1999 MARCH
NO.281
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
仕事を通して“夢”と“希望”と“幸せ”を

マイクロテスト(株)
代表取締役 伊藤 弘子 氏


女性の力をビジネスに結集
――社名がイコール社業を表していますね。

伊藤 はい。大手電子メーカーで製造される電子部品、具体的には携帯電話やテレビ、ビデオなどに用いられる電解コンデンサの検査を主とする、約300種のチップタンタルの最終検査工程業務です。昨年、法人設立10年を迎え自社ビルを建てたのを機に社名変更しました。

――個人事業として始められてからは何年になりますか。

伊藤 創業が昭和47年ですからもう27年になります。もともと書道やそろばん塾をやっていまして、兼業という形で始めました。全く異なる仕事ですけど、あまり大層に考えずに“何でもやってみよう”と。それで内職の主婦40〜50人のネットワークをつくってスタートしたわけです。

――何十人ものグループを引っ張っていくというのは並大抵のことではありませんね。

伊藤 まず自分がやってみて、そしてリーダー役の数人に教え込み、その人がまた他のメンバーに教えていく。勉強会はずいぶんよくやりました。特に、クレームが出たりするとユーザーさんにも来てもらい、みんなでメンバーの家に集まって一生懸命取り組みました。そうしているうち、いつまでも内職という形態では発展は望めないので会社組織にしたいと思い、自宅を移った折にその跡を利用して工場形態での運営に切り替えたのです。

――となると、雇用を含め固定費がかさんでくるわけですが、そのあたりはいかがでしたか。

伊藤 怖いもの知らずで、採算ベースに乗せることより、とにかくいい製品、いい仕事をという気持ちと、常に前向きにやってきたことが結果的にはよかったのではないかと思います。

基本を忠実に守る
――検査作業でのポイントみたいなものはありますか。

伊藤 人財教育がすべてだと思います。画像処理、センサーなどの機器では検出できないところがありますので、どうしても人間の力、目とか触感といった五感が必要になります。現在、従業員は25人、そのほとんどが女性で、しかも主婦のパートが大半なんですが、マニュアル化をし、各人の各人のレベルアップに向けて教育しています。

――パート労働が中心の企業で会社方針の徹底を図るのは大変でしょう。

伊藤 毎朝9時の朝礼を有効に活用し、経営指針の徹底を図っています。仕事の基本は5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)だと考えていますが、こうしたごく当たり前のことをわかりやすく定義して浸透させていくことが大切。クレームなど問題が生じたときは、必ずこの5Sに立ち返るようにしています。事実、基本動作からはずれたときにクレームが出やすいので、「決められたことは必ず守る」「やってはいけないことはやらない」の基本方針に徹しています。

――実際にはどんなやり方をされているのですか。

伊藤 職場を品質管理係と教育係の大きく2つに分け、その他、各々に担当者を配置して責任システムをとり、責任者として任せています。私は内職の元請けの時代からずーっと人に委ねて仕事を進めてきましたから(笑)。その方がかえって各人のやりがいにつながっているような気がします。そして、朝礼を当社の人財教育の基盤にしています。今年は私が年頭挨拶をしたあと、1月から2月にかけては今年の目標というテーマで朝礼当番に毎日一人ずつ3分間スピーチをしてもらいました。働いている主婦は家庭と仕事の掛け持ちという生活サイクルのなかで、普段は自分自身を振り返ったり、目標を持つというような事がなかなかできませんが、人前で話すには、改めて考え直して整理しなければなりません。「いろいろ考えてみますと…こういう風にしていきたいです」と一生懸命考えた前向きなスピーチや、思ってもみなかったようなうれしいスピーチ、涙まじりのスピーチなどがあって、こういう社員に囲まれて仕事ができると思い、本当にうれしかったですね。

――「働く女性を応援します」というキャッチフレーズそのままですね。

伊藤 女性のパワーはすごいと思います。女性の持てる能力が発揮できる職場づくりが私の仕事の中の大きなやりがいの一つです。人間が一人でできることには限りがあり、自分の欠点には自分では気づきにくいもの。そして、いいアイデアを出すには何人かが集まって意見を出し合ったほうが、相乗効果で倍の力が発揮できるようです。私自身、みんなで一緒にやるのが好きですし、幸い言いたいことが言える社風なので、これはこうした方がいいという声がいっぱい上がります。“総動員活動でクレームゼロ”が当社の作業方針です。

ISO取得と新規事業めざし
――QCサークル活動にも熱心に取り組んでおられますね。

伊藤 みんなの力でお取引先様からQCコンクールで表彰を受け、「品質自主保証会社」としての認定もいただきました。目標としては、ISO9000シリーズの認証取得をめざしています。毎朝の朝礼の時間を利用してISOに関する勉強を始めてから10カ月がたち、少しずつ前に進んでいます。

――社外の団体でもご活躍されておられるとか。

伊藤 京都中小企業家同友会では経営者としての勉強だけでなく、お役をいただいて、いろいろ経験をさせていただく中で自己研鑽につとめさせていただいております。

――今後の事業展開についての夢は?

伊藤 ユーザーさんの拡大と新規事業にも取り組みたいと考えています。創業以来、一貫して検査業務に携わってきたノウハウを生かしながら、あるいは全くそれ以外のことにもチャレンジしていくつもりです。“仕事を通して夢と希望と幸せを追求します”という経営方針の通り、私の財産である社員と共に頑張ります。また、広い視野に立って社会発展のお役に立つ企業でありたいと思っています。「難事は良き事」という言葉をいつも頭の中に思い、やってみて、壁にぶつかって、それを乗り越えれば一つ大きくなれる。そして、きっと良い事があると信じ、いつも前向きに、元気に明るく、生かされている事をありがたく思い、すべてに感謝の気持ちをもち、夢をもって会社経営を続けたいと思います。

DATA
マイクロテスト(株)
代表取締役社長伊藤 弘子
住 所〒611-0025
京都府宇治市神明石塚59番地1
TEL0774(24)2877
FAX0774(24)2353
E-mailkyoto-ito@hi-ho.ne.jp

MONTHLY JOHO KYOTO