1998 MARCH
NO.269
KYOTO MEDIA STATION

京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.23/第2回
(財)京都産業情報センター 専務理事
内田 頼利 氏

設問2―コンピュータ西暦2000年問題が企業に与える影響、京都における認識と対応の状況等について。また対応を検討中の企業、対応が完了していない企業への助言があれば。

コンピュータの西暦2000年問題については、京都産業情報センターとして調査を行い、平成9年3月に報告書を出していますが、その時の結果では、「すでに完了している」および「現在作業中」であるとした企業が22%、「未検討」「問題なし」が46%もあり、府内中小企業の危機感は薄かった。私としては、どうしてそんなにのんびりしていられるのかと不思議な気持ちだ。この時の調査で「現在検討中」であるとした32%の企業が作業を完了していることを祈りたい。
この問題の本質は、コンピュータのプログラムが西暦年号を下2桁で記述していることから請求書や納品書の処理において、日付エラーが発生し、プログラムが誤動作するということで、日付に関するあらゆるデータ処理に関係してくる。銀行の金利計算などもこの範疇に入る。コンピュータメーカーの調査によると、企業が使用するプログラムの60〜80%には、何らかの形で年号がかかわっている。コンピュータはひとつのエラーが発生すると、その処理を止めてしまうので、部分的な修正をすることもできない。今まで何でもなく進行していた会社の業務処理が全くストップしてしまうということになり、現場はパニックに陥るだろう。その時になって慌てて手作業に切り替えることなどできないし、ましてやプログラムの修正をそれからやろうとしても、どんな範囲で、どんなことが起こっているのかをつかむことが難しい。やはり問題が発生する前にきちんとあらゆるケースを調べて対策を立てておく以外にない。
対策としては、プログラムやデータの日付を西暦4桁で計算されるように直すことだ。対象はオフィスコンピュータのプログラムが主となるが、パソコンの処理プログラムでも西暦を下2桁で扱っているものがあれば、安心はできない。
対策の方法としては2つあり、1つは古いプログラムを調査して、西暦の日付の計算をしている個所を徹底的に調べ、計算間違いが起きないようにプログラムあるいはデータを修正することだ。コンピュータメーカーは、この問題に対応するため、いくつかのサポートツールを用意している。購入先のコンピュータメーカーに相談し、どこに問題があるかをまず調べねばならない。オフィスコンピュータのプログラムでは、COBOLで書かれたアプリケーションプログラムが多いと思われるが、中小企業では大体6カ月ないし1年で対応できるだろう。このくらいの期間で費用も約1千万円程度は必要となろう。京都市内のある機械部品製造会社の例では、通信やデータを処理するプログラム1000本のうち550本および主要ファイル200本が対象になった。修正作業に約5カ月間、延べ13人月の工数をかけ、西暦年号2桁を4桁化した。このような対応作業は、費用と時間がかかる割にメリットがないので、経営トップの理解が得られにくいのが難点だ。しかし、平成10年度から対策費に関して税の優遇施策が実施されることになったので、大いに利用すべきだ。
もう1つの方法は、この際、古いシステムを新しいシステムに、ハードおよびソフトをつくり直してバージョンアップしてしまうことだ。対象となるシステムはたぶん10年以上前にインストールされたものが多いと思われるので、中小企業ならば、最新のパソコンベースのシステムは、コスト的には10分の1程で出来るだろうし、ソフトも新しい手法が用いられるので、経営的に余裕のある企業にはこの方法を勧めたい。そうすれば、西暦2000年問題を修正するだけでなく、社内の情報化に関して、メールシステムを導入するとか、インターネットへの接続をするとか新しい機能を取り入れて、これからの大競争時代に向けて、情報武装化を推進することができる。
いずれにしろ、もうまもなく西暦2000年。時間的な余裕はほとんどない。どちらの方法を取るか、早く決定し、取り返しがつかぬようになる前に対策を急ぐことをお勧めしたい。
(完)



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