1997 DECEMBER
NO.266
KYOTO MEDIA STATION
特集
環日本海交流への躍動
舞鶴港FAZ施設開業

日本海に臨む近畿圏で有数の規模を誇る舞鶴港。国のFAZ(輸入促進地域)指定を受けて、対岸貿易の拠点施設となる貿易支援センター「舞鶴21ビル」がこのほどオープンした。舞鶴から対岸諸国、そして世界へ――。国際経済交流の新潮流として期待される環日本海交流へ向けたインフラ整備が本格的に動き出した。



舞鶴港は1901年(明治34年)、東港に旧海軍の鎮守府が設けられ、軍港としてスタート。西港は1913年(大正2年)に大型船用の埠頭が完成し、対岸貿易を中心とした日本海側の商業港としての道を歩み始めた。  戦後はシベリアなどから66万人の引き揚げ者を迎え入れる一方、1948年(昭和23年)に貿易港として再出発。1951年(同26年)には国の重要港湾に指定され、西港は外国貿易港、東港は国内貿易港として港湾整備が進められてきた。  近年は環日本海交流の拠点港として脚光を浴び、1995年(平成7年)3月、日本海側では初めて国のFAZ指定を受けた。京都府が今年9月に発表した「丹後産業21世紀ビジョン」でも、舞鶴港を近畿圏の北の玄関口として位置づけ、生産加工・貿易関連産業の集積を図り、そのために市場の開拓や企業誘致などの施策を進めていくことにしている。

■「環日本海」の拠点として
FAZ施設が位置する西港には5つの埠頭があり、漁業基地の第1埠頭を除く4つの埠頭が貿易貨物を取り扱っている。多目的クレーンでコンテナ貨物をさばく第2埠頭▽ロシア・北米・ニュージーランドからの木材を陸揚げする第3埠頭▽穀物貯蔵のサイロを持ち、オーストラリアからの硅砂、ソーダ灰、ロシア向けの雑貨も取り扱う第4埠頭▽3万t級の船舶に対応、木材を中心とした貨物を取り扱うため2年前に供用開始された喜多埠頭、とそれぞれ特徴を生かした役割を担う。  1986年(昭和61年)に、北朝鮮の清津港経由で中国東北地区とを結ぶ日中・日本海航路、1989年(平成元年)には、ロシアのボストチヌイ港(ナホトカ港の東隣)を経由し、ロシア・欧州・中近東をシベリア鉄道で結ぶTSCS(トランス・シベリア・コンテナ・サービス)航路が開設。その後、韓国航路(釜山港中継で中国、東南アジア、北米、欧州へ)、台湾航路などのコンテナ定期航路が次々に開設され、西港は木材輸入港からコンテナ貨物輸送の拠点港として姿を変えつつある。  これに伴い、輸入は木材のほか穀物、鉱産物、飼料など、輸出は繊維、雑貨、機械、化学工業品、電極など外国貿易の取扱品目は多彩に。北朝鮮産マツタケでは国内で最大の荷揚げ量を誇る。  一方、東港では舞鶴〜小樽間を結ぶ大型フェリーが日本海時代の幕開けとして1970年(昭和45年)に就航し、1993年(平成5年)には前島埠頭が完成。日本海側の物流・観光ルートとして定着し、近年のゆとり志向もあってクルーズへの関心を集めている。  さらに、対岸諸国に近く、近畿圏を背後に控えるという優れた立地条件を生かすため、2005年度を目標にした舞鶴港港湾計画が進められており、内外物流機能の強化などによって取扱貨物量は現在の2.2倍の年間1,900万tを見込んでいる。その切り札として、西港の沖合に建設中なのが和田埠頭。33haの人工島に5万t・3万t級のコンテナ船がそれぞれ2隻接岸できる岸壁などを備え、21世紀初頭に一部供用開始、日本海側最大級の多目的埠頭として誕生する予定だ。


FAZとは
「Foreign Access Zone」の略。1992年に制定された「輸入の促進及び対内投資事業の円滑化に関する臨時措置法」にうたわれている、国際経済交流の活発化と輸入促進のための拠点を整備する地域のこと。港湾や空港の周辺地域に第3セクター方式で輸入に関する施設や事業活動を集積することにより、国際物流を国内の物流に円滑に接続、併せて地域振興を図ろうというねらい。FAZ指定を受けると、国の低利融資や関税の優遇などがある。これまでに全国で22カ所が指定され、大阪市のATC(アジア太平洋トレードセンター)など11カ所が開業している。


舞鶴港貨物量の推移(単位:千t)

年/区分海外国内合計
輸出輸入移出移入
1989年218842,4812,9366,322
90年338242,5953,0426,494
91年427992,9983,3897,228
92年278603,8463,6328,364
93年389273,4743,8048,242
94年288113,7334,0148,585
95年309093,5063,9798,424
96年67993,7574,1018,664



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