1998 AUGUST
NO.274
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
画像技術の可能性を追求し
特徴ある開発型企業へ


(株)写真化学
代表取締役社長 伊東 靖人 氏


3つの事業の集合体
――創業が明治元年(銅板彫刻印刷業「石田旭山印刷」)。印刷や写真技術で培った高精度描画技術をベースに多角化戦略をとってこられましたが、現況はどうなっていますか。

伊東 2年前にそれまであった4事業部を見直し、旧来からの印刷事業部、液晶ディスプレー用フォトマスクを手がける電子事業部、システム機器事業部の3事業部制に移行しました。売り上げ構成は前期の場合、印刷、電子がそれぞれ4割、システム機器が2割といったところです。

――機構改革に取り組まれたのですか。

伊東 銅屋根材や内装材、装飾材などを扱っていた建装材事業部を廃止し、主として製版・印刷関連機器の組み立てなどを担当していた精密機器事業部を、製版業界以外の分野にも拡大させていくためシステム機器事業部に改めました。

――各事業の中身も時代の変化に伴い変わってきたわけですね。

伊東 印刷はご承知のように紙媒体の印刷物からCD-ROM、ホームページの企画制作など電子媒体にシフトしつつあり、生産性効率を高めるためにデジタル化・CTP化を進めて工程の省力化を図っています。また、関連の新規事業として昨年11月には大阪・淀屋橋近くにオンデマンド印刷のショップを開設しました。フォトマスクはパソコン、カーナビゲーションの普及などを背景に一層の高精細化、大型化のニーズが高まり、最新鋭の描画機をはじめ周辺機器を拡充導入して今後の事業展開に備えています。システム機器は現在、大別すると画像処理、FA対応の検査・計測装置、プリント基板の3分野で構成されています。
これらの事業は独自の目標を設定し、積極的なニュービジネスの展開を行っていますが、同時にユーザーもそれぞれ異なっています。印刷は広く一般が対象ですし、フォトマスクは主に総合電機メーカーといった具合に、会社として1つの共通項でくくれなくなってきました。

2000年株式上場を目標に
――2年前に社長就任後、社内に「2000年委員会」を設置されましたが、そのねらいは?

伊東 会社がこれから具体的にどのような領域で事業を展開していくのか、全社員の共通認識のもとで経営の方向性を明確に打ち出していこう、と。各部署からメンバーを選んで検討を重ね、2000年に向けての「ニューセンチュリー・プレ3カ年計画」、つまり中期3カ年計画を策定しました。その中でもめざす事業分野としては、現有の3事業部の方向とほぼ合致するのですが、情報加工・サービス分野、高精細技術による電子デバイス分野、デジタル化支援システム分野を掲げています。

――では、2000年に向けての大きな目標は何ですか。

伊東 2000年に株式公開を実現することです。その目的とするところは、社会的に認知された存在感のある企業づくりと財務基盤の強化です。株式上場にあたっては、当然ながら今後は利益のモノサシを持たねばなりません。したがって、目標数値は売上高に加えて経常利益を重視しています。量より付加価値を高めていこうということです。

――そこで経営計画を実行していくために社内をどう“引き込む”か、「行動基準ハンドブック」を作成して社員に配布されたとか。

伊東 従来の経営理念、経営方針に加えて、経営理念実現のために実行しなければならないこととして「行動基準(六戒)」を新たに設け、特に変化の激しい時にあっては、過去にとらわれることなく状況変化に柔軟に対応できる「柔軟性」とか「スピード」こそが大切であると、強調しております。これは、画像技術をベースに情報コミュニケーション産業の一翼を担う、特徴ある開発型企業をめざしていくうえで社員の心構えを呼びかけたものです。

収益重視の経営
――今日、技術革新のテンポがめまぐるしいだけに人材の育成も含めて対応が大変ですね。

伊東 特に電子部門のテンポはものすごいですね。特に液晶分野に特化した専門分野ですからなおさらですね。即戦力といった観点から、必要とされる技術者の中途入社を進める一方、将来の戦力として今春、全て技術系に絞った11名の新規採用をしたのですが、ここ数年、人を育てるスピードが、技術の進化するスピードに追いつかないといったことも見受けられます。ですから、どうしてもという場合には外部から人材を導入せざるを得ません。



――また、各事業によってユーザーが異なるとなると、それをどう束ねていくのか、カジ取りもなかなか難しいですね。

伊東 1つ屋根の下に3つの会社が同居しているようなものです(笑)。いまのように3つの事業をバランスよく経営していくのがいいのか、あるいは強みの分野に特化させた方がよいのか、将来的には検討しなければならないかもしれません。しかし、特化した分野が環境変化で厳しい状況になったらどうするか、他部門の技術者をどう活用していくのかといった問題も生じてくるでしょう。現在、管理面も各事業部主導で任せています。例えば勤務体制で、ある事業部が二交替制をとっても、他の事業部では必ずしも必要ではないという場合がある。したがって、本部で管理するとなると、いってみれば3通りの規則をつくらなければなりませんから。
 これからも将来に向けての開発部門の強化と現有事業の足腰をもっと強固なものにし、コスト競争力を高めていきたいと考えています。そのためのステップとしては、収益体質の改善(業務革新)を鋭意進める一方で、取り組みが遅れていましたが、ISO9001、9002を今期中に取得し、品質管理体制の強化を図っていきたいと考えております。

――2000年株式上場の見通しはいかがですか。

伊東 上場の形式要件はともかくとして実質要件、業績をどう向上させていくか、ですね。それも瞬間風速ではなく、安定継続した収益を維持していかねばなりません。それには社員の活力と豊かな想像力が欠かせませんが、幸い社内にはいま、目標に向かって刺激と緊張感がみなぎっています。

DATA
(株)写真化学
代表取締役社長伊東 靖人
住 所〒602-0955
京都市上京区東堀川通リ一条上ル
竪富田町436-5
TEL075−432−1151(代)
FAX075−432−2210
E-mailwebmaster@shashin-kagaku.co.jp
URLhttp://www.shashin-kagaku.co.jp

MONTHLY JOHO KYOTO