1997 DECEMBER
NO.266
KYOTO MEDIA STATION

京都・人・産業
巻頭インタビュー Vol.21/第5回
京都府グリーンベンチャー研究交流会 代表幹事
(財)京都産業情報センター 理事
(株)サムコ インターナショナル研究所 代表取締役
辻 理 氏

設問5―地球温暖化防止京都会議の議長国を契機に、日本もCO2削減へ指導性の発揮が求められています。関係省庁のモデル事業や技術開発も来年度から本格化しますが、取り組み体制についてご意見をお聞かせ下さい。

日本の企業はかつて公害問題への対処を通じて、脱硫・脱硝装置など特定分野の環境対策には高い実績をあげてきた。つまり、国や自治体が設定した厳しい数値基準に対し、これをクリアすることには成功してきた。しかし、これからはたんなる数値基準だけによらない企業の基本的な理念とか自主的な取り組み姿勢が問われてくるだろう。
一方、環境問題を考える消費者、グリーンコンシューマーの活動や、企業や行政によるグリーン調達・購入の動きも活発化しつつある。欧州では環境への配慮を取引の条件にする企業が多いだけに、日本企業でも環境管理システムの国際規格「ISO14001」認証を取得するケースはますます増えていくに違いない。と同時に、環境保全を真に推進していくには産業、消費、流通などすべての分野にわたる施策や、国民に対する働きかけの強化が必要だろう。
というのも、ことテクノロジーに関してだけなら、企業サイドで先取りすることはできる。だが、それを社会に広く認知させ、普及させるのは一企業レベルでは到底不可能だからだ。容器包装リサイクルにしろ、フロンにしろ、回収・運搬のトータルシステムを構築するにはやはり行政の力なくして実現できない。温暖化対策など環境分野は歳出抑制の“聖域”とする方針もあり、具体策に期待したい。
もちろん、環境保全にはコストがかかる。経済成長率が鈍化するとの説が一部にあるが、環境対策への投資はエコビジネスという新しい産業を拡大させ、経済全体が回転してゆくのだからそんな心配はない。エコビジネスは時代とともに広く、深く、多岐にわたって成長していく。一般に産業界は業界によって栄枯盛衰がつきまとうが、エコビジネスに限って衰えるとは思えない。人間が生活する限り、必然的に廃棄物が出てくるからだ。
我々のグリーンベンチャー研究交流会では豪州の環境管理産業協会(EMIAA)とこのほど提携、会員交流や共同開発などを通じてアジア地域へも市場を開拓していきたい。
(完)


京都府グリーンベンチャー研究交流会ホームページ URL http://www.joho-kyoto.or.jp/〜green-v/

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