりの1つのヒントだと思います。

楽しいページは安売りに勝る!?
 現在のところ、ネット上で販売している商品は当店のメインである羊羹6品と土産用のお菓子5品。お客さまは女性が圧倒的多数を占めています。また、得々ページもつくっていましたが、これについては失敗だったと感じています。というのも、昨年に半値の商品を用意したら2カ月で計136件の申し込みがあったのですが、その内訳は得々ページが104件で4万7千円の売り上げ、一般の販売が32件で20万円弱の売り上げという結果になったからです。しかも、得々ページのお客さまは安いものを得たいというだけの方々であって、まず戻ってくることはありえません。どれだけ申し込みが増えてもあまり意味がないという訳です。
 こうしたことからも、いかに面白いページを提供できるかを工夫し、上手にお店をPRしていくことのほうが大切なのではないかと思います。


コミュニケーション重視で
店舗販売に追いつき、追い越せ

株式会社クレパス 辻村 由美子 氏
URL http://www.holonnet.com/kurepasu

アクセスアップから売り上げアップへ

 Tシャツなどの販売をしているカジュアルショップです。2年前、新しい販売方法を模索していた頃に岸本栄司さんの著書を読んだのをきっかけに、インターネット通販への取り組みを開始。マニュアル本や岸本さんのアドバイスを頼りにホームページをつくり、一昨年7月にオープンしました。
 ところが、最初の2〜3カ月は忙しい割にさっぱり売り上げが伸びない。これはなぜかと思って他店のページを見ると、同じ期間で20〜30万円を売っている店へのアクセス数は格段に違っていました。そこで、NTTの検索サイトで再登録して「Tシャツ」の項目の上位に名前を出したり、登録を載せてもらえるメーリングニュースを探すなど、アクセスアップのための工夫を始め、アコシスやソネットで決済できるようにしました。
 そのうち、昨年4月に最低ラインの5万円をクリアしてからは順調に売り上げが増え始め、30万円くらいまでアップ。秋頃からはお客さまの買い方にも変化がみられ、新たに取り引きを始めたメーカーで一番高い2万4千円のダウンジャケットを“イチ押し商品”として出して、1週間で3枚を売ることができました。そして、1月はバーゲンシーズンのためアクセスが減ってしまいましたが、2月には30万円ペースに戻っています。冬物が終わり、お客さまもまだ春物を欲しがっていないという時期にもかかわらずこの調子ですから、3〜5月の目標は50万円、年内には百万円ペースまでいきたいと思っています。

ネット通販の課題と可能性
 当店は小ロット生産の商品がメインで、入荷数は必ずといっていいほどアップしていますから、更新はほとんど毎日行っています。メールの確認は1日4回くらい。即返事がモットーで、顔が見えない分、懇切丁寧に説明しています。メールで十分にコミュニケーションを重ねると、70%くらいの方がリピーターとして戻ってきて下さっていますね。
 決済は郵便振替が中心で、クレジット決済は40%くらい。お名前やご住所を全部お書きした振替用紙を商品と一緒に発送しています。入金漏れは今のところ1件だけで、実店舗での万引きのロス率に比べれば事故率は低いと思います。発送はゆうパックで。指定した期日にお客さまが不在でも、その日の夜にまた配送してもらえるので安心です。5千円以上ご注文の方は送料無料ですが、最近は発送量が増えたので、全国一律450円で出せるよう交渉して宅配便も利用しています。
 目下の課題は、お客様から注文をいただいたにもかかわらず、在庫切れのためメールでお断りするといった失礼なことがないようにすること。現在の売り上げではまだまだインターネット用に在庫を抱えるわけにもいかず、実店舗と並行して売っているために、どうしても数件はこういったケースが起こってしまうのが悩みの種ですね。  そして、将来の夢、目標は実店舗並みの売り上げをつくることです。インターネットは産直の商品などに強いと思います。松阪牛など、各地方の特産品を直接お客様に送られると、やはり安くて美味しくて新鮮ですから、食品関係はインターネットの特長をすごく生かせる分野ではないでしょうか。
 実店舗での売り上げが下降線をたどる中、インターネット通販は少しずつ右肩上がりで成長を続けていますので、今後もその可能性に賭けていきたいと思っています。
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