1998 JANUARY
NO.267
KYOTO MEDIA STATION

インタビュー
エレクトロニクスを軸に
照明を演出して
いきたい
クロイ電機(株)  社長
松浦 敏朗 氏

――地球温暖化防止京都会議で先進国の温室効果ガス排出削減目標が決まりましたが、企業の多くはすでに省エネ対策を推進してきているだけに、今後、その矛先は民生部門に向けられることが予想されています。照明器具の場合はいかがですか。

松浦 日本では欧米諸国に先駆けて昭和20年代後半から蛍光灯の導入が急速に進み、当社の創業者である黒井基仁(故人)もいち早く蛍光灯分野の研究開発に取り組みました。蛍光灯の消費電力は、同程度の明るさの場合、白熱灯の約30%で済みます。恐らく戦後の電力事情がそうさせたのでしょう。現在、米国やドイツなどで蛍光灯化が進んでいますが、電気代に占める照明費の割合は、日本が10数%なのに対し、米国は20%、欧州では25%。この違いは蛍光灯比率とも大いに関係があり、一般論として日本の場合、照明における省エネ努力は5%程度の削減がいいところだといえます。

――――併催の「京都環境技術フェア」にも出展されましたが、来場者の反応は?

松浦 消費者の方から、省エネの重要性はわかるが実際に生活の場でどう実践すればいいのか、照明器具についてもどこまで技術が進んでいるのか、といった質問が寄せられ、関心の高まりを実感しました。

――その省エネ対応の照明器具とはどのようなものですか。

松浦 1つは器具のインバータ化です。従来は電力損、例えば30ワットの照明器具は実際には38ワットの電力を消費していましたが、電子回路化を実現することによって電力損を解消しました。2つ目は明るさを自由に調節できるライトコントロール、3つ目は人が近づくと点灯する人体感知センサ、といった付加機能を備えたことです。先のフェアには、インバータ技術とセンサを組み合わせた照明器具や、消費電力がこれまでの3分の1という冷陰極ランプ仕様の非常口の誘導灯などを出展しました。サイズのコンパクト化にも取り組んでいますが、これは廃棄物を減らす、省資源化に対応していこうというものです。

――現状のシェア、売り上げ構成はどのようになっていますか。

松浦 照明器具全体でみると6%程度、うち住宅用は8%強で、なかでも木、竹を使った和風の照明器具では、私が入社5年目に創業した関連会社で高級品専門の名成電機(株)を含めると約30%を占めています。売上高の90%は照明器具ですが、官公庁や企業の出退表示器などの情報機器も手がけており、この分野での最大のライバルはシチズンさん(シチズン時計(株))です。

――住宅着工件数の減少や和風住宅の伸び悩みがいわれていますが、影響はどうですか。

松浦 住宅着工件数との連動性は非常に高い。照明器具の購買はやはり住宅の新規購入時が一番多いからです。そうした悲観的な見方がある一方で、国内の住宅は約4,000万戸、仮に10年に1度の割合で照明器具を取り替えるとすると年間400万戸、補助照明や門灯などを含め1戸当たり20灯として年間8,000万灯の需要がある勘定になります。その10%のシェアをとれば、と計算上ではまだまだ量的拡大が見込めることになるのですが……。和室の減少に伴い、木製の照明器具は表面に塗装仕上げをすることによって洋風化にも対応しています。我々としては、1部屋1灯から多灯化への住空間をどう提案していくか、また取り替え需要を促進させる商品をいかに開発していくかが勝負になるでしょう。

――大半がOEM、ということはユーザーへの営業は松下電工(株)に任せて、開発と生産に特化できるというメリットも?

松浦 顧客、販売、技術の3つを掛け合わせたものが事業だと思います。全部がフリーで誰にでも売る、何でもつくるというのは、大企業でないとなかなか難しい面がある。幸い顧客がいわば固定しているのですから、技術蓄積には積極的に挑戦していかなければなりません。長期スローガンとしてE&L(HUMAN ELECTRONICS&LIGHTING)を掲げていますが、これはEを軸にLを演出していこう、と。

――その開発拠点になるのが、平成2年に関西文化学術研究都市に設置されたクロイハイタッチ研究所ですね。

松浦 ただ技術だけが独り歩きすると、消費者の方に使いにくい商品が生まれがちです。だからハイタッチ(高感度)、技術者が狭い殻に閉じ込もることなく、外部にヒントを求めながらターゲットを絞って開発を進めています。

――今後の事業展開についてはどのようにお考えですか。

松浦 一口に住宅照明といっても、主照明と補助照明があるように用途が違うということで、部屋の天井に固定するもの、天井からぶら下げるもの、廊下やトイレなどの屋内照明、玄関・門灯などの屋外照明、情報電子機器、スタンドと、6つの事業に組織を分けました。従来のような企画・設計・生産といった機能別では、横との連携がうまくいかず、組織がどうしても硬直化してしまいます。そこで商品別にそれぞれが事業として成り立っていけるようにしようというのが狙いです。

――体質強化を推し進めるための組織替えということですね。

松浦 かつて40歳といえば当社では大幹部でしたが、いまの40歳はあまり目立ちません。その40歳前後の中堅社員12名による企業創造研究会で、組織とマネジメントのあり方について議論を重ねた末、指示待ちの体質から考えて行動する集団づくりへ、組織変更と同時にラインの若返りも図りました。それを全体にどう浸透させるかは、E&Lをどう具現化していくかということへのステップでもあるわけです。

――学研都市の協同組合ハイタッチ・リサーチパーク(異業種13社)の理事長も兼ねておられますが、異業種交流と企業のカジ取りと何か相通じるものはありますか。

松浦 初めに販売ありきで、こんなモノがあったら面白いという形から入ると失敗しがちです。新しいアイデアを思いついても、その分野の実用新案は大体すでに登録されていることが多い。新規事業というのは未知の世界に足を踏み入れることですから、販路のメド、つまり行き先がはっきりしていれば、それに向けてお互いに力が発揮しやすいし、それだけ成功する確率も高くなるといえるでしょう。

■DATA
クロイ電機(株)
住所京都市下京区西七条八幡町27
TEL075-313-5191
FAX075-314-1766
代表者松浦 敏朗


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