1999 FEBRUARY
NO.280
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
限りなきイノベーションで
褒賞関連市場の拡大をめざす


日新工芸株式会社
代表取締役社長 西脇 一雄 氏


ニーズをとらえて市場を開拓
――現在、褒賞製品の総合メーカーとして全国に販売網をもち、特に表彰盾の分野では業界ナンバー1の評価を得ておられますが、まず最初に手がけられたのは何でしたか。

西脇創業は延宝8年(1680)。神仏錺金具の製造がもともとの出発点です。大正9年に私の父が優勝旗などの付属金具一式の製作を始め、戦後は将来のスポーツブームを見越し、優勝旗に代わるものとして新たにカップや楯、トロフィー類の製造を始めました。その後、様々な業種において技術コンクールや品評会などが盛んに行われるようになり、スポーツ関連分野以外でもニーズが高まってきました。

――来るべきスポーツブームを的確に予想されたことが、今日の発展につながったのですね。

西脇ボウリングブームやゴルフブームが追い風になったのは事実ですが、どんなブームも永続することはありません。昭和30年代以降は、家電製品の急速な普及に伴い、各家電メーカーが販売店表彰を活発に行うようになりましたので、それを機にデパート外商部との同行セールスなどによって積極的に市場参入を図りました。また、最近では多様化する顧客の要望に応えるため3年前にイベント事業部を発足させ、大手スポーツメーカーと提携して様々なイベントをプロデュースしています。これまでに京都総体やなみはや国体などを手がけ、売り上げも順調に伸びています。

――商品開発において心がけておられることは。

西脇当社が昭和48年に開発した「金属製表彰状楯・額」は、表彰状と額(楯)、記念品が一体化したもの。今では業界における一種のスタンダードになっていますが、こういった市場創造力のある商品開発を心がけています。さらに、これまで培ってきた金属工芸の伝統技術に加え、硝子工芸や漆工芸などの関連技術や毎年開発される先端技術を自社製品の中に取り入れることで、他社との差別化を図っています。
現在のような緊縮経済のもとでは、専業の業種にこだわるばかりでなく、異業種交流などを通じて関連市場の情報を素早くキャッチし、今後伸びる可能性のある分野へ積極的に進出しなければ。そして、テーマを定めてじっくりと商品開発を進めていくことが重要だと思います。

提案型セールスを全国に展開
――営業活動はどのように展開しておられるのですか。

西脇一言でいえば、提案型のセールス展開でしょうか。イベント事業の場合、全国の市町村に足を運び、その土地の特性や地域性を細かくリサーチしたうえで、企画やデザインを提案しています。また当社では、営業社員を多く持つ会社や21世紀に成長が期待される分野の業界にパイプを持つ会社などに対し、重点・集中でトップが直接セールスを行う「立体セールス」を重視しています。担当者レベルではなかなか戦略的な発想が出なくても、トップレベルでの会話の中で信頼関係が生まれて発展することも多いですから。そして、共に業績を伸ばしていきましょうと説得することが大切だと思います。

――仕入れルートの開拓や販売網の拡大についてはいかがでしょうか。

西脇3年毎にカタログを製作する関係上、仕入先が固定してコストダウンが難しいのが実情です。そこで、平成9年に「仕入技術情報開発室」を設置し、各業界の展示会などを通して専任部長による実態調査を行いました。すでに市場分析は終了し、現在は必要に応じた仕入ルートの開拓や新しい仕入先との取引を開始しています。
販売網については、京都、大阪営業所のほか全国各地の販売協力店と密接なネットワークを持ち、地域の特性や情報をもとにコンピュータグラフィックスによる提案などで同業との差別化を図りながら顧客満足の拡大を行っています。

将来を見すえた交流活動を
――いま、世の中は平成不況の時代、何か影響はありますか。

西脇これまでのような派手な褒賞活動が少なくなって市場は全体的に自重する傾向にあり、当業界に限れば売り上げは2割程度ダウンしています。ただ、当社の場合は新たに創設したイベント事業部が関連市場として年々業績をあげており、トータルの売り上げはあまり落ち込まず、収益面ではむしろ向上を続けております。

――21世紀に向けて、どのような事業展開を考えておられますか。

西脇個人が余暇を楽しむ時代を迎え、イベント事業は今後ますます伸びていくと思います。褒賞分野についても、戦後50年が経過してある意味で時代の区切りを迎えている今日、記念表彰などの需要は高まっているといえますね。
また、京都には千年の歴史の中で育まれてきた伝統産業があります。このようにユニークで洗練された伝統産業をもとに、現代の技術を取り入れた21世紀の京都優品づくりを目指していきたいと考えています。

――長らく取り組んでこられた異業種交流活動についてお聞かせ下さい。

西脇全国で最初に誕生した京都府の異業種交流協議会は活発でユニークな活動で中小企業事業団より高い評価を受け、私は平成元年に設立された全国中小企業融合化促進財団の理事に就任しました。そして、京都での成功事例やグループ活性化のノウハウ等を全国にお知らせしたり、ASEAN諸国の方々に異業種交流の企業戦略における重要性について講演する機会を得ました。また、皆様のご協力で全国大会を京都で成功裡に開催できたのも貴重な経験だったと思います。
今では全国の協議会も36を数え、財団は設立10周年を迎えました。これを機に若い理事に引き継いでいただいて、全国レベルでの交流の強化と21世紀創造事業の推進、とりわけ関西経済圏の発展・拡大に尽くしていただければと大きな期待を寄せているところです。特に京都は創造性に富んだ高付加価値の企業が多いので、ぜひともその中心となっていただきたいですね。

DATA
日新工芸株式会社
代表取締役社長西脇 一雄氏
住 所〒613-0034
京都府久世郡久御山町佐山双栗3番地
TEL0774-43-6711
FAX0774-44-5582
E-mailnisshin@mail.joho-kyoto.or.jp

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